二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 炎神暴君★リシタニア-銀魂×戦国BASARA-質問大会中 ( No.137 )
日時: 2011/04/23 16:41
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)

第12話 ロボットは怖い、バグが怖い。


 たまを連れて全員は誰もいない江戸の町を駆け抜けていた。
 新八が後ろを見ながら、「家がメチャメチャだぁぁぁ!!」と叫んでいる。
 翔は銀時の腕にひっついているたまにこう言った。

「おい、家族が迎えに来たぞ。行って来いよ」

「……返事がない。ただの屍のようだ(裏声)」

 たまがそう答えを返すと、翔は炎神を構えた。
 死んでいるなら銀時の腕ごとこの首を斬り落そうかと考えたらしい。目がマジで怖い。
 銀時は自分の腕が危ないと察知したのか、翔を殴って止めていた。

「にしても、ヤバいな。風魔、後ろは?」

「……まずい」

 風魔が短く答えた。
 何がまずいのかと思い、全員が後ろを向く。
 屋根の上を走るメイドの悦子ちゃん。きゃははははと笑いながらモップを持ってやってくる。

「お掃除ですの〜」

「やっべぇぇぇぇ?!」

 モップの柄が今、翔達に直撃しようとした瞬間である。
 ピタリと。そのモップの柄が止まったのだ。
 何事かと思い、全員が辺りに視線を巡らせる。

「……戦争?」

 静かな声が聞こえてきた。と、同時に風が吹く。
 空になびくボサボサの黒髪。鋭くて儚い紫色の瞳。手に持つ身の丈を超えるような刀。
 怜悟だ。

「怜悟?!」

「元気、してた?」

 怜悟はその顔に笑顔を浮かべて、翔達に訊く。そして機械の悦子ちゃんを一瞥すると、刀を横へ振った。
 モップは横へ飛んでいき、悦子ちゃんは丸腰になる。

「死ぬがいい」

 言葉を短く吐いて、怜悟は悦子ちゃんに刀を突き刺した。
 「ぐはっ……」的な言葉が似合いそうな悦子ちゃんは、そのまま地に倒れて行く。
 刀を抜き、怜悟は軽くため息をついた。

「何でロボットに追われてるの」

「知らん。俺が知ったこっちゃない」

 偉そうに言葉を吐き捨てた翔は、たまの顔を睨みつけた。
 まぁ、たまのせいでこんな事に巻き込まれていますからねー。そりゃ機嫌悪くなるでしょう。

「まぁどうでもいい」

 怜悟はあまり気にしていないらしく、そっぽを向き始めた。
 周りには悦子ちゃんだらけ。今にもこちらに襲いかかってきそうだ。
 翔は舌打ちをして炎神を抜き、佐助と風魔に言う。

「たまの首を銀時の腕から引きちぎって源外の元へ行け!!」

「え、ちょ。翔は?!」

 ガンッと銀時のバイクを蹴り飛ばし、全員を前へ押しのける。
 焦る皆は、翔を真っ直ぐに見つめた。
 すると、翔はにっこりとこちらを見て笑ったのだ。

「頑張って生きろよ、お前ら!!」

 それだけ言うと、翔は悦子ちゃんの集団に特攻をして行った。怜悟もそのあとに続く。
 2人を引きとめようとした銀時は、翔の長い髪に手を伸ばすが風魔にそれを阻められてしまった。

「今は、言う事を守る」

「————ッ!」

 銀時は舌打ちをして、くるりと踵を返して源外の所へ走って行く。
 大通りの悦子ちゃんの集団を何とかなぎ倒し、皆は道を駆ける。駆ける。駆け抜ける。

「ったく! このままだと女中に冥土へ送られるぜ!」

 政宗は刀を振りながら言葉を乱暴に紡ぐ。
 傍で背中を守る為に戦っている小十郎は、小さく舌打ちをした。
 その時だ。
 背後で爆発が起こり、コンクリートが宙へ舞う。炎を背に現れたのは、さっき怜悟が倒したはずの悦子ちゃんだった。

「な?! お前、翔は——!!」

「翔殿はどこへ!」

 幸村は槍を構え、悦子ちゃんにどなる。
 しかし、悦子ちゃんはそんな皆を一瞥もしないで口を動かす。

「ホクロビーム。早くあれを渡してくださいの。あれがあって、初めて芙蓉プロジェクトは完成するんですの」

「あれ? あれってなぁ、一体——」

 元親が訊こうとしたら、後ろから「あ、」と声がした。
 何事かと思い、皆の視線が銀時へ集中する。
 銀時の腕にひっついているたまの目からは————

「な、泣いてる?!」

 涙があふれていた。