二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 炎神暴君★リシタニア-銀魂×戦国BASARA-質問大会中 ( No.151 )
日時: 2011/04/29 19:49
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)

第13話 雨は必ず上がる。


 結野衆の全てが倒れ、佐助はそれを横目で眺めていた。
 陰陽師の術なんぞ、佐助には理解できない。自分の世界にないし、第一、自分が使える訳でもない。

「どうしたものかね。こいつらは」

 そこへ、どこからか現れたのか、翔が面倒くさそうに腕を組み、壁にもたれかかりながら言った。

「どうしたものかねって。これはただのご近所トラブルって言うレベルじゃないよね?」

 本当に面倒くさそうに頭をかく翔に、佐助は言った。
 翔は欠伸をして、ツイと指を滑らせる。その向こうに居たのは、外道丸と新八と神楽だった。
 幸村と政宗、小十郎は他の人達を助ける為にどこかへ行っている。
 翔は佐助と共に、彼らの話を盗み聞く事にした。

「あっしは、結野家が潰れようとどうでもいいんでやんす。ですが」

 外道丸は悲しそうな表情を浮かべて、空を見上げた。
 今だ雨の降る空は、重く冷たい灰色。どうも気が滅入る。

「あっしは、クリステル様のあの悲しそうな顔を、もう見たくないんでやんす」

(なるほどね)

 翔は心の中でつぶやき、壁に顔をひっこめた。
 自分の黒髪をクルクルと弄び、虚空を見上げる。茶色がかった瞳が、どこか遠くを見つめていて、まるで死んでいるようだ。

「あの晴明とやら。江戸のあちこちに使い魔を放っている。だからあんなに弱くなっていたんだな」

「その使い魔をあちこちに放っているからって弱くなるもんなのか?」

 仕事が終わったのか、政宗が翔に訊いた。佐助は驚いていた。
 翔は自分の掌を見つめ、その上に炎を灯らせる。それを2人に見せた。

「ここに1つの炎があったとする。これをあちこちに分散させる」

 そう言うと、まるで操られたかのようにちびた炎があちこちにバラバ後広がった。壁にも移ったが、火事には至らなかった。
 翔は指を鳴らして炎を消すと、「まぁ、あちこちに兵力をばらすと自分が弱くなるのと一緒だ」と説明を加える。

「でもよ、それだったら助けに行かねぇのか?」

「俺は死神だ。人を救う道理がどこにある」

 腕を組み、翔は政宗に言い放つ。
 そう、翔は死神だ。死神たる物、人に干渉せず人の魂を狩り、それを天上へ送る者——人を助けるなんて言語道断である。
 だが政宗も佐助も知っていた。翔がそんな奴じゃないと、死神であろうと何であろうと翔は人々を救ってきたと。

「今回ばかりは俺が干渉するにも出来ないかもしれない。下手したらそのまま命を奪われる可能性がある」

「あ、そうか。さっき言ってたもんね。調伏されたら配下になっちゃうって」

「そ。俺はそんなのは御免だ。誰かに従うくらいなら、一生銀時の元でこき使われていた方が楽」

 でも、と翔は言葉を続けた。
 瞳の奥に浮かぶ、銀時がこの後するであろう行動——外道丸を従え、そして自分も晴明と共に道満と戦う光景。

「俺だって、誰かを悲しませるような事はしたくねぇんだよ」

 悲しげにつぶやいた翔は、そのまま屋敷を飛びだした。
 近くで「あ、翔さん!」と新八の叫び声が聞こえる。

「……猿飛」

「なぁに、竜の旦那。翔を追いかける事なら、出来ればしたくないんだけどね」

 佐助は静かに、無表情で言う。
 「そうかよ」と政宗は舌打ちと共に言葉を吐き出して、小十郎と新八と神楽、最後に幸村を従えて外へ飛び出す。
 残った佐助は、小さくため息をついた。
 このまま行って、呪法によって殺されたらどうなるだろうか?
 まぁ、皆行ったし自分は行かなくてもいいかー、っておい! という葛藤が佐助の中で行われる。

「ハァ、仕方ない」

 佐助は決心したように言葉を紡ぎ、風と共に消えた。

***** ***** *****

「翔まで来たのかよ。まったく、道着あんのかよこれ」

「俺は道着なんぞ必要ない。俺は俺で行く」

「たまには白も着てみると良いネ。着ろ」

「つーかもうないし。政宗と幸村が着たし」

「あー、もう。じゃぁ行くぞ!」

 万事屋メンバー+シノとミウはホールへと足を進めた。
 光があまり入らない薄暗いホール。そこには晴明と道満が睨みあう姿が見えた。
 翔は牽制の為に炎を生み出し、そして2人の間に投げつける。
 2人がこちらを向いた。
 銀時は大きく息を吸い込み、叫ぶ。

「すいませーん、天下一武道会の会場はここですかぁ?!」

 さぁ、今まさに呪法デスマッチが開幕された。