二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 炎神暴君★リシタニア-銀魂×戦国BASARA-質問大会中 ( No.157 )
日時: 2011/05/02 21:56
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)
参照: 参照を600突破してたww でもこれでクライマックスなのだ。

第14話 鎖で縛られて喜ぶのはただのM


 闇の中。
 どこまでも、どこまでも深い闇の中。何もかもを吸い込んで、そして無に帰すようなそんな闇。
 その世界に佇んでいたのは、1人の少女だった。
 歳は10代前半を予想できる程に小さく、そして若い。闇に浮かび上がる妖艶で艶のある灰色の髪。瞳の色は紺碧の空をくり抜いたかのような藍色をして、片方の瞳は包帯で覆われていた。
 少女の瞳が、真っ直ぐに闇を映し出す。そして色白な肌で構成された小顔に存在する桜色の唇を三日月形に歪める。
 彼女が見た物、それは闇に浮かぶ1つの炎。まるでシャボン玉のようにふわふわと浮いている。

「やっと見つけたぁ」

 他にも邪魔なシャボン玉——黒い風の色や海のような色、自分の髪と同じような銀色、そして1番彼女が嫌う空色のシャボン玉を取っ払い、少女は炎に手を伸ばす。
 シャボン玉の向こうに居たのは、1人の青年だった。
 黒い髪に黒い装束。小柄な体に不釣り合いな鎌を持ち、『武将』という連中と絡む彼——。

「炎の暴君……」

 少女は炎を愛おしそうに、愛おしそうに撫でると辺りを見回した。
 いつの間にか沢山のシャボン玉に囲まれていた。赤もあれば黄色も、緑も紫も金も銀も茶色もある。
 少女の瞳が、まるでうっとおしそうな物を見るかのように細められた。
 白魚のような指を闇に滑らせ、少女の唇が言葉を紡ぐ。


「『縛れ』」


 どこかの国の言葉を吐き出した途端、指の先から鎖が飛び出す。
 鎖は辺りのシャボン玉を全て縛りつける。蜘蛛の巣のように張り巡らされた鎖から逃げるように、いくつかのシャボン玉が闇へと浮かびあがった。
 少女は舌打ちをして、シャボン玉を睨みつける。

「『無駄な事。でも、私は——』」

 そこまで少女は言葉を紡ぎ、口を閉じる。
 ふと背後にある炎を見れば、少年が人を助けている光景だった。

「ダメじゃないか。君は人を助けてはいけないんだ」

 炎に手を伸ばして、またひっこめる。
 今の自分では、彼に会う事は出来ない。だとすれば、自分から仕掛けるしかないのだ。
 そう。江戸の全ての人を眠らせよう。
 彼も、彼の周りに居る人も。そして自分もいっそ、彼の隣で眠ってしまおう。
 少女はそんな事を思い、また笑う。
 藍色の瞳が上を向き、鎖に縛られたシャボン玉を映しだした。
 何個かは生き残っている。だったら、生き残った彼らには最高の舞台を用意しよう。
 彼も、自分と踊ってくれるだろう。

「ねぇ。炎の暴君。君はどうして、人と一緒に居る事が出来るの?」

 愛おしそうに瞳を細め、少女は問う。
 シャボン玉の向こうに居る青年は、少女の問いは聞こえていない。変わらずに『青い眼帯の野郎』と『赤いハチマキの野郎』と絡んでいる。

「ねぇ、炎の暴君。君はどうして、明るい世界に居る事が出来るの?」

 少女の指が炎をなぞる。
 シャボン玉の向こうに映った景色は、青年と他にも『赤髪のチャイナ娘』と『眼鏡の地味男子』が増えていた。
 その光景を見て、少女は嫉妬に燃える女のような表情を作った。

「私だけの炎の暴君に、近付かないで……ッ!」

 拳を作った手が震える。
 歯がギリッと音を立てる。
 少女の心は、まるでマグマが吹き上げるかのような怒りで溢れていた。

「私だけの、死神に」


「東翔————」



 シャボン玉の向こうに映った青年、東翔はうっとおしそうに空を見上げていた。