二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 炎神暴君★リシタニア-銀魂×戦国BASARA-質問大会中 ( No.161 )
- 日時: 2011/05/04 14:18
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)
第14話 鎖に縛られて喜ぶのはただのM
「ん?」
翔は本日、15人目のゾンビに拳を叩きこんでからふと、塔の方を見た。
爆発するような、何かがぶつかりあうような音がしたのだ。塔の中から。
「おい、三成。今の音は何だ?」
翔は塔の入り口で相手を殺すか殺さないか悩んでいる三成に訊いた。
ハッと我に返った三成は、面倒くさそうに舌打ちをしてから説明する。
先に空華が行った事と空華からお前らを殺しておいてと頼まれた事。
全てを聞いた翔は、炎神を折りそうな勢いで握る。
「あ、いつ——マジで殺す!」
翔はそう叫ぶと、塔の中へ駆けこんで行った。
全員の表情が苦笑いを浮かべる。仕方がないので、翔の後ろを追いかける事にした。
「翔、怒りに身を任せていたら死んじゃうよ?」
雫がけらけらと笑いながら前を走る翔に言う。
しかし、翔は返事をしなかった。本当に怒っているのか、はたまた他の何かを考えているのか。
皆には分からなかった。翔が何を思っているかなんて、翔が何の為に走っているのかなんて。
ただ分かった事は、奥から響く音を聞くたびに、翔の足が速くなる事だった。
「おいおい、翔。俺ぁもう限界だよ、もう走れねぇよ」
「じゃぁくたばれ」
へろへろになった銀時に冷たい一言を入れ、翔は見向きもせずに言葉を吐き捨てた。そしてまた走ろうとする。
奥の音はまだ響く。近くなっているのか、だんだんと大きくなって行く。
「ちょっと、くたばれはないんじゃない?」
「最近メタボになってきましたね」
「鶴姫ちゃん余計なこと言わないの」
翔はチッと舌打ちをして、先に進もうとした。
そこへ、シノが「どうしてそんなに急いでいるの?」と訊く。
「空華だ。奥で戦っているのかもしれない」
「そんなに心配? 大丈夫だよ、我流忍者でもそんなに簡単には死なないでしょ」
のん気に答えを返したシノの胸倉を、翔が掴んだ。
目に光がない。暗く、どこまでも闇にあるようなそんな色をした瞳だ。
シノは翔の手を振り払い、自分の武器であるフープを構えた。
「あんたさ、おかしいよ? 何をそんなに急いでるの。空華がヤバイの? 今のあんたは、笑えない位に怖い」
赤い瞳が怪訝そうに細められる。
翔はまたも舌打ちをして、踵を返して闇へと進む。やがて、皆を置いてその姿は見えなくなってしまった。
シノはため息をついて、銀時に肩を貸す。そして闇へと歩みを進めていく。
「シノ? どうしてお前も翔の後をついて行くんだよ」
昴が首を傾げて、シノに質問をした。
シノは「あはは」と笑っていた。
「翔の考えは分からないからね。この先に何かあるんでしょ? ほらほら、皆置いて行っちゃうからねー」
軽い言葉を返し、シノは進む。
昴は口をとがらせて「面倒だなー」とぼやいた。その肩を、春夜と希実が優しく叩く。
「行きましょう、副隊長」
「そうでさァ。あの死神に手柄を奪われちまいやすぜィ」
楽しそうに2人。
昴はそれに答えるように「おう」と笑顔で言って見せた。
雫も怜悟もミウも凜も燐菜も武将達も、「頑張りますかー」なんてぼやきながら闇の向こうへ歩いて行った。
その場に残ったのは、スカイ1人だけだった。
「……本当、嫌な予感がする」
1人でつぶやいたスカイの言葉は、誰も聞く事はなかった。
***** ***** *****
視界が開け、壊された檻が目に見える。
何の光も宿さなかった瞳が映した物、それは——
「……空華?」
銀髪少女の前に倒れ伏す、黒髪碧眼の青年だった。
翔の持っていた炎神が、カランと軽い音を立てて落ちる。
その音に気付いて、銀髪少女が翔に向けて笑みを投げた。柔らかい、本当の子供みたいな笑み。
「やっと来たね、東翔」