二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 炎神暴君★リシタニア-銀魂×戦国BASARA-質問大会中 ( No.165 )
日時: 2011/05/06 15:29
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)

第15話 夢の中が自分で彩れたら最高じゃね?


 その少女は見た目が4歳か5歳を思わせるほどに小さく、そして幼かった。体育座りで肩を震わせて泣いている。
 そんな少女を慰めようとしているのか、あるいは泣き顔を見たいだけなのか少年が少女を見下ろしていた。
 歳は少女のかなり上8歳か9歳ぐらいを思わせる。黒く肩まで長い髪を左下に結び、自分の身の丈を遥かに超える柄の赤い鎌を背負っている。
 少年は少女の前にしゃがみこむと、優しく声を掛けた。

「お前、泣いてんのか?」

 そう問うと、少女はビクッと肩を震わせて顔を上げた。
 涙でぐちゃぐちゃになった顔を慌てて服の裾で拭い、少年から逃げるように後退りをする。
 少年は特に追う様子も見せず、ただ首を傾げて少女を見ていた。

「なぁ、泣いてんの?」

「き……君は、」

「ん?」

 小さい唇から紡ぎ出した言葉は細く、そして震えていた。
 少年は膝を叩いて立ちあがり、少女に聞き返す。「どうかしたのか?」と。

「き、君は私が……怖くないの?」

 少女は勇気を振り絞って訊いた。
 その言葉を聞いて、少年はけらけらと笑った。勇気を振り絞って訊いた言葉を吹き飛ばすかのように、笑う。

「何で? むしろ、俺が怖がられる方だと思うけど」

「え、どうして? 君は、怖くないよ。とても、優しそうだよ」

 とぎれとぎれに言う少女。
 しかし、少年は苦笑いを浮かべて首を振った。

「俺、人に嫌われる性質なんだよ。だから俺は怖いの。お前よりもずっと、ずっとな」

 まるで嫌われるのは慣れてます、と言うように少年は笑顔だった。
 少女はいつの間にか泣きやんでいて、少年に少しだけ近付く。

「でも、私は怖くない」

「そっか」

 泣き腫らした目を自分の服の袖で拭ってあげた少年は、優しくほほ笑んだ。
 少女はパッと視線をそらして、顔を真っ赤に染め上げた。

「でも、でも私は化け物なの。君よりも、怖いの」

「えー? 化け物ってお前が? 何の冗談?」

 少女は自分の肩を抱く。
 多分、本当の事を言ってしまえば、この少年は自分の元から離れて行ってしまう。気持ち悪いと言って。
 その光景を思うと、怖くなって仕方がないのだ。

「わ、たしは——人の心を閉じ込めちゃうの。皆、皆は私の事を鎖姫って言うわ」

「へぇ。姫ってついてるんだから別に良くない? 俺は少なくとも離れて行かないけどなー」

 あ、人間って弱いもんなと言って少年は笑う。空を仰いで(ここは闇なので闇しかないが)

「人間って……君は、人間でしょ?」

「ヤダな。自分を化け物って言うお前がどうしてそんな事を言えるのさ」

 少年は少女に手を伸ばす。顔には優しそうな笑みを浮かべながら。
 差し伸べられた手を見て、少女は首を傾げた。何でそんな事をされなきゃいけないのだろうか?

「じゃぁ、そんなお前の友達になってあげようか」

「え————いいの?」

 確認するように、少女は上目遣いで少年に訊いた。
 「もちろん」と答えてくれる少年。

「じゃぁお前の名前を……っと。俺の特技で見抜いてあげるよ、友達!」

 少女を立ち上がらせて、少年はくるりと目の前で指を回す。まるでトンボを捕まえるようにクルクルと。
 ピタリと少女の前で指を止め、少年は言う。

「お前の名前は、鎖野夢亜(くさりの/ゆめあ)だな!」

「うん。君の名前は?」

 自分の名前を言い当てられて頷いた少女は、少年に訊いた。
 少年はいつもと変わらない笑顔を浮かべて自分の名前を、自分が何たるかを告げた。


「俺は東翔。炎の死神であり炎の暴君でもある」