二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 炎神暴君★リシタニア-銀魂×戦国BASARA-質問大会中 ( No.166 )
日時: 2011/05/06 16:10
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)

第15話 夢の中が自分で彩れたら最高じゃね?


 2人の影が消えて行く。闇に解け、姿を消した。
 でも、それでも2人は笑っていた。最後まで、楽しそうに。
 その光景を、全て呆然とした様子で見ていた翔は、ガクンッとその場に膝をつく。

「お前は、ずっと忘れていたようじゃないか。鎖姫の事を、夢亜ちゃんの事を」

「酷いですね、翔さん」

 鶴姫はガックリと膝をついて何が何だか分からないというオーラを醸し出している翔に向かってつぶやいた。

「どーすんの? 夢亜ちゃんを置いて俺様らと行動する? そんなの、この事実を知ったら辛くない?」

「あぁ、あぁそうだな」

 力なく笑った翔は、ふらりと立ち上がる。おぼつかない足取りで、闇を突き進んで行った。
 どこに行こうとも全て闇。しかし、翔は歩くのを止めない。
 そのまま真っ直ぐ、真っ直ぐ進んで————、




「俺は、もう1度あんたの『友達』になってやるよ」




 空中に向かって、静かにつぶやいた。

***** ***** *****

 体中の痛みに目を覚ますと、自分は埃だらけで地に転がっていた。
 翔は上半身だけを起こして自分の手を確かめてみる。そして上を、下を、左右を見て景色を確認した。
 少しだけ太陽の光が差すコンクリートのホール。辺りには皆が傷だらけで転がっている。

「闇から生還?」

 鎖姫の声。
 翔は振り向いて、炎神を構えた。

「ふふ。本当にやりあってくれるのね?」

 鎖姫は楽しそうに笑って、腕から鎖を引き抜いた。
 翔は構えていた炎神を————静かに下ろす。

「なっ?!」

 いきなりの事で、鎖姫は驚いた。同時に、皆が覚醒する。
 翔は炎神を背に収め、鎖姫に問う。

「鎖野、夢亜……だろ?」

 その名前を聞いて、鎖姫はピクリと肩を震わせる。
 幾年振りだろうか。その名で自分が呼ばれるのを。もう忘れかけていた名前で呼ばれるのを。

「昔からの特技でなぁ、人の名前を見るのは」

 自分の目をトントンと指で叩き、翔は苦笑いを浮かべた。

「俺は、自分で言うのもどうかと思うが——『友達』はたくさんいる」

「……何それ、自慢?」

 鎖姫は手に持った鎖を握りしめ、言葉を紡ぐ。キュッと唇を噛みしめ、苦痛に耐えるような表情を浮かべながら。
 翔は慌てる様子を見せる事もなく、「まぁ聞け」と鎖姫を宥めるように言った。

「だが、お前は俺の昔からの『友達』だった。これは変わらない」

「だから何だって言うのよ!!」

 鎖姫はどなった。紺色の瞳から涙を沢山流しながら、自分の喉が裂けそうになるぐらいにどなった。
 どうせ次に待っている言葉は罵倒か嘲笑だろう。そんな事を思っていた。
 ら、別の言葉が返って来た。

「あんたさ、もう1度『友達』にならない?」

「……ハ?」

 思わず口を開けてぽかん、とする鎖姫。
 翔は迷わず、そして堂々と手を差し伸べて鎖姫にこう言った。

「俺は東翔。炎の死神であり、炎の暴君でもある」

「つかさ、それ思ったんだけどどっちなの? 死神なの暴君なの?」

 シリアスムード全開の時に、昴が空気を読まない質問をした。
 問答無用で翔は昴に拳を叩きいれる。ボキッと音がしたのは、この際気のせいにしておこう。

「……あはは!! 何、君達。面白いね!」

 鎖姫は笑った。子供のように、楽しそうに笑った。
 その場の空気が和んでいく————。
 だが、



「あーぁ、失敗」



 冷たい言葉と同時に、鎖姫の体に手が生えた。