二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 炎神暴君★リシタニア-銀魂×戦国BASARA-質問大会中 ( No.60 )
日時: 2011/03/24 18:34
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)

第5,5話 怖い話って案外怖くないんだよ。


 屯所の一室にて、怖い話は続行。
 現在、凜がこの辺りで起きた(であろう)怖い話を語っている。
 本当の事を言うと、幽霊の見える翔は怖い話なんて信じていない。むしろ、魂とかを狩ったりするので慣れているのだ。
 まぁその事は話さないでおこう、と思った翔である。

「——とまぁ、ここで話は終わりな訳なんだけど。大丈夫かしら、そこの女の子は」

 凜が指した先に居たのは、頭を抱え込んで震える鶴姫の姿だった。
 巫女である彼女が、何故こんな話を怖がるのだろうか。まぁ、女の子だからであろう。

「う、うぅぅ……。皆様は階段とか話してくれなかったから……」

「字が違う。怪談な?」

 怖がる鶴姫に1発叩きいれ、翔はため息をつく。

「怖くなかったかしら、女装死神さんは」

「俺が怖がるものは船だけだ!」

 偉そうに言う事じゃないと思うのだが。
 まぁ、そこはどうでもいいとして。翔はふと、障子の方を見やった。
 すでに日は落ち、辺りは暗い。どれほど時間が経ったのかも分からない。

「おいお前ら、そろそろ帰るぞ。銀時に怒られる」

「怒られるのだけは勘弁してほしいなァ。新八の正座で説教1時間は足と腰と耳と腹にこたえるぞ」

 家康が苦い表情を浮かべながら、床から立ち上がった。
 次の瞬間————


 ヒヒヒヒヒヒヒィィィ。


 魔女の様な笑い声が、障子の向こうから聞こえてきた。
 ゾクリとした物が一気に背中を這いあがり、周りの空気を凍りつかせる。
 ヤバい気がする。何か、とてつもなくヤバい気がする。
 他の皆がそう思っているのに、翔だけは冷静だった。静かに障子の向こうを凝視し、炎神を抜く。

「お前らは一体何しに来たんだ?」

 静かに、冷たい声で空に問う。
 誰もが『何をしているんだこいつは』と思ったが、真剣な表情だった為、何も言わなかった。
 すると、返って来るはずのないところから、返答が来た。

 ————1人は寂しいんだよォ。

 どこか悲しげな雰囲気を感じさせる声。10歳ぐらいの少年の声だ。
 炎神が蝋燭の火のように燃え上がり、部屋中を明るくする。

「姿を現せ。俺が許す」

 そう言葉を吐くと、ストン——と音がした。
 春夜と燐菜の間。ぼう、と輝く白い少年が立っている。怯えた瞳で、翔をじっと見つめていた。

「怪談なんてくだらないイベントなんかをやってるからだ。変な霊が憑いてきたやがった」

 瞳で『何て面倒な事をしやがるんだよ』と語りながら、翔は土方を睨みつける。
 燐菜は可哀想に思ったのか、少年に手を伸ばした。

「大丈夫だよ、怖くないよ?」

「あ、馬鹿! そいつに触ろうとするな!」

 翔がすぐさま燐菜と少年の間に割って入り、少年に炎神を突き付けた。
 怯えたように飛び上がった少年は、部屋の隅でうずくまり始めた。

「……泣かせたな」

「泣かせちゃいけないでござる! 謝った方がよろしいかと」

「幽霊は泣かせてナンボだ。未練があろうとなかろうと、これ以上彷徨い続けたらあいつも悲しいだろう」

 炎神を振り上げ、少年を叩き切ろうとした瞬間——
 昴が少年の前に立ちはだかった。
 ピタリと昴の目の前で刃を止め、翔はどなる。

「邪魔だ、どけ!」

「どかないよ。だって、この子が可哀想じゃないか」

 昴は少年に手を伸ばして、優しく触れる。
 涙でぬれた瞳で昴を見上げ、首を傾げる少年。このような優しさに、慣れていなかったのだろう。
 翔は小さなため息をつくと、炎神を収めた。そして、全員に告げる。

「30分だ。30分経つまで、そいつを見逃しておいてやるよ。その間に未練を断ち切らせてあげるんだな」

 舌打ちをして、翔は畳にごろ寝をし始めた。
 燐菜が不貞寝をする翔の頭を、優しく撫で始める。

「何するんだよ、燐菜。お情けは死神には必要はない」

「優しいんだね、翔は」

 燐菜はほほ笑む。女神様の様な感じで。
 翔は燐菜の手を振り払い、部屋の隅に移動した。