二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 炎神暴君★リシタニア-銀魂×戦国BASARA-質問大会中 ( No.72 )
日時: 2011/03/31 21:16
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)

第6,5話 恋っていいよね。


「よう、昴」

 昴は持っていた花束を思わず落としそうになった。
 病室——雪月の元に居たのは、翔と武将達である。しかも、雪月本人も嬉しそうだ。

「な、何でここに居るんだよお前ら?!」

「何って、ここに来る理由は1つだろ?」

 平然と小首を傾げる翔。
 何だ、こいつも見舞いに——と昴は思ったのだが、返ってきた答えは予想を遥かに超えていた。

「お前を冷やかしに」

「帰れ」

 翔と共に武将達も病室から追い出された。
 床にぶつけた頭をさすりつつ、翔は立ち上がる。恨めしいように病室の中で喋る2人を一瞥し、無言で背を向けた。
 そんな翔に、幸村は声をかける。

「羨ましいなら、昴殿に申して行けばいいのでは?」

「お前の頭は春満開だな、おい」

 舌打ちするように言葉を吐き捨てた翔は、その双眸で雪月を見つめた。
 色がなくなり白く変わってしまった彼女。本来なら、どういう色をしていたのだろうか。
 髪の色も。肌の色も。全て白。ただ残っているのならば、アクセントとして加えられた赤い唇と漆黒の瞳だけ。

「昴。お前の恋って奴ぁ、すんごい悲しい物だぜ。お前のポジティブでも払えきれない大きくて重い物だ」

 そう言う翔の目は、やけに悲しそうだった。

***** ***** *****

「色落ち病? 知ってるわよ」

 万事屋銀ちゃんにて、グラスに入れられた水を飲みながら、凜は言葉を紡ぐ。
 相対するのは翔。同じくグラスに入れられた水に手をつけながら、ため息をついていた。

「知っている事を全て教えてくれ。あいつの為だ」

「色落ち病患者の現状はどんな感じなのかしら?」

 水を一気に飲み干し、翔は雪月がどんな状態であるか告げる。
 すると、凜は深刻そうな顔を浮かべた。それはまるで、今にも死んでしまうんじゃないかと語っているような。

「深刻だわ。次は目、最後に口。そして————」

 話を聞いた翔は、手に持ったグラスを滑らせて割ってしまった。台所から佐助の「何したの?!」というどなり声が聞こえてきた。
 本人は炎神を背負い、万事屋から飛び出した。
 その背中を見て、凜は小さな笑みを浮かべる。それは、どこか悲しげで——

「大丈夫? あーぁ、グラス割っちゃって」

「私は平気よ。でも、おそらく平気じゃなく帰ってくるのはあの子ね」

「……何を話してたのさ」

「君は知らなくていい事よ」



「……? 翔」

 夕暮れ時、風魔は翔の前に姿を現した。
 いきなりの出現に驚いたのか、翔は目を剥いて少し警戒したような体勢を取る。が、風魔だと分かると警戒を解いた。

「風魔、頼みがある。俺を連れて病院へ行け」

「……何故」

「理由は後で話す。だから今は————頼む」

 必死になって頼む翔を見て、風魔は手を差し出した。

「飛ぶ。掴まれ」

 病院に行ってくれるようだ。
 翔が風魔の手を掴んだ途端、風魔は赤く染まった空へ消えた。

***** ***** *****

 病院に着いた2人は、真っ先に雪月の病室に向かった。
 風魔に「ありがとう」と短く告げると、翔は雪月が居るであろう病室のドアを思い切り開いた。
 ガラガラスパンッという音がして、昴と雪月の姿が視界に入った。

「昴!」

 彼が知らなければいけない事があった。
 誰よりも、自分よりも昴が知らなければいけない事。

「な、何?!」

 いきなり名前を呼ばれた昴は、驚きながらも席を立ち上がった。
 翔は昴の腕を掴み、短い言葉を吐き出す。

「話がある!」

 真面目な表情で言われ、昴はうなずくしかなかった。