二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 炎神暴君★リシタニア-銀魂×戦国BASARA-質問大会中 ( No.74 )
- 日時: 2011/04/01 16:11
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)
第6,5話 恋っていいよね。
その日の夜、万事屋銀ちゃんにて。
「おい翔。てめぇ、いつまで項垂れてんだ?」
銀時は舌打ちして、翔に向かってどなる。
しかし、翔はソファの上から動こうとしない。ぐだー、とした感じで寝ている。
「どうしたんですか、翔さんは。いつもよりさらにグダグダなんですけど」
「知るかよ。あいつの心はどうも分かりにくい」
言葉を吐き捨て、銀時は耳をほじり始めた。
その時、控えめなノックが外から聞こえてきた。
「ハイハイ、今出ますよー」
佐助がドアへ走って行き、ノックをした客を万事屋へ入れる。
揺れる白髪。雪月の姿だった。
「東翔さんがここに居ると聞いてやってきました。どこにいらっしゃいますか?」
「翔さんはそこに居るけど……。何で君は、翔さんに会いに来たの?」
新八がソファでゴロゴロする翔を指し、雪月に訊いた。
「私を殺してください、と頼みに来たんです」
静かな雪月の声が、万事屋全ての空気を凍りつかせた。ただ1人、翔だけは固まらなかったが。
翔はむくり、と起きあがり雪月を見上げる。
本人、雪月は真剣な表情をして、翔の前に立っていた。
「それで、あいつが喜ぶと思うか?」
冷たい声で、雪月に問いかける翔。
「喜ぶとは思えません。ですが、私はもう、あの人の苦しむ姿を見たくないんです。私の為に、苦しんでくれる昴さんの姿は見たくないんです」
「で? お前はそれで良いのか。あいつの気持ちも考えずに、お前は死を選ぶのか。俺は今まで沢山の人を狩ってきたが、お前みたいな奴は初めてだぞ」
ハッと嘲笑するように、翔は言葉を紡ぐ。
しかし、雪月はそんな事を言われたのにも関わらず、真剣な表情を崩さなかった。
「……ハァ、ダルイ。風魔、居るか?」
ため息をついた翔は、奥に居るであろう風魔を呼ぶ。
風と共に現れた風魔は、「何か」と翔に尋ねた。
「昴を連れてこい。誰が何と言おうと、そいつらもまとめてだ。気絶させてもいい。殺してはダメだ」
「御意」
風魔はうなずくと、夜に包まれた江戸へ消えた。
翔は壁に立てかけてあった炎神を手に取り、雪月に言う。
「じゃぁ、今から裁判を始める」
凜とした声が、万事屋の中を響いた。
***** ***** *****
10分後、風魔が昴、春夜、希実の3人を抱えて万事屋に戻ってきた。
「痛いタイタイタイタイタイ。ちょ、髪が髪が髪が!」
昴がどういう訳か、風魔に髪の毛を掴まれていた。
訳を聞くと、この3人に攻撃を仕掛けられた風魔は、無理矢理この3人を連れてきたのだとか。
特に昴は、風魔に対して警戒心剥き出しだった為、こうして無理矢理髪の毛を掴んで帰って来たのだ。
何をしているんだ、昴。
「イッタぁ……。抜けるかと思った……」
「よう昴。うちの忍びは優秀でしょ?」
床に下ろされた昴は、声が降ってきた方向を見上げる。
そこに居たのは、鎌を担いだ翔だった。何か、これから『死神の仕事しますよー』っていう感じの。
あ、ヤベ。睨まれた。
「お前の命令か! 希実ちゃん、こいつ殺っちゃって!」
「副隊長。この方は悪い事など考えておりません。ほら、あちらをご覧ください」
希実の白魚のような指が、部屋の隅を示す。
白髪を揺らしてほほ笑んでいた、雪月の姿が昴の目に映った。
「雪月ちゃん! 一体どうしたの?」
「えへへ、ちょっと……」
そんな和んだ2人に、翔の冷たい声がかかった。
「雪月。これより、裁判を始める」
「ハイ」
昴の前をすり抜け、雪月は翔の前に立つ。
何が何だか状況を理解出来ない昴は、雪月に問いかけた。
「な、に? 裁判って何だよ。ねぇ、雪月ちゃん!!」
「言った通りだよ。私、これから死ぬの」
昴の方を向き、ほほ笑む雪月。今までで見た事のない、最高の笑顔だった。
「昴君。私ね、君と居て幸せだったよ。でもね、苦しんで死ぬのは嫌なの。君が苦しんでいるのも見たくないの。だからね、死ぬの」
「嫌だよ、俺。お前が死ぬのなんて、考えられないよ!!」
昴の悲痛な叫び声が、全員の鼓膜を震わせた。
奥で鶴姫の泣く声が、慶次が息を飲む声が、幸村が唖然とする声が聞こえたが、今の昴の耳には届いていない。
雪月はそんな昴に近付いて、優しく抱きしめた。
「昴君。私は消えちゃうのが嫌。でも、君は覚えていてね? 私、君の事が好きだったんだから」
その優しい声が心を震わせ、涙をあふれさせた。一気に万事屋の中が感動ドラマのステージ。
雪月は昴の腕から離れ、そして「バイバイ」と言うように手を振った。
「白野雪月。色落ち病患者、貴殿に一切の罪はなし。よって天国へ送ってやろう」
翔は炎神を振るい、天井に白いゲートを作った。
そこへ手を伸ばす雪月。
昴は、そんな雪月の名前を呼んだ。
「俺も、好きだった。絶対生まれ変われよ!」
「うん!! 今度は、健康に生まれてくるね」
お互い笑いあい、雪月は白いゲートへ吸い込まれていった。
シンとする万事屋。
「副隊長、大丈夫ですか? 苦しいんですか?」
希実は、今にも泣きそうな昴を見上げ首を傾げる。
「大丈夫だよ」と昴は返し、翔に笑いかけた。さっきのように、涙を流しながら。
「ありがと。最期に呼んでくれて」
「……ケッ。これだから人間って分からねぇ」
翔は面倒くさそうに頭を掻きまわし、大きな欠伸をした。