二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 雪のCLOVER 【銀魂】〜始まり小唄篇完結!〜 ( No.12 )
日時: 2011/03/12 13:16
名前: 白雪 (ID: wJNgr93.)

≪箱庭王女篇≫

第四訓『…次の回覧板…屁怒絽の森だぞ…』

雪亜が万事屋へ仲間入りをしたその翌日—————

「ねっいいでしょ?ねぇってば!」

「ダメに決まってるだろうが!!いくらお前が強いからって…無理だ!!」

「そうですよ。ね?やめましょう!死にますよ!!」

「でも私はこの前一人で大丈夫だったアルヨ。だから雪亜も大丈夫ネ。あ、でも私よりは弱いアルヨナ?…どうするネ?」

「神楽よりは強い自信あるけどな!…絶対一人で行くんだーっ」

万事屋メンバー四人は揉めに揉めていた。

その理由はというと…時間は30分前に遡る。

『…おい、次の回覧板…』

『え?何か言いましたか銀さん』

『…次の回覧板…屁怒絽の森だぞ…』

『マジでか』

『誰?へどろって』

『茶吉尼の生き残りってぇの?存在がすごい』

『茶吉尼…それくらいなら平気だね。私が行ってくる!』


という会話から、あのヘドロの家に誰が行くかを揉めていたのだ。銀時たちは雪亜があの怪物のもとへ行こうとするのを必死に止めるが、当の本人は聞く耳を持たない。

「大丈夫って言ってんだろ?私が茶吉尼如きに劣るとでも言うのか?」

「そうゆう意味じゃねくてだなァ…じゃあどうなったって知らねぇからな!」

「ふんっ!10分で帰ってきてやる」

そう怒鳴り散らすと雪亜は乱暴に扇を背に担ぎ、玄関の引き戸を勢いよく開け、そして勢いよくとびだして行った。

「大丈夫ですかね…雪亜ちゃん」

「ほっとけほっとけ!あんな餓鬼。どうせ5分もしねぇうちに帰ってくらぁ」

「私心配ヨ。ちょっと見てくるネ」

「勝手にしろや」

大人気なく拗ねてしまった銀時をよそに、神楽まで番傘を持ち出て行ってしまった。


その頃の雪亜は『屁怒絽の森』へ丁度到着していたところだった。

「…お客さんどころか人っ子一人いないじゃないか」

「いらっしゃい。お客さんですか?」

「!」

いきなり鬼のような風貌の男が店の奥から顔を覗かせる。一瞬その迫力に引いてしまったが、いつもの落ち着きをすぐに取り戻すとヘドロに事情を話す。

「そうですか。万事屋さんに新しい従業員さんが…しかもまだほんの幼子じゃないですか。大丈夫なんですか?」

「幼子?人は見かけによらず。私をそこらの小童なんかと一緒にするな」

「ははっ!元気だけはあるんですね」

「ふん!生言うんじゃねぇや」

ヘドロに対して全く怯えを見せない雪亜を、遠くで眺めていた神楽は、雪亜が本当に只者じゃないということを悟っていた。

(でももう帰さないと…銀ちゃん拗ねたまんまアル…)

拗ねたままの銀時をそのままにしておくのも気が引ける神楽は、雪亜のもとへ駆け寄った。

「雪亜ーっ!もう帰るアルヨ!銀ちゃんの機嫌直しに!」

「あ、神楽。うん!そうだね!…じゃあね、ヘドロさん」

「えぇ。またいつでも遊びに来てください」

ヘドロは雪亜と神楽ににっこりと微笑むと、そのまま店の奥へ姿を消していった。

「怖くなかったアルカ?」

「なんで?普通の人だったよ…」

「?…雪亜?」

急に表情を曇らせた雪亜をみて神楽は不思議に思い、顔を覗き込む。声の沈んだまま「なんでもない」と答える雪亜の顔は、どこか孤独を抱えた寂しい顔をしていた。


「ただいまヨ〜!」

「…ただいま」

万事屋へ到着した二人は、出来るだけ明るく振舞った。もっとも雪亜は今の状態ではこれが精一杯なのだろうけど。

「おかえりなさい、二人とも。どうでした?雪亜ちゃん」

「ん?あぁ、どうってことなかったよ」

「そうなんだ…すごいね、雪亜ちゃんは」

「新八、銀ちゃんの様子はどうネ?」

「結野アナのニュース番組のおかげで機嫌が直ったみたい」

それを聞いてホッとした神楽は、雪亜の様子について新八にこそっと話した。

「雪亜が落ち込んじゃったアル」

「雪亜ちゃんが?どうしてまた…」

「それが分からないから相談してるネ。察しろダメガネ」

「!!!…で?僕にどうしろと?」

「どうもしなくていいアル。…でも、さりげなく雪亜のこと探ってみて欲しいネ。私たち、雪亜のことなんにも知らないアル…名前と年だけしか…」

「う〜ん…確かにそうだね。できるでけ詳しいことを聞いてみます」

「頼んだアルヨ!」

話を終えた新八と神楽は、銀時の隣でバラエティ番組を見ている雪亜の方へと歩いていき、声をかける。すっかり機嫌は直ったらしい。

「雪亜ちゃん!僕たち雪亜ちゃんのことあんまり知らないでしょ?だから今日色々と教えてくださいよ!」

「そうアル!私も色々知りたいアルヨ!ねぇ銀ちゃん?」

「ん?そういえばそうだな。じゃあ自己紹介でもしてもらうか」

そういいながらバラエティ番組のついていたTVを消すと、銀時は白髪天パをわしゃわしゃと掻きながら言う。

「そうだね。自己紹介…名前と年は知ってるね?産まれはトレフィア王国。育ちも同じだよ。あ、こう見えて私トレフィア王国第一王女なんだぁ!…母と父は私が幼い頃に亡くなって、今の私の家族は弟の美亜だけなんだ…だからアイツは次期国王なのに、急に城からいなくなりやがって!…だからここまでアイツを連れ戻しに来たんだ」

それを聞いた3人は、1〜2分ほどポカンと口を開けて固まっていた。が、すぐに銀時がその話に食いついた。

「トレフィア!?あの金持ち率の高い国か!?雪亜…様!ずっとここにいてもいいぞ!じゃねぇや。いいですよ!」

慣れない敬語を使う銀時に呆れながら雪亜は溜息を吐く。

「ずっとはいないけど…見つかるまではここにいるつもり。よかったら今度江戸を案内してね。まだ勝手が分からないものだからな」

「もちろんアル!」

「あ、でもここ(歌舞伎町)へは私の知り合いのお姉さんがいてね。その人と一緒でもいいか?」

「知り合い?誰ですかそれは」

「甘味処で働いてるらしいんだ。確か…『みかん』って名前の店だったと…」

「そこっ!俺知ってるぞ!!…あそこのバイトの子か…ツンってしてる奴だろ?ツンというよりツンツンツン…」

「明日そこまで案内してくれね」

そこまで語ると雪亜は「昼寝をしてくる」と言い、欠伸をしながらリビングを出て行った。