二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 雪のCLOVER 【銀魂】〜箱庭王女篇〜 ( No.15 )
- 日時: 2011/03/23 22:21
- 名前: 白雪 (ID: wJNgr93.)
第六訓『二度と私を女扱いすんな!!』
「朱雀お姉ちゃん!」
店内で大声を出す雪亜を、周りのお客さんがじろっと睨む。
それに対して雪亜はまたまた大声で
「んだテメーら!やんのかゴラァッ!」
と中指を立て喧嘩を売り、ガン飛ばす。
「相変わらず威勢がいいねぇ、雪亜」
そこに突然、見知らぬ声が割り込んできた。
振り返るとそこには黒髪のショートヘアの女性が立っていた。感情のない声で雪亜に話しかけると、雪亜の表情がぱぁっと明るくなった。
「朱雀お姉ちゃん!やっと会えたね〜!!」
「うん、久しぶりだね。元気してた?」
「あのさ、花咲かせてるとこ わりぃんだけど、こいつがお前の言ってた知り合い?」
盛り上がっているところに銀時の機嫌が悪そうな声が割り込んできて、二人も機嫌が悪くなる。
「そうだけど?私が知り合いでなんか文句でも?」
「朱雀姉は怒ると怖いよ〜。すぐに抜刀しちゃうんだからさ」
「抜刀?その人刀使うアルカ?この天人の時代に」
確かにそうだ。
警察でもなければ攘夷浪士でもない彼女が、どうして刀を持ち歩いているのか……———
神楽のもっともな質問に、銀時と新八はそう思った。
改めて朱雀の格好を見渡してみた。
凛とした美しい顔立ちに、その顔にピッタリと似合う鼠色の煙管を咥えている。甚平を着ているが、それも彼女によく似合う。
そして唯一違和感を覚えたもの…
それは先程銀時たちが疑問に思っていた、腰に差した漆黒の刀。
「刀は自分の身を守るために持っている」
「ふ〜ん?どれほど刀を扱えんの?女のお前に」
銀時がそう呟いたその瞬間に、ギチャンッ!…と鋭い音が狭い店内に響き渡った。朱雀が銀時を斬り捨てようとしたのだ…
銀時は寸のところでその攻撃を木刀で受けた。
朱雀の攻撃は 早かった。
銀時じゃなければ死んでいただろう。
店の中にいたお客たちは、銀時たち以外みんな怯えて走り帰ってしまった。
「あ〜らら。お客様がいなくなったんですが〜?てかお前定員だろ?店内抜刀禁止。そんなんだと強くなれねぇよ、嬢ちゃんよぉ!」
木刀を握り締める手に力を込めて、銀時は朱雀の身体ごと刀を弾き飛ばす。
その力を利用して朱雀は空中で一回転し、綺麗に着地をしてみせた。
「…うるさい…二度と私を女扱いすんな!!」
「落ち着きなさい、朱雀」
氷のように冷たい声を放ち、暴走しかけた朱雀をとめたのは雪亜だった。その表情は先程の子供らしい顔ではなく、一国を纏めてきた王女としての顔であった。
「…ごめん、雪亜」
「あ、いや…その…ごめん。私もちょっと…ごめん」
「雪亜ちゃんの国って、どんなところなんですか?」
しゅんとする雪亜をかばうように新八が話題を切り出す。さすが気ぃ使いなだけあって、話題も少しは続きそうなものだった。
「箱庭の国って周りの国々から呼ばれてる。そして私は箱庭王女様〜!なんて言われちゃってさ。笑っちゃうよね…み〜んな私に媚び諂いやがる。機嫌をとって…美亜がいなくなってからは本当の独りぼっちになっちゃって…」
暗くなっていく雪亜の顔とその場の空気に耐え切れず、もう少し違った話題をと新八は再び話し出す。
「あ、あの…どうして箱庭の国なんて?」
「トレフィアは周りの国からは孤立していてさ、それに船も港に入ってこないし、そもそも港なんてないし…国から出る事ができるのは自分専用の飛行機かなんかを持っている人だけだよ」
「すご…」
「雪亜は、お金持ちアルカ?」
無邪気な笑顔を向ける神楽は、その場の空気を和ませてくれた。
「ん?まぁ金持ちな方かもね。一応王女だしさ」
「俺も金持ちに産まれたかったよ。不公平だよな〜神様はよぉ…」
その瞬間、雪亜の目の色が変わる。
「銀は、上に立つ者の苦労を知らないからそんなことが言えるんだ」
怒ったようにプゥっと頬を膨らます雪亜の頭を、朱雀はくしゃりと撫でると微笑んだ。
「変わらないね、その癖」
「癖?まぁいいや。てか何で上の奴らが苦労するなんて…」
「人の上に立つ奴っていうのは、みんながみんな左団扇ってわけじゃない。みな平等に、なんていってたら国が腐っちまうさ。上の者に対する下の者たちの信頼、その下の者たちをまとめる上の者の支配力。それらがなけりゃ国なんて簡単に滅びてしまうよ」
小難しいことを語りだす雪亜を見て、その場にいる誰もが 雪亜が王女であることに納得をした。
きっとこのような考えを大切にしながら、雪亜は自分の国を守っていたのだろう。
「なんか、すまねぇな。雪亜」
「いいよ。ま、私も私なりに苦労してるってことさ。分かった?」
「「「「分かりました」」」」
「な〜んでみんなそんなに声が揃うんだよ」
そうして暫く笑いあった後、万事屋メンバー+一人は、やっと『甘味処 みかん』を後にした。
その後奥の厨房にいた何人かのスタッフたちは、こそこそと話し合った後、警察へ連絡を入れることにしましたとさ。
*おまけ*
万事屋へ帰った銀時たちを待ち受けていたのは、黒い隊服を纏った真選組のお馴染みメンバーだった。
事情聴取を受けた後、苛立っていた銀時たちはとりあえず寝て気を静めることにした。
もちろん無罪だったが、土方がいつもの如く刀を銀時に向けたのは言うまでもない。
〜箱庭王女篇 完〜