二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 雪のCLOVER 【銀魂】〜箱庭王女篇完結〜 ( No.20 )
日時: 2011/03/24 18:25
名前: 白雪 (ID: wJNgr93.)

≪雪華篇≫


第七訓『ごめん。ありがとう』


今日の天気は晴れだ。けれど真っ白な雪も降ってきている。屋根に積もった美しい白色は、日に照らされてきらきらと光っていた。

そんな風情を感じる天気の中、万事屋には珍しくシリアスな雰囲気が漂っていた。
雪亜が部屋に篭ったまま、出てこようとしないのだ。

「雪亜〜?どうしたネ。何で出てこないアルカ?病気アルk…」

「お願い神楽…今日は部屋に近づかないで…みんなにそう言って」

「…?分かったアル…」

雪亜の耳に落ち込んだ神楽の声が響き、申し訳ないと心で謝っておいた。

しばらくして銀時と新八と神楽が話し合う声が聞こえてきて、雪亜は布団に頭まですっぽりと潜り込んでしまった。

「どうしたんだよアイツ、反抗期か?よし、俺が性根叩きなおしてやる!おい雪亜!!でてこんかいぃぃ!!!」

勢いよく襖を開けようとする銀時を、神楽の大声が遮る。

「やめるネ銀ちゃん!!危な———」

言い終える前に銀時の顔から血が垂れる。
雪亜の放ったクナイが銀時の頬を掠っていったのだ。間一髪で直撃を免れた銀時だったが、不意の攻撃を少し食らい、銀髪を少しと頬を傷つけられてしまった。

「せ、雪亜?どうしたんだ一体」

「こないでっていっただろ!?今日は外に出たくない!誰とも会いたくないし話したくもないんだ!お願いだから放っておいてッ!」

雪亜は声を荒げてそう怒鳴った。どうも様子がおかしい…その場の誰もが、定春でさえそう思っていた。

「雪亜ちゃん…どうして今日がだめなんですか?」

「…今日がダメなんじゃない…私は、雪の日が嫌いなんだ…ッ」

「雪の日が?どうしてだめアルか…?」

布団からそろりと出てきて、しょぼんとした様子で雪亜は答えた。

「…ハクっていう…私の昔からの友達がいてね。所謂幼馴染ってやつ?それで、ハクは今日みたいに…晴れているのに雪がふっているっていう天気の日に…死んでしまった…私を庇ってさ…殺された。私のせいで…私が殺したんだ…ハクを…」

銀時や神楽からしてみれば、友一人亡くしたくらいで…と思うだろう。実際のところ雪亜だってそうだ。仲間を失ってもここまでにはいたらない。けれど雪亜の言う『ハク』という子は特別だった。

昔から…それこそ産まれたときからずーっと傍にいてくれた大切な人なのだ。王女の雪亜には、たった一人の友達だった。

「そうか…まぁそれなら雪がやむまでじっとしてろや」

投げやりにそう銀時は言い捨てるが、これが彼なりの優しさなんだと、新八も神楽も雪亜も分かっている。

だから雪亜は、

「…ありがとう。そうさせてもらうよ」

と、それだけ言って襖を閉め 布団へと潜り込む。


「じゃあ買出しにでも行きますか!ほらみんな、行きますよ!雪亜ちゃん、留守番お願いね!」

そう言って新八は三人+一匹とともに出かけようとした。
そこへ新八に向かって一本のクナイが飛んでくる。

「のゎッ!!なんですか、今度は!!」

飛んできたクナイは新八の顔面すれすれを通って押入れに突き刺さった。
そのクナイには一枚の紙切れが結び付けられていた。神楽がそれを解き、目で読んだ。

「おい、見せてみろよ」

「僕にも見せてください」

「ん」

軽く返事をしてその紙を二人に手渡した。



『ごめん。ありがとう』



十文字にも至らない短い手紙だったが、不器用な雪亜が一生懸命気持ちを綴ってくれたのだろう。
その手紙を大事にたたむと、銀時は懐へ収めて二人と一匹に告げた。

「行くか」

そして、奥にいる彼女にも…

「ありがとうな」

返事はしなかったが、きっと微笑んでいるだろう。

そう信じ、三人と一匹は買出しに出かけていった。