二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 〔銀魂〕   *。夢は儚く、愛おしく。* ( No.70 )
日時: 2011/04/03 12:05
名前: 瑠々 (ID: .qxzdl5h)

〈特別編〉

 華は儚く


パァン!

小さな村の、ある塾の隅の部屋で、竹刀と竹刀がぶつかる音がした。
其の音と共に、風はサワサワと辺りの葉を揺らした。
そんな塾に、一人の少女の声が響いた。

「よっしゃ勝った!銀時には此れで10勝!いや、12勝だったっけ?」

「どっちでも良いわ、馬鹿」

「五月蝿い、敗者がッ!」

ギャンギャンと喧嘩する二人の少年少女の髪と目の色は異様だった。
二人共、銀髪に赤い眼。此の日本では有り得ない色をしている。
だが、二人の周りに居る、二人と同い年位の子供達はそんな事全く気にしてない。
すると、黒髪をポニーテールに結わえた可愛らしい少年は、落ち着いた口調で二人の喧嘩を止めに入る。

「二人共、辞めぬか。銀時、凛に負けた事には変わりは無い。
其れを何時までもネチネチ・・・情けない」

「そーそ。あ、次はヅラと高杉の番じゃない?」

銀髪の少女——凛は、黒髪の少年——桂の「ヅラじゃない桂だ」と言う
台詞を無視して、座り込み、近くの壁に体を預ける。

戸から風が通り、風と一緒に桜の花びらも中に入ってくる。
高杉と呼ばれた紫の髪の少年は、桂と睨み合いながら竹刀をぶつける。

二人の試合を見ていると、少しずつ瞼が重くなって行く。
凛が少しずつ夢の世界に入って行っていると、バシッと言う凄まじい音が響き、凛もハッと目覚める。


——勝ったのは、高杉。


桂は悔しそうに凛の隣に来て正座する。桂は本当に真面目で礼儀正しい。女の凛でさえ、胡坐をかいて座っているのに。
すると桂は、凛を見て、「決勝だぞ」と言った。凛は渋々高杉の前に行く。
凛は高杉に一度だけ負けている、らしい(本人は覚えていない)。だから高杉とは余り対戦したくなかった。
桂の手を叩く音と共に、試合が始まった。

−−−−−

「よっしゃ!勝ったァ!」

竹刀を床に置くと、凛はガッツポーズをした。其の様子からは女の欠片も無い。
試合の結果は、一位凛、二位高杉、三位桂、四位銀時と言う結果だった。

「銀時はやっぱ弱ェな」

「うるせぇ低杉!テメェだって凛に負けただろうが」

「残念だったな。俺は一度だけ凛に勝ってる」

低レベルな争いを繰り広げてるのは銀時と高杉。
此の二人の喧嘩は始めは言い合いでも、途中から取っ組み合いの大喧嘩になるから早めに止めないといけないのだが、止めに入った者も何時の間にか喧嘩に参加してしまうので簡単に止めに入れない。

すると、一人のクリーム色の長い髪の男の人が入って来た。

「四人共、おやつにしましょうか」

「松陽先生!」

松陽先生と呼ばれた男の人は、優しく微笑むと「先に行ってますね」と言い、歩き出した。
すると、凛が走り出して元気一杯に言った。

「一位の人がビリの人のおやつ食べて良いって事で!」

凛がそう言うと桂は走り出し、銀時と高杉も慌てて走り出した。

凛は笑いながら、桂は凛を抜こうと一生懸命に、高杉は銀時をフッ飛ばしながら、銀時は尻餅を付きながら、走っていた。

−−−−−

結局、凛が一位で銀時がビリだったのだが、流石に可哀想に思った凛は、銀時におやつを返したのだった。


華は儚く
(幸せな日々は)
(華の様に一瞬にして散っていく)