二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- 第1話 ( No.4 )
- 日時: 2012/03/07 21:14
- 名前: 雷燕 ◆bizc.dLEtA (ID: Ti.DGgQd)
第1話 歴史の面影が残る町
目の前の現実を受け入れるのが面倒で、彼女は目を閉じた。
——いやいやいや、ちょっと待てよ。落ち着け、頭を冷やせ、冷静になれ。普通に考えてありえないだろう、これは。
自分は恐らくちっとも慌ててはいないのだろうと薄々感じながらも、そんなことを思う。元々慌てるということがほとんどない気性なのだ。どちらかといえば呆れている。しかしそれでもこう思ってしまう程には、目の前の景色は信じられないものだった。
彼女はまた思考をめぐらす。
——これは夢だ。リアルな夢なのだ、きっと。寝ていたはずなのに座っているけど、スルーしよう。そんなこともあるさ、うん。なぜか肌に感じる心地よい風は、きっと窓を閉め忘れたんだ。昨日は窓を開けた覚えはないけど、親が開けた事にしておこう。とにかく、目を開ければ見慣れた自分の部屋の景色があるに決まってる。よし、目を開けよう。現実に帰ろう。せーのっ。
そして、最早受け入れるしかないのかと悟った。
今いる高台から見る目の前の町は、来たことなど無いが見たことはある気がする町。左を見れば、雲をかぶるほど高い山々。右には、町とその先の池や小道が見える。
最後に自分のすぐ後ろにあった像を見て、彼女はとうとう絶句した。あるキャラクターの像である。
世界的にとても有名なキャラクター……ディアルガ、そしてパルキア。
さらには、辺りに飛んでいる鳥はよく見れば鳩ではなくムックルとかいう生物。池の近くには茶色くて出っ歯の生物もいるし、オレンジ色で首の周りに浮き輪のついた生物もいる。どれも見たことがある生物。しかし受け入れ難い生物。
そしてこの時になって、自分が何かを握っていることに気がついた。太陽の光を浴びて宝石のように輝くそれは、白い玉の欠片の様だ。本当に小さくて、3cmくらいしかない。こんなものを持っていた覚えは無い。何だろうこれは、と思いつつ、このままでは無くしそうだったのでズボンのポケットに突っ込んだ。
彼女は立ち上がり、もう一度辺りを見回す。そして定かでない記憶と照らし合わせる。信じたくないし認めたくも無いが、ここは……ハクタイシティ?
何故こんなところに自分がいる? ゲームの世界に入り込んだとでも言うのか? いったい何が起きたんだ——?
疑問は尽きない。しかし、とにかくやるべき事はひとつだ。帰る方法を探す。それ以外に何がある。
確かに、ポケモンの世界に行けたら面白そうだとは思っていた。思っていただけだ。実際にそうしてくれと頼んだ覚えは無い。
来る方法があるなら、帰る方法もあるよな……?
ぼんやりとそう考えていると、少し遠くの自転車屋が目に入った。そして思い出した。
そうだ、この町にはオーキドがいるかも知れない!