二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- 第1話 ( No.6 )
- 日時: 2012/03/07 21:18
- 名前: 雷燕 ◆bizc.dLEtA (ID: Ti.DGgQd)
自分は諦めが早いのは自分が一番よく知っている。何故だか知らないが、来てしまったものは仕方がない。どうせなら、とりあえず、トレーナーになってしまえばいいではないか。
ここ、シンオウ地方が舞台であるゲームの終盤で、ここにはオーキド博士が来ていたはず。今居るかは分からないが、別に行って損はないのだから訪ねてみるべきだろう。
彼女はオーキドの家へ向かうべく立ち上がった。そして気付いた。自分は寝たときの格好のままで、何も履いていないではないか。服は寝ていた時のままのパジャマ、と言うかジャージ。一応人前に出てもそこまで変でないような格好ではあるのだが、それでも気がひける。とはいえ、着替えるものなど何も無いので諦めた。雑に頭を触ると、黒のショートカットは、幸いにも寝癖などはなかった。
彼女は諦めて、裸足のまま走り出した。健康は裸足から、と言うではないか。きっと。
「ここ……だよな」
彼女は一軒の家の前で足を止めた。表札には「オーキド」と書かれている、何の変哲も無い家。
そして、インターホンを鳴らそうとしてふと手を止めた。現在の時刻が気になったからだ。薄暗い程度なので訪問するのがそこまでおかしい時間ではないだろうが、外に人が少なすぎる。太陽も東にあるし、早朝なのだろう。今インターホンを鳴らすのは変だろうか。
そう思って引き返し、その辺のポケモンを観察してみることにした。
町からはずれ、205番道路へと入る。そこには数々のポケモンの他に、池の桟橋から糸を垂らす釣り人もいた。朝早くからご苦労なこった——と思いながら彼女は草むらの方へ歩いていく。時間を聞こうかとも思ったが、知らない人に声をかけるのは気がひけるし、こんな時間に時刻を知らず外にいるというのもおかしいだろう。そう思って止めた。
彼女は草むらへ入ってみた。足が草負けしそうだ。自分を全く気にせずに戯れるケムッソやカラナクシなどが近くに見える。その中で、寝ているように見えるビッパの側にしゃがみこんでみる。
茶色の毛並みはふさふさでもふもふで、触ると気持ちがよさそうだ。つぶらな瞳も非常にかわいらしい。しかし、その出っ歯に噛まれれば痛いどころではすまなさそうだ。見ただけではレベルなど分からないので、実は凄く強いということも有り得る。
この気の抜けきった顔を見る限り、そんなことはまずなさそうだが。
思い切って頭をなでてみた。毛は柔らかくてとても触り心地が良い。手を噛まれることも覚悟していたが、そんなことは全くなく、とても気持ちよさそうにしている。
——可愛いもんだな。
そんなことを思ったとき、後ろから子供の声が聞こえた。
「ブイゼル、みずてっぽう!」
「避けてたいあたり!」