二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- 第2話 ( No.15 )
- 日時: 2012/03/07 21:07
- 名前: 雷燕 ◆bizc.dLEtA (ID: Ti.DGgQd)
第2話 森の中の荒れ果てた洋館
レイアはハクタイシティを出て、205番道路に入る。釣り人の数も通行人の数も、さっきより増えていた。そして彼女は道の隅にしゃがむと、小さな決心をした。
ヒトカゲを、出そう。
「……よし。出て来い、ヒトカゲ」
そんな、よく聞く台詞を吐きながらモンスターボールのボタンを押す。するとモンスターボールが口を開き、光を吐いた。その光が形を作り、色が付く。オレンジ色の体、大きな瞳、尾の先の炎。
そこには、紛れもない「ヒトカゲ」がいた。
「……すげ。本物だ……」
レイアが実写のポケモンをしげしげと眺めていると、ヒトカゲはこちらを見て、鳴きながら首をかしげた。レイアはヒトカゲを抱えあげて立ち上がり、話しかけてみた。
「ヒトカゲ! 今日から私が友達な! よろしく!」
ヒトカゲが無邪気に笑って鳴いた。
あ、通じるのか、と思うのと同時に、「友達」という言葉が少しむず痒い。が、「主人」などという言葉も嫌だった。主従の関係などではないのだから。
こいつだって、モンスターボールの中よりは外に出ているほうが気持ちいいのだろうか。勝手な判断ではあるが、なるべくモンスターボールからは出しておこうと思った。
8kg以上あるので、結構重い。レイアはヒトカゲを下ろして、再びしゃがんだ。
「なあお前、バトルは好きか?」
ヒトカゲが、また笑顔で頷く。
「そっか。気が合いそうだな」
レイアも笑って、立ち上がった。
「じゃあ、行こうか。まずはハクタイの森を抜けて、コトブキシティだな」
彼女が歩き出すと、ヒトカゲもついてきた。
森の入り口が見えてきた頃、道端の一人の少年が声をかけてきた。
オレンジ色のマフラーを首に巻き、赤の帽子を被った、見たことのある気がする少年。名前の推測できる少年。恐らく「コウキ」。というか、さっきオーキドが言っていた「チャンピオンに勝つ奴らのような、いい目をしたトレーナー」の一人ではないか?
「ヒトカゲか、珍しいポケモン持ってるね! 勝負しよう!」
「……ああ、やろう! まだすっごい弱いけど勘弁な」
まだチャンピオンに勝つほど強いか分からないし、それに、初めてのバトルだ。せっかくならゲームの主人公くらいが相手のほうがいいじゃないか。
——ということで、レイアは相手と同じように元気に返事をして、ヒトカゲの覚えてる技をひとつも知らないことに気付いた。どうやったら分かるのだろうかと思い、図鑑を取り出してみる。
すると、多分コウキの少年が驚いたように言った。
「えっ、ポケモン図鑑持ってるの?」
「うん。さっきオーキド博士にもらった。なあ、これでポケモンの技って分かる?」
驚くということは、やはり貴重なものなのだろうか。そんなことを思いつつ、早くバトルがしたいのでこちらの質問を優先させた。
「あ、うん分かるよ。てか本当にポケモンもらったばっかなんだねえ」
少年(きっとコウキ)が笑って、ポケモンの技を調べる方法を教えてくれた。「ポケモン情報」の項から調べられるようだ。
それによると、「ひのこ」と「ひっかく」と「なきごえ」を覚えているらしい。ひのこを覚えているだけ戦いやすいか……。
「よし、待たせて悪かった! バトルを始めよう!」
「うん、じゃあ僕はさっき捕まえたポケモンで行くよ! 行け、コロトック!」
「ヒトカゲ、初めての勝負だ。がんばろうぜ!」
ヒトカゲは意気込んで鳴くと、前へ出る。
レイアとヒトカゲの、初めてのバトルが始まった。
レイアは胸に手を当てた。深く息を吸い込む。そして吐き出す。
これはゲームじゃなくて実際の勝負だ。ゲームのように0と1で結果は決まらない。そんなに単純じゃない。
「コロトック、れんぞくぎり!」
「避けて後ろに回って、ひっかく!」
当たった。しかし、やはりレベルの差か、あまり効いているようには見えない。見えないが、タイプ的には有利。繰り返していけば勝てるはずだ。単純な考えだが、自分は避け続け、相手には当て続けていればいい。
「続けてひのこ!」
「やるね! コロトック、がまんだ!」
しまった。がまんという技は、ポケモンががまんをしている間に攻撃を受けただけその後の攻撃が強くなる技。よって相手ががまんをした時は、なきごえでもしてがまんがとかれるのを待つのが一番なのに。集中攻撃をしても、恐らくすぐには倒せないのだから。
「仕方ないか……。ヒトカゲ、全力でひのこを続けろ!」
倒せなければ、がまんの攻撃を一度、避ければいいのだ。当たれば負ける可能性は高いが、当たらなければいいのだ。
「よし、やめろ」
ゲームでないから、どのくらいの間がまんしているのか分からない。とりあえずひのこをしている間に攻撃が来なくてよかった。
「コロトックが動いたらすぐに避けるんだ」
「——できるかな?」
(多分)コウキ少年がそう言った直後、コロトックが動いた。地面を蹴って、今までのダメージを倍返しにすべくヒトカゲをめがける。
「今だ!」
レイアの言葉と同時にヒトカゲが横へ跳ねる。体をひねらせて、動作としては頭突きとか体当たりとかに近いコロトックの攻撃の軌道から外れた。速い。元々コロトックもすばやさの高いポケモンとは言えないし、きっと避けられるだろう。
だが、退いてばかりでは勝てない。
「すぐに止まってひのこを集中砲火!」
ヒトカゲはぎりぎり避けられるというところで踏ん張った。コロトックは攻撃の勢いですぐには止まれない。ヒトカゲはそんなコロトックにひのこを浴びせる。そして。
コロトックは立ち上がるほどの力も失った。
「倒し……た?」