二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

第2話 ( No.20 )
日時: 2011/06/04 01:20
名前: 雷燕 ◆bizc.dLEtA (ID: w1dOosot)

 女性の叫び声がした。反射的にレイアは洋館の入り口へ走り出す。

「モミさんは待っててください!」
「レ、レイアちゃん!」

 モミの声にも振り向かず、勢いよく入り口を開けて洋館の中へ入った。ヒトカゲも走ってついて来る。
 声は一人だった。何があったか分からないが、ポケモンに襲われたとかなら何かできるかもしれない。バトルならモミのほうが強いだろうが。
 昼にもかかわらずゴースたちの蠢く洋館の、二階まで来た。声は上から聞こえた気はするのだが、具体的な位置はよく分からない。
 片っ端から見ていくか——レイアがそう思った頃、微かに足音が聞こえた。

 ここか! と開けた部屋の中には、一人の女性と一体のポケモンがいた。オレンジか茶色かという髪の色、緑の個性的な服。また、見たことのある人物だった。そばにいるポケモンは、ロズレイド。

「ナ、ナタネさん?」

 レイアの記憶が正しければ、その人は、紛れもないハクタイジムジムリーダー、ナタネだ。

「あ、こ、こんにちは。……もしかして、さっきの叫び声で来ちゃった……?」
「何かあったんですか?」
 何も起こったような形跡がないので、少し気が抜けて答えた。ナタネはゲームの中でも森の洋館のことを話したりしていたが、自分で見に来ていたとは。
「え、えと、今このテレビが……」

 ナタネはレイアのいる部屋の入り口側に向けていた顔を、一度、恐る恐る部屋の奥に向けた。そこには、一昔前に使われていたようなブラウン管のテレビがある。勿論電気など通っていないだろう。

「一瞬……付いたの」

 数秒、二人の間に沈黙が流れた。辺りにはゴースの不気味な鳴き声だけが響き渡る。
 先に口を開いたのは、レイアだった。

「えっと……。それだけで、あの悲鳴ですか?」
「ああああそれは言わないでいじめないでお願い。本当にこういうの苦手なのよぉ。なのにコウキ君が『自分で行けばいいじゃん』なんていうからあ。あーもうそうよコウキ君が行けばいいじゃないー!」

 不満が一気に爆発した感じだろうか。先ほどレイアがバトルした少年に文句を言いながら、頭を掻き毟った。そんなナタネを見ながら、レイアは言ってみた。
「あの、心当たりならありますけど」
「本当!」
 ナタネが物凄い速度で反応してきた。

「はい。……ロトムじゃないですか?」
「ロトム?」
「家電製品とかに入り込んだりするそうですし、でんき・ゴーストタイプなのでこんな所にいそうです」
 それに、ゲームで実際いましたし。
「じゃ、じゃあそのロトムをこのテレビの中から出せばいいのね?」
「まあ、このテレビがもういきなり付かないようにするためには」
「で、どうやったら出てくるの?」
「知りません」
「よし、分かった……って、え?」
「おおノリツッコミ」
「おおじゃなくて……」

 ナタネは呆れた様に肩を落とした。割と感情の起伏の激しい性格をしているようだ。
 「モミさんに悪いから早く戻りたいんですけどねえ……」などとつぶやきながらレイアはテレビの前にしゃがんだ。ヒトカゲと一緒にテレビの画面を覗いてみるが、何も変わったところはない。レイアは立ち上がって、言った。

「とりあえずテレビ壊そうとすれば出てくると思いません?」
「はい?」
「よしヒトカゲ、テレビに向かってひのこだ」

 ナタネの返事も無視し、ヒトカゲはテレビに向かって火の粉を吐いた。そして。テレビに届く少し前の所で何かに打ち消された。衝撃同士がぶつかり合ったようで、音と風と多少の煙を発生させる。
 煙が晴れるとテレビの前には、ヒトカゲでもロズレイドでもないポケモンがいた。その小さなポケモンはオレンジ色の体をして、水色の電気のようなものを纏っている。
 レイアの予想通り、ロトムだった。