二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

第4話 ( No.30 )
日時: 2011/08/29 01:41
名前: 雷燕 ◆bizc.dLEtA (ID: EVVPuNrM)

 レイアにも兄がいる。ふたつ違いの兄だ。結構仲は良くて、小さいころなどは兄が出かけるときはいつもついて行ったものだ。それこそ金魚のフンのように——この世界風に言えばトサキントの、だろうか。故に今でも兄の友達には知り合いが多い。
 さすがにいつも付いて回るというのは小学校の低学年あたりでやめたが、今でもキャッチボールなどをしょっちゅうする。もう次は何時合えるか分からないと思うと、寂しさや悲しさが沸きあげてくるものなのだろう。だが、今のところはまだ現実味が無い。

「その『お兄ちゃん』も旅をしていろんな所を巡ってるのか?」
「うん。将来お父さんの後を継ぐための経験を積むんだって」

 子供が2人とも家を出ているとは、オダマキ博士もご愁傷様なこった。
 その有名な博士の優秀な息子が旅に出るということは、それほどポケモンとの旅で得る経験値は重要なものなのか。私は、この旅で何を手に入れるだろう。そして旅を終わらせる時、何を手放すだろう。
 今は、家族や友達に会えないという寂しさより、ポケモンのいる世界でいろいろなことをしたいと言う欲望が湧いてくる。ポケモンバトルも強くなりたい。理想として、レッドに挑めるくらいに。

「あ、ミオシティが見えてきたよ」
 ルイがそう言って前方を指差した。港と建物が見えてくる。コトブキシティほど大きな町ではないが、活気はある雰囲気。シンオウの港町、ミオシティだ。

 コトブキシティのように建物は多くない。ビルというよりは民家や商店、特に魚市場といった建物が見える。また町のど真ん中に水路があり、跳開橋が架かっている。船が通るときは上がるのだろうが、今は下がっていた。
 港まで行って、ラプラスから降りる。ルイがラプラスに礼を言ってモンスターボールに戻した。

「あたしはオーキド博士に届け物があったからシンオウにいるんだけど、レイアはシンオウを旅するつもりなの?」
「いや、できるだけ早くシンオウは立ち去りたい。それにひとつだけじゃなく色んな地方を旅してみたいと思ってる」

 バッジを集めてリーグに挑戦するならひとつの地方を長く旅した方がいいのだろうが、それよりは、できるだけたくさんの場所に行きたい。それに、色々な地方に行って、自分の納得できる手持ちにしてから、強さを求めたい。

「じゃあちょうどミオシティだし、何処かに行く? 何処がいい?」
「何処でもいいのか? ルイは、行きたい場所とか無いのか?」
「うん、特には無いから、レイアの行きたいところでいいよ」
「じゃあ……カントーでいいか? 欲しいポケモンが居て」

 いきなり「一緒に旅がしたい」などという人だから一体どんな人なのだと思っていたが、今短い間接してみた感覚では、明るく活発でしかも気が利くいい子という感じだった。
 しかし問題はやはり一緒に旅をするかどうかだ。
 オーキドにこのことを聞いたときから考えていたことを、ルイに言う。

「で、一緒に旅をするかなんだけど」
「うん」ルイの顔が少しだけ強張る。
「正直、私は一人で旅をするほうが気楽でいい。だから……」
 ルイは更に緊張した顔になる。次の言葉を待っているようだ。

「とりあえず2日過ごしてみよう。で、3日目、つまり明後日の朝にまた一緒に旅をしたいか話そう。それで両方とも一緒に旅したいって言えば、一緒に旅。でどうだ?」
「分かった。じゃああたしは明後日にレイアがOKって行ってくれるのを待てばいいんだね」

 花が咲いたような笑顔で言った。馬が合わずに自分の方の気が変わる、というのは無い前提らしい。
 今のところはいい印象だが、まだお互い会ったばかりで遠慮しているところがあるのかも知れない。少なくともレイアはそうなので、気が合うといいな、と思った。何にしても頼みを断るというのは気が重い。

 ルイは既にすぐ目の前のことに気が移っているらしく、「ミオの観光する? 船のチケット買う? 昼ご飯……は、ちょっと早いかな」とレイアに訊いてきた。