二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

第4話 ( No.37 )
日時: 2011/12/27 23:34
名前: 雷燕 ◆bizc.dLEtA (ID: l5XoqW5Y)

 しかし、玄関前に出ても、ルイがいない。まさか、自分を探しに行って行き違ったのだろうか。
 いやそれよりも、と思ってルイが漫画を読んでいた場所に行ってみる。すると、ルイはそこで漫画に没頭しているではないか。そんな気はしたが。

「おーい、まだ時間かかりそう?」
「あ! ごめんもうそんな時間?」

 ルイははっとして顔を上げる。近くには何冊かの漫画が詰まれていた。全く悪気はなさそうだ。ルイが読んでいたのは、表紙から察するに少女マンガ。学園モノか恋愛モノか、両方か。

「今12時40分過ぎたくらい。腹は減ってないから、もっといてもいいけど」
「いや、昼ご飯食べよう。漫画が面白くてつい時計見るの忘れちゃって」
「分かる分かる。漫画って、気付けば時間喰われてるから恐ろしいよな」

 それから、2人で昼食を取った。「情報誌によるとここがおいしいらしいよ」とルイが言うのでそのファミリーレストランに入る。店内は暖色にまとめられて暖かい感じのインテリア。昼時とあって、客の数は多い。
 ルイはハンバーグ定食、レイアは鉄火丼をそれぞれ注文して、食べ始める。食べながら、カントー地方について話した。

「カントー地方って、いろんな場所があるよね」
「ハナダの洞窟とか、ポケモンタワーとか?」
「あはは、わざわざそんな怖い所選ばなくても」
「着く場所はやっぱり港町のクチバシティかな。クチバといえばジムリーダーはマチスさんだっけ」
「あはは! ヒトカゲ一匹で挑むつもりなの? 気が早いって! レイアって意外と面白いんだね」
「いやそっちが勝手に爆笑してるだけな気がするんだが……」

 ルイの無駄に高いテンションにつっこみながら、図書館に行く途中に見た建物を思い出す。——ミオジム。他の建物とは違う、厳かな雰囲気をかもし出していた。港町のミオシティだから水タイプの爽やかな感じをイメージしてしまいそうだが、ジムリーダーはトウガンという言うなればおっさんで、主な使用タイプははがねだ。

 昼ご飯を食べ終わってから、船のチケットを買った。いくつかあるカントー行きの船で出航時間が一番近いものを選んだので、船に乗るまでそこまで時間が無い。船に乗れる時間になるまで、二人で雑談をした。
 と言ってもほとんどはルイの話を聴いて相槌を打っていただけなのだが。レイア自身話すのがあまり得意ではないからそのほうが楽ではある。兄との思い出、ここまでの道のり。本当に楽しそうに話す。そう言うとルイは、「ここまでずっと話し相手がいなかったから」と笑った。

 船乗り場の中で話していたので、船に乗れるようになると従業員の人が声をかけてくれた。船は、ホエルオーが何匹も乗せられそうなくらい大きなフェリーだ。2人用の部屋は1泊もするわけではないがベッドつき。食事のサービス自体はあるらしいが、夕方には着くので利用する必要は無い。
 レイアとルイは貰った鍵に書かれている番号の部屋へ行き、大きな荷物を置いた。レイアはモンスターボール、ポケギア、財布などが入ったウエストポーチだけ持ち歩くことにした。

 そして、何をしようかという話になる。すると、船の探検以外に無い、というのがルイの頭らしい。レイアも興味が無いわけでも代案があるわけでもないので、ルイと一緒に船の中を歩き回った。
 廊下を渡ってデッキへ出る。船に乗り込んでくる客が見えた。ミオシティの町も、目線が変わるとまた違って見える。デッキで船橋を見つけて、周りの目を盗んで立ち入り禁止の看板を無視して入ってみる。中は結構広くて、水道や冷蔵庫なんかもきちんと備えられてある。

「へえこんな風になってるんだな……」

 なんて言いながらのんびり船橋の中を散策していたのだが、少しすると
「オイコラ看板があっただろう」
という男性の声がしてきた。心臓が飛び出そうになりながら反射的に入り口のほうを向く。すると白い服を着た体付きの良い男(ゲームで言えば「船乗り」になるのだろうか)が立っていた。

「す、すみません!」

 ルイと一緒に走ってデッキへ出る。船橋に人が来たということはそろそろ出発だろうか? しかし出発のちょっと前にしか船橋に来ないというのは有り得ないか。何か理由があって席を外してたんだろうな。そんな話をルイとしながら船の中をのんびりと歩く。行き先は決めていた訳ではないが、何となく自分達の部屋へ向かっていた。
 いくつもの部屋へ続く廊下を歩いていると、ちょうど真横にあったドアが開いて、中から出てきた人とぶつかりそうになった。

「あ、すみません」
「あらごめんなさい」

 ほぼ同時に謝った相手は20代かそこらへんの細みな女性。体は引き締まっていてスタイルが良い。……いやそんなことはどうでもよくて。問題は部屋の中にちらりと見えた個性的な服である。胸元に大きく赤い字で「R」と書かれた、とっても個性的な服である。
 ——ロケット団?
 あんな服を持っているといったらあいつ等しか浮かばない。あのポケモンマフィアくらいしか。
 この船はシンオウからカントーへの直航船だ。ロケット団はカントーを拠点にしているだろうから、シンオウで何かをやった帰りだろうか。あるいは、シンオウへ来ていた人が何か大掛かりな物事のためにカントーに集められているのだろうか?

 どちらにせよロケット団の行く先に良いことが待っているとは思えない。もし奴等が悪事を働いたとして自分がその被害者、あるいは目撃者だったとしたら、私はそれを止められるだろうか?
 レイアは考えてみるが、自分にそんな力量があるとは思えなかった。サトシのような勇気もなければ、レッドのように強さも無い。そもそもポケモンバトルがこんなに弱いのにロケット団などに抗える気がしなかった。

 そこで気付いた。

「そういえばルイ、まだバトルしてなかったな」
「あ、ホントだ。よし、まだ出航まで時間があるし今からやろう!」
「でもスペースが……あ、さっきのデッキに行こうか」
「よーし決定! れっつゴー!」