二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【リク】ボカロ曲を好き勝手に【募集】 ( No.103 )
日時: 2011/05/25 21:03
名前: 紫 ◆v9jt8.IUtE (ID: W6MelwHU)

 心は好調、体は紅潮。


#04 終末感


 そう、思い切り馬鹿にしようか。彼女を。散々躓いたダンスを踊っている、彼女を。私を。罵る。適当な言葉を掻き集めて。
 だけど彼女は諦めずに、つまらない動きを繰り返す。彼女の中で鳴っているであろう音に合わせて足を踏む。その意味も理由も、今の私には全く理解できない。
 探しても探しても、見つからない。から、私は彼女に近付いて話しかける。「どうしてアナタはそれを続けるの」と。暫くの沈黙が続いて、彼女は口を開いた。

 「今、悲しいから。悲しい時には踊りたいの、泣きたい時には笑いたい。そうすれば、悲しい気持ちにはならないでしょ?」
 「……そんな我侭、疲れちゃうわよ」

溜息。私の溜息。
 眩しいくらいの彼女の笑顔に嫉妬した。妬んだ。だからこそ罵声が口から出た。前の私のはずなのに、どうして、どうしたの。

 ブルーな時には——。ポップに自分のセンスを乗せて歌おうか。私が俯いちゃう前に。私の世界が俯いちゃう前に。キュ、としまった心の音をどうぞ言葉に出して。何よ、何も言わないの?
 少女が目を見開いた。何かを言おうとしてたが、そこで私の意識は現実へと引き戻された。

 「夢なの? ——それでも、彼女の事は、私の事は、まだまだ忘れないわ!」

そこは廃墟のビルだった。そこで叫ぶ。何もかも投げ出したくなった。狂いたくなった。少女をここから突き落とした事も、何もかも。笑っていたのに涙が出てきて。それでも笑いたかった。さっきと言った事が矛盾してるけど。

 「なんて綺麗な眺めなの! ここから見える風景は!」

薄暗い廃墟と、少女の死体。それがここから見える風景。笑ったって認めたってきっと何一つ変わらないから、私はここで精一杯地面を這う。
 世界の隅っこで、ホップ・ステップ、そしてワンツー。ちょっとクラッと、グラッとする浮遊感も終末感も楽しんで。
 パッとフラッと消えちゃいそうな次の瞬間を目に焼き付けて。 
 
 「さよなら! お元気で! このくそったれな日常へ!」

終わる世界へ————たった一つの言葉を放つ。

 ——痛快。赤いドロドロが何だか心地が良くて、お風呂に入ってる様だった。
 

end / ワールズエンド・ダンスホール