二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【リク】ボカロ曲を好き勝手に【募集】 ( No.145 )
- 日時: 2011/07/10 18:19
- 名前: 紫 ◆v9jt8.IUtE (ID: V9u1HFiP)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode
ぼくはもう、ここにはいない?
#03 ない事で崩壊する何か
唾臭い、思い出だったピアニカを口に当てる。拙い音しか出ないけれど、コイツは小学校の時からの相棒である。そして、今も使い続けてる。ピアニカを吹いて、煙突上から世界を見下ろす。煙が漂っている。が、煙たくはない。ぼくがどんどん上がって流れていくうちに、ぼくは家を見た。
あの時とても優しかったぼくのパパ——虫取りしたり勉強教えてくれたりしたはずの笑っていたパパが、豹変したかの様にママの首を絞めている。「やめてくれ」と叫んだ。届かなかった。ぼくは心が痛かった。
それでもぼくの隣に居るキミは、ぼくが悲しくならない様に綺麗な声を絶えず鳴り響かせるんだ。
逆上がり途中に、ぼくを落っことして。地球という住む世界をどこかへ見失ったぼく。ここは地球だ。だけどぼくはどこだ? そんな問いかけ。住む世界はどこに行った? ぼくはどこに逝った?
昔の思い出が詰まった——ピアニカも勿論入ってる黒いランドセルを背負って、キミとぼくの旅はまだまだ続く。星が導く限り、まだまだ続く。
舌打ちと陰口と嫉妬とか苛立ちとかそういう多々の感情と、優しい嘘にまみれた、この世界で。
————小学校の頃。
やっぱりぼくは根暗で嫌われていて、妄想癖もついていた。幻の国を自分の頭で作り上げて、教科書の片隅で文字を殴り書きして戦っていた。落書きのための武器を持って、虐めた君を塗りつぶす。鉛筆で何度でも何度でも何度でも何度でも——。飽きるくらいに。
妬みが強くなって捻くれてぼくは逆に坂を上って轢かれてしまったあの日を思い出す。痛かった。赤かった。しかしぼくは今まで足がない事をすっかりさっぱり忘れて、幽霊と手を繋いでいた。あの時なぜ幽霊が見えたのかって、そりゃそうだよな。幽霊になったら同類の幽霊ぐらい見えてなきゃ可笑しいよな。悲しく笑みを浮かべるぼくに、白くなる世界——。
残念な事に、ぼくには幽霊なんて見えていなかった。