二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【リク】ボカロ曲を好き勝手に【募集】 ( No.154 )
- 日時: 2011/07/19 21:15
- 名前: 紫 ◆v9jt8.IUtE (ID: V9u1HFiP)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode
皆狂ってパッパラパー!
#02 白黒な奴
————そういや後一人のパンダヒーローは、左手にいつでも金属バットを持ってるらしい。
目の前の野球選手はクスリを飲むと、ほわほわと魂が抜けた様になった。幸せ? それなら結構。
僕はへろへろと落ち着いた野球選手を見ていると、僕を呼んでいると思われる声が聞こえた。
「おい、そこの迷彩服の嬢ちゃんよぉ」
声の方を向くと、ヤバそうなおっさん。中年。酷い格好。可哀想、な顔と中身。色んな意味で襲われる危険性があるとしても、同情しちゃうね。しかし女の子扱いされるのは嫌だね全く。
「こんな所に一人で、何してんだァ?」
訊かなくたって、どうせ何かやらかすくせに。
雑音しか吐かない犬の様だ。雑音しか聞こえないラジオの様だ。ノイズをポロポロと出して良いのは動物と古い機械と僕だけだ。本題だけ、話し合ってりゃいいのにね。
「挨拶も世間話も要らないぜ。目的は?」
「ハ、分かってるじゃねえか。光ってる嬢ちゃんの体——だな。キラキラしすぎて眩しいぜぇ?」
フラフラとしながらおじさんは大きく笑う。最低。最悪。
僕はどこかのバニーガールかよ。そんな安い売女じゃねえよ。アバズレでもねえよ。僕がネオンに包まれたバニーガールならそら眩しいわ。チカチカで目ぇ痛いわ。フラフラもするわ。
「おじさんは分かってるのか? 商売を」
とりあえず苛立ちは見せずに、わざと挑発的に笑みを浮かべて問うと、これまた気持ち悪い笑みを浮かべて言った。「勿論だ」と。
言って、差し出されたのはオピウムの種。一粒。馬鹿なの? 何なの? これで足りると思ってんの?
常連さんなのでサービスとしてこのオピウムは野球選手に渡した。野球選手は目で問い掛けて来たので、頷くと、野球選手の喉の奥に呑まれていった。臭くないのかよおい。
「一つ頼むぜ、お願いだ」
負けてくれって言ってるのか? んな訳ないだろ。カラカラに乾いた性欲を差し出されたって、何の意味も無い。てめえで慰めな。
「こっちが頼むよ。若い女の子の素肌を触るってんだ、少なくとも十万程度は用意すると思うが?」
「お願いだよ嬢ちゃん?」
何でも無い様な気持ち悪い声で愚図ってみせるおっさん。——何処にも行けないな。頭に銃を当てられて動く人質ってどんな自殺志願者だ。
パッパパラパッパとラッパの音なんて……しない。したら僕の聴覚は凄いわ。こんな汚い場所で甲子園してる訳でもあるまいし。
煙が昇ってく。蒸散していく僕の汗は下に落ちる。喧騒の目は、僕らに向けられる。僕とおじさんの隣には、ふわふわでほわほわな野球選手。
「野球選手、僕は確かにサービスしたよなあ?」
パッパラパーの奴はここで登場だ。僕の言葉を聞いてパッパラパーは立ち上がり、おじさんの背中に衝撃を与える。左手の、金属バットで。登場したのはピンチヒッター。確実に顔にヒット。腹にヒット、頭にヒット。
「……ああ、助かるね」
これが、パンダヒーロー。あれはきっとパンダヒーロー。強くて単純で簡単で楽勝。そんな奴。
白黒曖昧で、味方になった奴はひたすらに正義で、悪にはひたすら悪。僕と、彼が、パンダヒーロー。
おじさんの体がパッパラパーな姿になった所で、僕は笑った。
「商売ぐらい分かれよおっさん!」
——さらば一昨日、殺人したい程のうざったい世間外れした『タマ』へ。