二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【リク】ボカロ曲を好き勝手に【募集】 ( No.158 )
日時: 2011/07/22 21:00
名前: 紫 ◆v9jt8.IUtE (ID: V9u1HFiP)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode

 アンテナ壊して、全て壊して。


#04 画面の裂


 非常につまらない試合。見ていて面白くない。帰ろうかな。
 客席を歩きながら猫を被ったいい子ちゃん……じゃなくて几帳面と書かれているバケツを被った猫が鳴く。ちなみに比喩だ。審判を指してるぞ、この場合。
 一人、また一人と消えていく。バッターボックスから悔しそうに去る選手。
 ——今更、こんなゲームどうしようもないよなぁ? 人生なんてそんなもの、お前の転落人生をよく見ている僕が分かる。クスリにはまって女にはまって、最低な事をしたパンダヒーローは転落していく。要らない事に、手を出さなければ安心できたはずなのになあ。
 さあ、パンダヒーロー。何処にも、行けないなぁ?
 絶対絶命。今は一点差。ラストゲーム。何とかすれば、逆転優勝。しかし、このままここで堕ちたら……反感と罵声を浴びる事となる。最低な奴にはそれもお似合いなのだが。


 パッパラパーって、いつまでもいつまでも直らないもんだ。

 「イヤ……ッ! やめてください!」

がなる売女。売り子。ただし健全。ただの売り子であって、体は売ってない……はず。
 そんな純潔な女の子の体に触るセクハラ。汚い汚い、悪って奴は見たくないねえ、全く。
 それも、ヒーローの成れの果てだなんてカッコ悪すぎる。
 人目の少ない寂れた通り。そんな場所でセクハラをする悪。その現場を僕は見ていた。悪の姿を見たからには通報しない訳もなく、とりあえずその場を去って状況を白の正義に話した。
 女性を金属バットでなぶる。殴る。骨も数本折れてる事だろう。だが僕は『ただの人』になってその場からちょっと離れた場所でその現場を見る。……嗚呼、残酷。
 それは、お前の狂った精神だろうに。理性と言うか本能的には、そんな事今はやりたくないだろうに。

 
 パンダヒーローは、絶望した。試合後、砂に手をついて何かを思っていた。味方のヒーローには、なれなかった。
 ……悔しさは分からないでもないけど自業自得だし。それで女の子襲うだなんて全く馬鹿じゃないのって言いたくなる。ヒーローになんて、なれやしない。

 ブザーが鳴る。赤い警報灯。散らばる蜘蛛の子。いやここは野次馬とでも言うべきか?
 ぱっぱらぱーなあれは、きっとパンダヒーロー。成り下がったパンダヒーロー。
 抵抗も見せず連行されていく悪者は、ただの世間外れした殺人ライナーで、ただの世間外れした殺人バッターだった。

 壊して回れ、今までの正義だった君を。ブラウン管を壊して回って、皆に人気の野球選手を歪ませる。自分自身の手で。本当におかしい。滑稽。
 はは。さらばヒーロー。さらば一昨日殺人ライナー!
 
 自分のヒーローにも、誰のヒーローにもなれない、哀れな野球選手へ贈る声。
 ————それは、僕の中にだけ響いた。

 
end / パンダヒーロー