二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: ボカロ曲を好き勝手に解釈してみた ( No.19 )
- 日時: 2011/03/22 20:45
- 名前: 紫 ◆v9jt8.IUtE (ID: 6sz9.CTE)
私は必死に叫んでます。人影は顔を見せました。
#04 汚れたあぶらむし
あぶらむしは、必死に叫ぶだけ。
——笑われる事なんて分かっている。彼女らが高笑いする事なんて、既に理解している。これで一日が終わったらバカにされる。でも、せっかく見た希望を捨てたくはない。
「何、してるの?」
純粋で透き通る様な声だけど、凛とした声。彼女らの笑い声が止まり、その場は一瞬で凍りつく。私も黙って、その状況を理解しようと集中する。今どんな状況なんだろ。
正直、顔が笑っている。嬉しすぎて。この状況を助けてくれる人が、現れてくれて、泣きそうなぐらい嬉しい。
彼女らと、救世主の言い合いが少し続く。それを静かに聞く私。数分ぐらい続いた言い合いは、救世主の勝ちとなったらしく、彼女達は捨て台詞を吐いて去っていく足音が聞こえた。
いやちょっと待ってよ出してくれよマジ。
「そこに居る人ー、お腹空いてないー?」
「メチャクチャ空いてッ……あれ」
何で私泣いてんの。普通に答えてよ、泣かないでよ。涙を抑えようとして自分を罵っていると、光が見えた。
可愛い女の子。久しぶりに向けられた、笑顔。あぁ、自分はこんなに弱かったんだ。優しくされると泣いてしまう。目からボロボロと涙が零れてきて、とめられない。
「大丈夫だよー、しっかりしてねー」
まるで私を幼い子供の様に扱う彼女。あぶらむしに抱きついてくれて、しっかりと背中を叩いてくれる。
泣き声の歌と慰めの歌が交差する。そうして頭の中ではその歌の中であの人影と踊っているんだ、きっと。
羽根を広げて、迷路を飛び立つ。倉庫の外は既に薄暗くて、月は干乾びたかの様な三日月。でもしっかりと光っていて、私の黒光りした靴を照らす。
——さあ、飛ぶんだ。
心の中でそう声をかけて、倉庫を出た場所から一歩前を進む。新しい道が出来た気がする。
「アンタ、あぶらむしね」
「私をゴキブリにしないでくれ」
「私もあぶらむしだから大丈夫」
「まあ、別に良いけどね」
——あぶらむしはいつも探し続けるのです。愛してくれる人を。
end / あぶらむし