二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【クイズ】ボカロ曲を好き勝手に【企画】 ( No.217 )
日時: 2011/08/27 14:05
名前: 蟻 ◆v9jt8.IUtE (ID: V9u1HFiP)

 私を捨ててあなたのものになる。


#02 あなたのものに


 あなたは最初の私に『おとなしい子』が可愛いと言った。その言葉がおとなしくない私に突き刺さって、次の日私はあなたの望み通りになってあなたの目の前に立つ。戸惑った様子のあなたは、『明るい子』も可愛いよな。そう試す様に言った。するとその言葉を糧にして、私は陽気な明るい子に変わっていた。それを繰り返す事約十回。四人目は俗に言われるツンデレ。五人目はセクシー系。六人目はダルデレと呼ばれる、だらけた感じ。七人目は肉食系女子。八人目はサディスト。九人目は森ガールで、十人目は泣き虫な皆。
 受け入れたくない記憶を別の人格が見た物とみなし、他の人格は他人事の様に振舞ってそうやって私自身を守った。記憶の共有は私とも、他の十人ともされずに、全然別々の記憶を持ち。そして互いの存在など私以外は知る由もない。そんな時間を流して。時は流れ流れ、今は。
 ——私の中に、十人の人格が居た。 
 
 私の中の住人は、私と同様に皆同じ男に恋をした。皆、報われないままで。恋は実る事がないまま、その状況が続いた上で、男の答えは。

 「君の中の、一人だけを愛しましょう」

おとなしい私に言った、真面目な彼の顔。それはあまりにも私達に大きく響いて。あなたのものになりたくてこうなった筈なのに。それなのに、愛されるのは私の中の一人分だけ。
 私の体は十人分のドキドキが混ざり合って大きく響く。私達の心臓は高鳴る。誰が『私』になるか。早まって競争し合う私達。早く、私達の鼓動を押さえつけてよ……。