二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【クイズ】ボカロ曲を好き勝手に【企画】 ( No.220 )
- 日時: 2011/09/02 20:04
- 名前: 蟻 ◆v9jt8.IUtE (ID: V9u1HFiP)
すれ違い、戻って一緒に手を繋ごう。
#04 あなたとわたし
「他の君には、もう伝えた」
君の真剣な顔が私に映る。意味不明な言葉。どういう事。他の君って、誰の事なのよ。君の言葉に疑問が浮き上がる。君の真面目な顔に疑問しか出ない。どうしてそんなに深刻な顔をしているんだろう。でも、そんなあなたもかっこいいと思う。
「僕は、一人の人しか愛せない」
彼はそのまま続けた。嫌な予感がする。
「君の中の人格は、一つしか選べないんだ」
困惑。頭が混沌。ぐちゃぐちゃぐるぐる。その言葉がどういう事か、心の底では分かっていたかもしれない。だけど、私が現実逃避して、あなたのためっていう訳を作ったという真実を知るのが怖かった。真実を見るのが、怖かった。それだけ。だから、認めたくなかった。
————私は、本当に多重人格?
顔を隠して、あなたに今の最低な顔を見せないままで。一秒は、過ぎていく。長い沈黙。嫌な時間。君は言う。私は顔を上げないまま。
「……さっきの続きだけど、選べるのは、愛せるのは、いつでも君だよ。僕は——君じゃない君は、あまり好きじゃないからさ」
顔が綻ぶ。頭に浮かぶ、十人の顔。……十人は微笑んでいる。何故なんだろうと、私は思ったけれど。きっときっと。私の中の十人は皆既に気付いていたんだ。
自分が生まれた理由とは何か。私じゃない私がどうして生まれたのか。分からなかったのは、私だけで。一つの愛を手にする事が役目なら。彼を手にする事が私の役目なら。あなた達は多分これから私にはなれない。だってもう、彼は私を選んでくれたから。
彼女達の微笑みは、祝福だと思いたい。
もう『私たち』と愛を手にする事は終わってしまったね。だから最後は、皆で笑おう。
————さよなら私たち。そして、おかえり。本当の私。
私はもう、元の一人よ。
私が一人になってから、どれだけ月日は流れただろうか。隣には君が居て、目の前には沢山の子供が居て。幸せな日々を築いていた。でも、あなたを想った私たちの時は、一生忘れたくないなあ、なんて。
end / 十面相