二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: ボカロ曲を好き勝手に解釈してみた ( No.25 )
- 日時: 2011/03/25 16:47
- 名前: 紫 ◆v9jt8.IUtE (ID: 6sz9.CTE)
しにたいなんて仰るのですか? 無理な事なのに?
#03 夢、暗い、cry
彼女の弱弱しい言葉の後に、姉が彼女の綺麗な髪を踏みつける。
「楽しいよ! このサーカスは楽しいの」
彼女の言葉を全否定し、姉は自分の感想を彼女に押し付ける。狂った笑みを、彼女に向けて。彼女は伏せていた顔を上げて姉に向けた。そして、牢屋越しだが、彼女に顔を近付けて目を大きく見開いて続ける。首繋がってるから俺一瞬痛かったなー。
腐った実。じゃなくて身。皮膚や肉がくずれてきている。それは俺も同じか。同じ環境で今過ごしてるからな。俺の目には、姉と彼女の爛れた肌が写る。うーん、さっきまでもう少し綺麗に見えてた筈なんだけどな。
——やっぱ、おかしくなってきたか。
視界も、ふさがれてきた。うーん。熔けてきた。
「私の熔けてきてる目に、アンタの爛れた肌が映る」
「爛れた……? 嫌だ、いやだいやだ!」
姉の言葉を、首を横に振り必死に否定する彼女。それを見て、姉は一つ溜息を吐いて、彼女をまたつまらない目で見るのだった。彼女の長い、綺麗な髪は、姉がまだ踏んでいる。
泣きじゃくる彼女。泣いたり落ち着いたりと我侭なガキみたいだなぁと思う。無表情で泣く彼女を見ていると、姉が体を動かす。
「どこ行くの?」
「別に。楽しくないから」
こちらも我侭だ。飽きっぽい。飽きたら終わり。しゅーりょー。まあ、俺の考えには反対してはないんだけど。ただ俺は退屈だけど良心が邪魔してきただけであって。
————しにたい。
小さい、か細い声で、彼女はそう言った。姉は、体と顔を振り向ける。姉が彼女を見れば俺も彼女を見る状態になる。これ鉄則。
「もう、ここから出してください」
そんな事言っても、誰かが無理って言った事ぐらい覚えてるくせに。俺は心の中で彼女への不満を吐く。
心の中で吐いてた筈が、思わず体が、って事はなく、これは多分姉が動かしているものと分かった。
「しにたいなんて考える前に楽しみなさいよ!」
姉の、怒り。彼女の驚愕。ほぉ、うちの姉も無傷じゃなかったみたいだ。
彼女の目に涙が溢れて、ダムに十分溜まった涙は流れていく。姉は、ここには居たくない事を全体的に表す。
そうだ、俺らは自業自得だ。サーカスをやりたいって言った事から、『改造』されて生き残ったからここに居る。自業自得だから、死にたいなんて無責任な事言っちゃいけねえよな。
だから今日も皆で仲良く客を楽しませないといけない。皆で仲良く客を寄せないといけない。
——さあ、アンタも。
暗い森へ、寄っといで。
end / 暗い森のサーカス