二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【クイズ】ボカロ曲を好き勝手に【企画】 ( No.260 )
- 日時: 2011/10/11 20:00
- 名前: 蟻 ◆v9jt8.IUtE (ID: V9u1HFiP)
迷い込んで、罠にかかった私は。
#01 悪夢みたいな現実
深い森の中。深い霧の中。空は既に暗くなって、光も届かない。私の中で、恐怖が芽生える。どうしてここまで来たんだろう。何があったんだろう。急いで戻りたいと思っても、道が分からない。記憶がない。
暗闇の中で、妖艶な声が聞こえた。
「おいで、おいで」
ただその声が何かなんて知らなかった。けれど私は、必死だった。ただその声に縋る様に後を追いかける。どこから見ているのか知らないが、先程と同じ声が、森に響いた。
「そう、そう。そのままこの森の奥深くまで」
「……え?」
私は、立ち止まる。森の奥深くまで行ってしまったら、戻れなくなってしまう。……今だって、戻れる状態ではないと言うのに。
私が唖然として立ち止まっていたら、勝手に足が動き出した。このままでは、町に戻れなくなっちゃう。お母さんにもお父さんにも会えない。そんなの、絶対に嫌だ。私は必死に抗おうとするけど、体が私の言う事を聞いてくれない。相変わらずに足は、暗い森の中へまっしぐら。
「早く早く! もっと急ぎ足で、できるだけ近くにね」
子供の様にはしゃぐ、女の声。女が言葉を終えると同時に、私の足は更にスピードアップした。泣きそうになる。後ろも振り向けない。真っ暗な闇に、突き進むだけ。何も見えない恐怖心で、私の脳内は埋め尽くされた。
「おいでおいで」
最初に聞こえた落ち着いた声。私は、この声に恐怖を覚えていた。
足が止まった。私は、戻ろうと思って今まで通った道を、記憶を頼りにして戻ろうとすると、進めない。
「どう、して……っ!?」
その場に、座り込んだ。恐怖心に侵されて涙が止まらない。もう、動けない。どうする事もできなくなった私の耳の横で、囁く声が聞こえた。
「さあ、愉しい遊戯を始めよう」
私は何も見えなくなった。
「シナモンスティックは魔法のステッキなのよ。一振りするだけでシロップが増えるわ」
何も分からない。視界は閉ざされた。耳なんて、傾ける余地もない。頭は、考える事をやめた。触れた手は、心地よくて。
言葉を流して、ただ鎖に繋がれている。女の言葉が終わった後に、何かが振りかけられた。どろどろ、ねばねばした液体が、私の体にかかる。甘い匂いがそこに蔓延る。
先程味わった苦痛も苦さも忘れて、甘い匂いと共に甘い夢の中。
ベッドに倒れ込んで、天蓋に守られる。謎の安心感と共に、私は眠りに堕ちる。