二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【クイズ】ボカロ曲を好き勝手に【企画】 ( No.264 )
- 日時: 2011/10/22 10:07
- 名前: 蟻 ◆v9jt8.IUtE (ID: V9u1HFiP)
ゆらりゆらゆら、誰かの腕の中。
#02 光の届かない現実
「幻想の催眠に溺れたままでいいのさ。目隠しを外してしまったら、面白くないからね」
きゅ、とその人は目隠しをきつく縛る。声からして、男の人。私としては、目隠しなんて外しても外さなくても、変わらず苦しくて寂しくて怖いのは変わらない。
彼の手が私の体に触れる。怖くなって、ここから逃げようとしたけれど、ふらふら。やはり、力は入らない。
「足元ご注意。その手は僕が引くからね」
優しげな声と共に、私は手を引かれて、男の体の間に、すっぽりと入ってしまった。私の中には、既に恐怖が刻み込まれて、逃げたくなりもがいている。だけ。
もう一人——おそらく女の人が、私の腕を指でなぞり、舌で舐めてきた。彼女の唾液が、私の腕を伝う。恐怖が体を震わせる。ああ、またやられるのか。諦めて、理性を手放す。二人の声が重なって、鳥肌が立つ。
「その身を今すぐに委ねなさい——さあ」
咽び泣く声。喘ぐ声。嫌な悲鳴が混ざり合って、嫌な感情が混ざり合って、私はそのまま睡眠欲に侵された。二人の声で、犯された。
どうしてだろう。長い間、この二人と過ごしている。不満も不安も、何もなかった——筈なのに。この目隠しは、一度も外された事がない。二人に手を引かれ、導かれ、私は今ここに居る。二人の言うがまま。
また今日も、小さな明かりすら見える事なく、いつもと同じ事を繰り返す。でも、これはいつから始まった?
いつからか、そう思う様になった。疑念の刃が気付かれない様に二人を見ては、二人が私を見たら隠す行為。
彼が言っていた。『愛』という免罪符などは存在しない、と。愛だけで免れる事なんて、一つもない。じゃあ、二人への愛で、全てを知りたいと思って、現実を知る事は、いけない事?
疑問も疑念も、そして恐怖も無視して、目隠しがゆるくなる。見ては駄目だと、分かっていたけれど、どうしても見たかった。
彼女が元気よく声をあげて、扉を開ける。どこかから帰ってきた様だ。ゆるくなった目隠しの隙間から彼女を覗く。暗い部屋の中で、蝋燭が仄かな光を灯す中で、彼女の持っていた物は、蝋燭よりも明るかった。
——カボチャの、ランタン。
それが映し出した女の影に、思わず身の毛がよだった。……ああ。今まで、どうして忘れていたのか、分からないくらいの恐怖が私の中を占める。
あれはずっと前のハロウィンの日。まだ十六歳だった、あの日に、私は森に迷い込んだんだ。そして——苦しい味と甘い幻想に惑わされて、もう何年だろうか。
真実と過去を全て思い出した私に、彼女は異変を察して、私に近付いてきた。