二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: ボカロ曲を好き勝手に解釈してみた ( No.290 )
日時: 2011/12/10 21:15
名前: 蟻 ◆v9jt8.IUtE (ID: hTgX0rwQ)

 またおひめさまを、不快にさせてしまった。


#02 おひめさま、おこりんぼ


 ——どうしてそんなに尽くせるんだよ、シスコンが。

と、友達とかに言われるとまあどうしようもない。全部本当の事だ。シスコンという言葉は否定するとして。
 まあおひめさまと言っても、所詮俺らは双子で、どっちかっつーと、ごっこに近いものだから、姉のリンの欠点なんて、数え切れないほどに沢山あるし、文句も言ったりする。どこぞの三大悲劇の様におひめさまのために死ねるほど従順な召使ではない。いやまあわかんないけど。
 ——それに、俺の話なんて全然聞かないで、勝手に迷子なったりするし。ついでにいうがリンは極度の方向オンチだ。たまに学校の教室間違えたりする。
 まあでも、ほら、あんなに純真無垢な笑顔とか、俺を呼ぶ声とか、嫌いではない。……いい奴だよなあ、単純だけど。
 友達と話していたリンがこっちを向いて手をふりふりする。若干恥ずかしいが、とりあえず手を振っておいた。羞恥に耐えられなくなって、廊下の方に目を逸らすと、後ろから女子の声が聞こえた。「レンくんかわいいねー」誰だおい。
 
 帰宅した。おてて繋いで仲良しこよし……ではないのだが、周りの目には仲良し、というか姉弟愛っていうか近親相姦っていうかカップルっていうか……とにかく仲良しに見えるだろうが、実際のところはリンが駄々をこねてきたから繋いだだけの話である。
 俺が勉強を始めたので、リンも勉強し始めた——のだが、リンは俗に言うおばかさんで、あと集中力もないので勉強が嫌いらしい。好きな人は居ないと思うがな。
 とにかく、俺が黙々と勉強している横で、リンはマンガを読んだり、下からお菓子を持ってきて貪り食ったりした後で、再度気合を入れて頑張り始めるのだが、またマンガに手を伸ばしてしまう。無限ループである。
 リンは、読むマンガもなくなったのか、退屈そうに寝転がりながら、俺に纏わり付く。早く勉強しろようましか。
 
「ねーレン! ホットケーキ作ってよ! マーマレードとアイスのやつ!」
「ちょっと待ってて。終わったら作るから」

コイツ……俺が集中しているというのに……とりあえずこの単元だけは終わらせたいので、適当に返事をする。
 ていうか、こんな冬にアイスはないだろ……。アイスコーナーに行くのも嫌だわ。
 リンは俺の言葉に「分かったー」と返して口を閉じた。沈黙だけが続き、俺にとっても集中しやすい空気となった。
 しかし。俺は忘れてしまっていた。リンには集中力というものがないことを。

「ねえレン、いつまでかかるのよー。こんなに長かったらアタシ空腹で死んじゃうー」

沈黙は僅か約十分だった。やっと静かになったと思ったら、またうるさくなった。俺は勉強できない苛立ちからか、おひめさまに、とても無礼な事を言ってしまった。勝手に口が、動いてしまっていた。

「うるさいな、おひめさまは。ホットケーキぐらい、後で作るから、今は黙ってるか、一人にさせてくれよ」

これが本当の、沈黙。本当の気まずい空間。リンの、今にも泣いてしまいそうな顔を見て、しまったと悔やんでしまった。

「リ、ン……ごめ、ん」
「もういいよ! ホットケーキとか本当は欲しくなかったもんね! レンなんて大大大大大ッ嫌い!」

そこにあったクッションを俺に投げ、乱暴にドアを開けて出て行った。ドアは閉めなかった。閉めろよドアぐらい。
 別にホットケーキを作るぐらいなら、わがままなんて思わないんだけどさ——でも、たまにくらい俺に優しくしてくれたって、俺を優先してくれたって、別にいーだろうよ……。