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　さよなら溺れていた世界よ。


＃04　壊れた情景と感情

　
　ああ、夢だったと哂えない。夢を見続けていて壊れてしまいたい。ねえ、そうでしょう？　どうせなら、夢の勢いにのって酔い潰せよ、大声で苦情がくるぐらいに歌いだせよ。理性なんか捨てたいよ。頭の継ぎ接ぎが狂った、馬鹿みたいなお人形は世界に歯向かう。継ぎ接ぎ狂ったマトリョシカ。狂えないから狂ってる。どうして、なんで理性がまだ残ってるの？　夢に溺れたいのに、ロマンティックな冒険を、もっと君としてたいよ。何度も何度も、愛してるって言い合ってたいよ。
　
　ねえねえ、ねえ。もっといっぱい舞って頂戴よ。狂うぐらいに廻って踊って。カリンカ？　マリンカ？　とにかく弦を弾いてしまえ。こんなどうしようもない感情を、どうしようか？　どこにも行けないままなのに、まだまだ私はここに存在が在るのだから、全く厄介。
　ちょっと教えてくれないか？　なんであなたがここに居ないのか。ねえ、なんで私だけここに立ってるのよ。答えられるなら答えてよ。教えてよ。
　睡眠薬を乱雑にとって、一気に飲み込む。乾燥した喉に痛くつっかかっている。苦しい、苦しい。感度は良好。夢に近付いてきた。ここに立っている意味などないのだから、倒れてしまっても構わないでしょう？
　フロイト？　ケロイド？　心理学者でも私の心は知ることはない。傷の痛みは爆発した時よりも酷い。鍵を叩いて、壊れてきた。胸に何かが突き刺さって、吐き気と眠気を催しながら、私は最期の世界に目を向ける。
　
　——ネオンの光が眩しくて、自分が暗闇にいた事を思い知らされる。ああ、なんでこんなもの見ちゃったんだろ。嫌悪感。

　さよなら、暗闇に溺れていたままのこの世界。さよなら、ずっと溺れていた夢の世界。さよなら、私がずっと溺れていたあなたと言う名の世界よ。
　全部全部、不公平な世の中を笑っちゃおうぜ。そして馬鹿な私を笑っちゃおうぜ。二人で笑ってたら、楽しいでしょ。ね、素敵でしょう。
　私たちの世界に、生きている人間は要らないわ。皆で祭り騒ぎみたいに踊ったら、さっさといなくなってよ。
　　


end / マトリョシカ