二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: ボカロ曲を好き勝手に解釈してみた ( No.343 )
日時: 2012/02/12 10:29
名前: 蟻 ◆v9jt8.IUtE (ID: hTgX0rwQ)
参照: 月乃2 体、一体。体なだけに。本当に笑えないお… 

 どうして、あなたは消えてしまうのか。


#02 空虚


 薄明かりの中で、ふと願いが叶った様な気がする。いや、気がするだけというか、気がするだけじゃないというか。どっちだか分からないけれど、私が会いたい人の影が、一瞬。本当に一瞬だけ見えた様な。
 坂道の手前で、君は笑っていた。なんだか切ない。そんな雰囲気が辺りに漂っていた。

「ね、ねえ! あのさ」

この空気が耐えられなくて、重たくて。こんなの嫌だから、私は空気を変えようとした。でも、変えられなかった。嫌な言葉、嫌な響き。頭の中で、こだまする。

「ばいばい」

手を振って後ろを向く君に。走っている君の言葉に。呆然として、心が痛くて、傷ついて。気がつけば、走って精一杯だった。

「行かないで!」

叫んでも裂けても、遠くなる背中。その体に、一体何を思っているの? 体なだけに。笑えない。むしろ私がからからだ。
 その背中を追いかけて、転んで。何もかもが痛くて。ああ、私。泣き虫だ。泣いたままだけど立ち上がって、まだ何とか見える君の背中を追いかける。泣いている暇なんてどこにもないし、転んでる暇もないんだから。馬鹿だなあ。必死すぎて、痛いよ。
 カナリアは羽ばたいて。本当はもう分かってるよ。行く充てがないってことは。君が私の隣に居る事はない。私が君の隣で居られる事なんて、ありえない。
 それでも見ていたいって思う自分が居て。本当に、どんな罵声を浴びせても、その全部がお似合いな私だ。むしろ私を罵ってくれ。馬鹿で、未練がましいんだから。君に罵られたら、まだ諦めがつくのに。君は、その優しさで心を突き刺す。知っててやってるんだろうか。知ってるんなら、ひび割れた心が、壊れそうだな。
 立ち止まって空を見上げていた君に追いついたら、君は笑って消えてしまった。

「待って、待って」

連呼しても、何も変わらない。
 泣いたままの私は、君が消えたあとにも嘲笑する。いや、自嘲といった方が正しいのだろうか。後ろを振り向いて。

「こんなに遠く来ちゃったんだ」

ただの幻想に惑わされて。ただの妄想に、惑わされて。
 幻想でさえ叶わないから、きっと現実でも叶いはしないんだろう。適わないんだろうな。
 ずっと、不確かな願いだけを躍らせていたんだ。
 ——大変、空虚でした。何もかも、私の想いさえ。