二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: ボカロ曲を好き勝手に解釈してみた ( No.345 )
日時: 2012/02/13 17:23
名前: 蟻 ◆v9jt8.IUtE (ID: hTgX0rwQ)
参照: 月乃3 参照3000ありがとうございます。

 どうして、優しくされて痛いのか。


#03 傷心


 一方通行の想い。君はどこにも居なくて、星は見えなくって。けれどまあ、星よりもか弱い、夜に浮かぶ薄明かりは夢を叶えてくれたらしい。本当にすれ違い程度で、相手も気付いてなんかいないだろう。
 カナリアが彼の手に届く。私は安堵する。届いてよかった……。
 でもまあ、彼の姿を見れたことが、彼の元に私の想いが届いたことが、幸せというわけじゃなかったのだ。いや、そんなことを幸せだというのなら、世の中は今も昔も、平和なままだ。
 びり、と嫌な音。何をしたかなんて分かってる。見たくない聞きたくない。現実を理解したくない。
 やっぱり、大きな壁があった。理解はしていた。きっとこの恋は小さなものだということを。それでも、多少傷はつく。多少、なんてもんじゃない。とても痛い。痛いよ。
 何にもなく冷めるくらいなら、君に殺されて冷たくなっちゃいたい、と考える。
 そう。私と彼の間は、愛なんてなかった。友情さえなかった。彼と私の関係性は、会ったことはある程度のもの。それだけ。何となく知り合い。それほどまでに曖昧な関係。
 冷めていく、冷めていく。こんな形じゃ嫌だった。このココロも、この記憶も、全て焼き尽くせたなら。
 偶然、会ってしまった。記憶力がいいんだろうか。見事なまでに覚えられていた。

「月乃だよね? どうして泣いてるの」

それは君のせいです、なんて言えなくて。
 気付けば、ぼろぼろ涙を零していた。言葉も紡げない。どうしてなんて言われても返せない。君の顔を見るたびに、君の声を聞くたびに、私は辛くなる。いつもと変わらない、関係に。
 君の顔だけはっきり見える。何よこれ、もう嫌だ。
 盲目過信に気遣いは無用。見えないのに、過ぎるほどに信じて。優しいって信じちゃって。人間だから、欠点ぐらいあるのに。目に見える場所にしか目を向けないで。『完璧』だと思い込んでた。
 「大丈夫か」なんて、訊かないでよ。その優しさが邪魔なんだよ。私を傷つけてるんだよ。表だけ優しいなんて、酷いよ。ずるいよ。
 いたたまれなくなって、その場から逃げ出す。
 
 空は真っ暗。月は満ちている。なのに、私の心は欠けていて。鈍器で頭を殴られたみたいで。傷がまだ痛いのに、痛みさえ愛おしい。傷心しているのに、彼への想いはどう言い訳しても正真。本物。
 ああ、君の面影を愛して、寄り添うだけ亡骸。もう、届かないのに。もう居ないのにさ。私の前には居ないのに。
 まだ想ってるだなんて、皮肉な話。