二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: ボカロ曲を好き勝手に解釈してみた ( No.347 )
日時: 2012/02/18 21:18
名前: 蟻 ◆v9jt8.IUtE (ID: hTgX0rwQ)
参照: 月乃4 そしてまたループする。似た者同士、なんてものじゃない。

 どうしても、どうしようもないから。


#04 一人旅


 もう行きたいな。ここではない、どこか遠くへ行ってしまえたらいいのに。君の居ない世界なんていらない。私を知らない場所で、何もなかったことにして生きたい。
 いや、むしろ。逝きたいな。何処にもない場所へ。存在すらできない世界の中に、飛び込んでしまいたい。リセットしてしまいたい。私は、未だに。失恋しても未練を残して。届かない言葉だけを抱きしめていたんだ。届かなかった言葉の、輝く未来を夢見て。伝わらなかった言葉が、伝わってたなら。
 そんな想像をするも、そんな幸せな想像が、眩しくて。不幸のヒロイン気取り、なんて言ったって。ヒロインじゃないよ。不幸なだけだよ。心がちくちくと、じわじわと痛みを増す。幸せを願う度に、痛くて。
 暗闇に光るネオンの町を、一人で寂しく歩く。人ごみに混ざった君の姿が、はっきりと見える。それがまた、心を傷つける。君の隣に立っている女の子の姿を見て、機嫌が悪くなる。もともと、良い機嫌とは言わないけれど。むしろ、ずっと機嫌が悪い。
 町は輝いて、君は輝いて。周りは光に包まれているのに、私だけが真っ黒。心も体も。私が悪くないはずなのに。君が悪いはずなのに。それでも、私は独り。私は暗闇。そんな妄想だけの世界に陥って、怖くて。 震えて泣き出して歩く。そんな私を気にかける人なんて、一人も。一人さえ、居ない。独りきり。
 
 町は光できらめいているはずなのに、私が歩いているのは深い黒の中。どこまでも、おちていく。心は、憂鬱と暗々。
 ここまで暗闇なら、星も光を放つはずなのに、星は全て、カナリアに引き裂かれてしまって一つも見えない。そのカナリアも、引き裂かれてしまったけれど。 
 儚いな。恋と言うものは。愛にもなれないままだから、すぐに壊れてしまうんだ。ふと空を見上げる。夜空に咲く月が、星もない夜で、たった独り浮かんでいる。浮いている、と言った方が正しいのかなんなのか。まるで私のようだと、いつかの様に嘲笑を浮かべる。太陽は、月に何も言えない。遠くて遠い、いつまでも変わらない距離間の仲。
 もう、泣かないでよ。身体を捨てるから。愛など感じない。人など信じない。私が私に帰る日まで。私が私で居られるようになるまで。
  
 ——行きたいな、ここではない場所へ。
 ——生きたいな、ここではない場所で。

そしてまた楽しく過ごしたい。傷つかないで、生きていたい。いつまでも、恋をせずに。苦しい恋など、月のように暗闇の中で独りきりなのだから。悲しくて、切ないのだから。
 そして私は、また道を歩く。暗がりに溶けて、たった一人きりで。旅をする。私自身に辿り着くまで。いつの日にかは、きっと輝けるはずだと、そう心の中で願いを持って。 
 
 ————だから、泣かないでよ。私も星は流さないから。



end / 月乃