二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: ボカロ曲を好き勝手に解釈してみた ( No.353 )
日時: 2012/02/29 19:00
名前: 蟻 ◆v9jt8.IUtE (ID: hTgX0rwQ)
参照: キミナシビジョン3  心が揺らぐとか揺れるとか。ほぼ歌詞のまんまです

 いつまでも、どこまでも想い続けている。 


#03 愛おしい過去の中で笑った君を


 二人揃って一心同体だった心を閉ざして、大事な物をなくした記憶を閉じ込める。僕までも閉じ込める僕は、いつまでも晴天の空を見ようとはしない。
 暗くて静かな空間の中に、ぽつりと座って泣いている。正にどん底と言うべきなのか。僕は、暗がりで咲く、たった一輪の花をただ死んだような目で見ていた。
 眩しすぎない優しい光。僕にとって、それは『希望』だとか『幸福』を象徴するものに見えた。見たことのある優しい花は、きっと君が贈ってくれた、花だと。
 僕は。一つだけ、たった一つだけ。いくつもの願いを約束した中で、たった一つの約束を思いだす。あの花が、僕を幸せにしてくれるなら。
 僕はたったひとつだけ、本当の願いをあの花に託して。
  
 きっとここが僕の終わり。きっとここが夢の果て。崩れきった瓦礫の中で、何もできなかった。いつか見た夢は、叶えられずに潰された。それでも、ひとつ生きている約束がまだある。
 ここが果てだとは思いもしなかった。君と想像した未来とはあまりにも違っていて。あまりにも、理想像とはかけ離れていて、理想なんて、変わり果てた姿で。君が居なくなることなんて、考えもしなかった。
 僕らが描いた情景は、僕らが描きたかった情景は、揺らいで、瓦礫とともに崩れ去って、また揺らいで。

 暗い空間で眠って、起きたら昼だった。相変わらず、君が居ない部屋は牢屋のようで、無機質で。それでもいいんだ、ありがとう。
 僕は甘いメロンパンを食べながら、窓の外を見上げる。輝く太陽と青く澄んだ空に、目が眩んでしまう。僕は相変わらずに、未だに、この世界の中に居られないのかと思う。
 あの眩しい空の、遠い遠い雲の中の王国には今も君の笑い声が響いているといいな。君だけには元気で居てほしいから。 
 私が世界から消えても、世界は動く。それでも、私が世界から消えて悲しむ人が居たら、きっと明日の天気予報は晴れのち雨だ。今日はいい天気だなーと思ったら、知り合いが死んでるんだもん。そりゃあ、テンションも下がるだろう。まあ、僕はこの世界から縁を切るので、そんなこと関係はないのだけれど。
 もっと君と居たかった世界とさよならして、今から君の居る世界へ、眠りにつきますので。あ、そろそろ苦しい、な。
 ——ともかく。あの、雲と雲の隙間だけは開けておいて下さい。笑って迎えてくれれば、幸いです。


 ————私を呼ぶ声で目が覚めた。
目を開けると、そこには見覚えのある顔が映る。
 ああやっと、その腕で抱かれることができるのだと、その顔を見れるのだと、やっと、笑うことができるのだと。
 驚きつつも、涙を流す。

「ただいま」 



end / キミナシビジョン