二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: ボカロ曲を好き勝手に解釈してみた ( No.369 )
- 日時: 2012/03/15 20:10
- 名前: 蟻 ◆v9jt8.IUtE (ID: hTgX0rwQ)
- 参照: BC1 崩れかけたものたちのひとつが、
もう崩れるしかないこの世界。
#01 空の先は澄んでいた
灰色の空が目に見える。いつか見たことのある、私の心の青が、この灰色の空にひとつだけ、光のように、波紋のように。静かに響きだした。懐かしいあの空は、もう見えることはないのに。この澱んだ雲を突き抜けられるはずもないのだ。それなのに、私は絵の具が溶けたような、あの澄んだ青い空を見たいと、願っているばかり。
黒く穢れた空を見上げれば、その手に今までの幸福が砕けて、降り注ぐ。
幸福が壊れていく音がきこえる。ほら、今も腐ってくよ。ぽろぽろと落ちていく皮。
窓の外で雨が降りしきる。外で遊ぶ者など誰一人居ない。この建物もそろそろ雨に壊されそうなくらいだ。あの心地よかった雨の中に飛び出すことさえも、できない世界へと変わり果ててしまった。
文明は進化し、人々も進化した。進化するたびに欲望を出して、また進化をし続けようとした人類は、ついに限界を迎えた。その結果がこの灰色の空である。自然にできた地球を、自然が消していく。自然の中の一部分である人間という生物が、自然を求めなかったばかりに、この世界は崩れていく。誰も望んでなんかいないのに。
それでも、人のせいなんだ。
人のせいで人が死んでいく。今生きている私だって、明日か明後日かいつか……必ず死んでいく。
自然の力を借りて、生きている昔。懐かしかった。戻りたかった。今頃思っても遅いことだと、誰かは言うだろう。それでも皆、誰かの言葉なんか飲み込んで、吐き出してるんだ。理解という言葉も、意味はなさない。理解なんてしたくない。諦めたいのに、幸福を望んでいたい。
水も火も太陽も風も、生物も、何もかも。皆共有しあって生きている。そんな当たり前のことも、地球が迎える正当な末路も、覚えたフリをして忘れかけていた。そんな当たり前なはずだった運命が、狂い、引き裂かれていく。狂わせたのは人間だ。人間の欲望が重なってできた世界。
お互いの口から零れ落ちる声を集めても、たった一つの苦しいほどの願い。嫌な夢の中でも、いつか終焉を迎えるときでも、いつでも手を繋いでいる。
「離れないで……」
「離れないよ」
と。そんな小さな会話を交わす。
——約束って儚いよね。
って言葉を、胸のどこかで思い出した。それでも私は、願い続ける。