二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【リク】ボカロ曲を好き勝手に【募集】 ( No.391 )
日時: 2012/04/29 15:31
名前: 蟻 ◆v9jt8.IUtE (ID: hTgX0rwQ)
参照: オドロシライダー5 題名がおもいつかないお

 君は僕を傷つけるんですか。僕は君を守れないんですか。


#05 きもちわるい、な


 元二年五組と書かれた教室の中に入る。これが、僕が居た場所。僕が居たくもない奴と一緒に居た時の場所。僕がやりたくもない事をやっていた時に居た場所。僕が君を見ていた場所。そんな、教室を忘れることはない。
 自分に吐き気を催した。ゾンビも大概だが、あの時の思い出もきもちわるい。見てて違和感を覚えるほどに、平坦な毎日だった。何もなく過ごし、何もなく終わる。何ともなく喋り、何ともなく別れる。かなしいとかうれしいとか、今まで以上に感情の起伏というものが全く無かった、中学二年生。
 大した問題もなかったこのクラスの事を、楽しかったクラス以上に覚えていたのは居心地が悪かったからなのかと思った。
 君が居るのに他の人が居ない。思えば、僕は君を好きだったのか分からない。あの当時はただ憧れていただけなのか。非日常が起こりすぎて、頭がおかしくなっているようだ。

 ——ああ、今でも思い出す。開くのに躊躇をした教室の扉。重たくって重たくって、しようがなかった。しかし、義務教育を終えた今でも、重たいのはどういうわけだろうか。
 中学二年生を思い出して、僕は中に入る。
 ——窓から差す月明かりに、照らされる二つの影。おどろおどろしい、二つの影。教室の中だけ、時が止まっているように静かだった。

「ごメン、ね……」

拙い言葉が僕に伝わる。と、同時に。何かが光るのを見て、僕は世界に飲み込まれた。


「————ここは、どこだ?」

頭が痛い。頭痛を伴いながら、僕は辺りを見回した。どうやら先ほどの教室とあまり変わらないようだ。月の光が、窓側にある机を照らす。
 廊下からぱたぱたと走る音が聞こえたので、条件的に机に隠れる。正直言って隠れきれていない様に感じる。
 
「はあっ、はっ」

息切れした女性が教室の中に入ってきた。すかさず扉を閉め、鍵を掛ける。そして、膝に手をつき息を整える。
 目を凝らして見ると、その女性は僕のよく知ってる女性だった。僕の彼女だ。しかし、彼女がどうしてここに? 彼女は今、ゾンビになっているのでは? よく分からないな。
 しばらく様子を見ていると、扉ががたがたがた、と尋常じゃない音を出す。彼女は驚き、肩を震わせた。
 数分ぐらいはその状況が続いたが、それも束の間。扉が外れると、人影はべちゃり、べちゃりと気味の悪い足音を鳴らして彼女へ近付く。これは人影ではない、どう見てもゾンビだ。
 目に涙を溜めた彼女は必死に逃げるが、並べられていた机に足がかかって、転んでしまった。僕は咄嗟に飛び出し、彼女の前に立つ。が。すり抜けてしまった。そしてゾンビは彼女に飛び掛る。