二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【リク】ボカロ曲を好き勝手に【募集】 ( No.394 )
- 日時: 2012/05/03 09:43
- 名前: 蟻 ◆v9jt8.IUtE (ID: hTgX0rwQ)
- 参照: オドロシライダー6 ちょいグロはいりまーす
全力で駆け抜けて、もう僕は終わりだ。
#06 理性の消失 僕の消失
ぐちゃり。ごきっ。がりがり。
僕は目を閉じ、耳を手で塞ぐが、その痛々しい咀嚼の音と、彼女の叫びは耳の奥まで聞こえた。
「あっ、なたは……おそわ、ない、から……」
途切れ途切れのか細い言葉が耳に入り、僕は目を開けて彼女を見る。
彼女の体はもう半分程ゾンビに喰われていて、胸から上が残っている状態だった。そんな彼女は、僕に微笑みかけていた。痛みを無視して。
——ああ、いつも見ていた彼女の等しい笑顔。人のために動く彼女は、今回も人のため、言うならば僕のために動いてくれたのか。未来から来た僕を守るため。そして、この時間に眠りについていた僕を守るため。
顔を手で覆い、みっともない姿で子供のように泣く。それだけ僕は、弱かった。
……夢中で君の事を想って、泣いていたら、二つの人影はもう消えていた。元の世界に帰ってきた様な感触。僕は過去の中の未来の人間ではなくなったのだ。
眠気が僕を襲ってきたから、僕は本能のままに眠りについた。懐かしいこの教室で。
目を覚ますと、窓から光が差し込んできて、目が眩む。窓から空を見ると、心地よい晴天。こんな日はあの子と散歩でもしたいなーと頭の中で思いながら、下を見下ろす。
昨日まで何もなかった学校は、既にゾンビだらけだった。となると、校舎内にもゾンビが結構居るんだろうな。教室の隅にかけておいたギターを取り出す。自転車は外に置いてくるほかなかったので、多分もうゾンビの波に巻き込まれて壊れてしまっているだろう。仕方がない。
腐りきったはずのこの街は、生きている僕だけを取り残して、昨日も今日も明日も、朝と夜がまわっていた。
教室から出て、辺りを見渡す。僕の周りには五体以上のゾンビが居る。
僕は、おどろおどろしいな。何も知らないまま毎日を過ごしていて、恐ろしすぎるよ。怖いよ。今までどうやって生きてたのか。人任せだったのか。
オンボロのギターを精一杯振り回して、ゾンビの形を崩していく。そして終えたら、僕の正義のもとに生きるライダーは、また廊下を駆け抜けてゾンビに会って、また崩す。繰り返し、嫌な気分になる。
君のおかげだって分かってるよ。それでもなんで僕だけ、噛まれないし喰われない? どうして僕だけ生き残っているんだ。せめて人一人ぐらい、残してくれたって。黒いもやが、心の中に渦巻いている。
「ひとりは、いやなんだよ」
小さな叫び。呟きに似たそれを吐き出して、また飲み込まれる感触に襲われる。今度は世界なんかじゃなくて、底のない深い深い、闇。呑み込まれて闇の中へと僕は消えた。
————消えた。
end / オドロシライダー