二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【リク】ボカロ曲を好き勝手に【募集】 ( No.402 )
日時: 2012/05/21 09:55
名前: 蟻 ◆v9jt8.IUtE (ID: hTgX0rwQ)
参照: FREELY TOMORROW2 まだ一番は終わらない

 高鳴る鼓動、君の笑顔。


#02 その魔法に、魅せられた

 
 今日も、帰り道には君が一人で歩いていた。何となく目で追ってみる。曲がり角から顔を出して君のことを凝視する。気になる。彼の心には何があるんだろう。
 彼のことばっか思っていると、不意感じた人の気配。私を見る視線。何かと思って振り向くと、幼馴染だった。

「なにしてんの。私の事をストーカーでも?」
「それはお前の事じゃないのか」

テンションだだ下がりだよ、もう。

「なんでここに居るの」
「帰り道がこっちだから」
「うんまあそーよね」

周りからイケメンともてはやされる、私の幼馴染、けい
 勿論慧はイケメンだと思うし、世話焼きで尽くす人だからもてるとは思う。けどなんか、私から見たら無愛想な奴だなあ、と思う。だから今まで彼女ができないんじゃないのかと。気になったりする。
 
「一緒帰るか?」
「恥ずかしくてできるか!」

あ。条件反射でビンタしてしまった。私のビンタを思いっきりくらった慧は、頬を赤めながらも、それでも銅像の如く動じない。無表情。痛いっていう感覚あるのかな。

「いてーよ」
「あ、ごめん」
「お前さ、熱ないか?」

と言いながら、自身の手を私の頬に当ててくる。ひんやりとした冷たい手。ちょっと気持ちいいな。私もなんでか知らないけど、勝手に手を慧の頬に当てていた。

「は? どうしたんだよ、お前」

戸惑う慧。その姿はなんだかぼやけていて見え辛い。景色が全部真っ白になって、意識も全部真っ白になった。


 ————ゆらゆら、とする。
 あたりは全部騒がしい街の中。ビルがどこかしこに立っていて、目の前の道しか見えない。靴擦れして痛い足。それでも、人ごみの中で、君におぶられながら喜んでいる私。
 辺りに散乱する雑踏に飲み込まれて、忘れてしまっていた温もりと優しさが、体中を走る。彼の優しさなんて私は分かんないけど。それでも、この優しさは知っている。でも、分からない。誰なんだろう。この懐かしい暖かさは。


「——はうっ!?」

奇声をあげて、飛び出す。氷の特有の冷たさが頭に当たる。冷たすぎて、落ち着かない。
 辺りを見渡すと、自分の部屋だった。しっかり慧も居る。さっきまで通学路でコイツと話してたはずなのに……。あれ、しかもパジャマ姿だ。

「落ち着け」
「アンタ、私の制服脱がしたの?」
「何言ってんだ、姉ちゃんに頼んだんだよ馬鹿」

なんとか一安心だ。