二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【リク】ボカロ曲を好き勝手に【募集】 ( No.406 )
日時: 2012/06/16 10:52
名前: 蟻 ◆v9jt8.IUtE (ID: hTgX0rwQ)
参照: FREELY TOMORROW3 久々。時間は夏

 目を閉じれば、輝く君の姿。


#03 私の記憶、誰のこと


 慧と慧のお姉ちゃんは、私のお母さんが帰ってくるとすぐに帰ってしまった。開けっ放しの窓の向こうは、濃紺に染まっている。住宅街には、まだちらほら明かりがつけられていて、星は若干見えにくい。開かれた窓からは、夏独特のぬるい風が部屋に入り込む。クーラーの冷えた風を浴びたいと思いながらも、動くのがだるい私は、ベッドから動かずにいた。
 
 ——それにしても。さっき、私が倒れたとき、慧は背負ってここまで来てくれたんだよなあ……。
 そのとき私は、夢の中で幸せだった。ちょっと悪い気がする。慧がおんぶしてたのに、彼のことを考えてたんだもんな。
 心ごと、体ごと。全部全部、記憶の中の出来事が混ざり合ってできた幻の中に溺れてた。君とか、今日とか、理想とか。ほんとは、近づけないくせに。人が居ても、居なくても。知らないことを知ってても、知らなくても。臆病者な、私。
 …………眠たいなあ。眠ろう。
 
「おやすみ」

誰に言うでもなく、呟いた。

 起き上がる。熱かった体は、いつも通りだ。傍のチェストに置かれていた水を飲んで、体温計で熱を測る。……案の定、熱はなかった。
 なんか行きたくない。昨日以上に、だるい。
 とは言え、さぼるわけにはいかない。不機嫌なまま、制服に着替え、自分の部屋を出た。
 パンを食べて、歯磨きして、適当に準備を終えて外に出る。朝は涼しいなあ。爽やかな風が髪をなびかせた。

葉都はつ!」
「びっ、くりしたぁ……なんだ、慧かあ……」

どうせなら慧じゃなくって、君だったら良かったのになあ。

「もう大丈夫だな」
「心配なし!?」
「お前に心配はいらねえよ」
「なんだとっ」

女の子だというのにっ! 腹立つ! 熱下がったのは別にいいけどテンションは昨日から下がりっぱなしだよ!

「一緒行こうぜ」
「昨日も言ったけど無理」
「一緒行こうぜ」
「まさかの強制!」

慧は顔を見せなかった。ただ私の手をばっと掴んでがっと引っ張ってずかずかと歩いた。私は最初喚いてたけど、それでも慧が口を開かないから、私も自然に黙った。
 すると、慧は急に止まった。こんなとこ、誰かに見られたら恥ずかしいから、私は掴まれていた手をすぐに振りほどいた。

「何してんの、慧」
「俺、葉都のこと好きだよ」
「は? ……ええ?」

慧は、汗を拭うような仕草で顔を隠した。

 ——本当の、愛情、が?

 私をまた、赤く火照らす。