二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【リク】ボカロ曲を好き勝手に【募集】 ( No.410 )
日時: 2012/07/07 17:49
名前: 蟻 ◆v9jt8.IUtE (ID: hTgX0rwQ)
参照: FREELY TOMMOROW │ もうむりだー

 やさしくやさしく、抱えてくれる想い。


#06 思い、と想い。


 夢みたいだ。私は慧に思いを伝えた。まだ彼を好きだってこと。そして慧も、ちゃんと好きということ。自分がこうやって、自分から想って、想われて恋しているのが不思議で、夢みたいなんだ。
 それと同時に、物凄く恥ずかしい。

「明日デートだあああ……」

枕に埋もれ、足をばたつかせると、ベッドが音を出して軋んだ。
 心ごと。体ごと、全部記憶の中の幻みたいだ。例えば、将来結婚する、だとか約束していた無垢な幼少期みたいな。成長した私はありえないと考えていたこと。付き合うことすら、考えてなかった。けど。現に明日デートする。ああ、緊張。
 とっても親切だった小学生の時。ちょっと距離空けてたけど、たまに一緒に帰った中学校の帰り道。今まで何とも思ってなかったけど、こうして記憶を辿ってみると、照れで死んでしまいそうだ。
 私の記憶に残る慧は、いつでも無愛想で無口で、裏側で一生懸命。そして——いつでもやさしい。
 そんなやさしさを私は、知らないフリをしていたのかもしれない。きっと君に溺れながらも、想像の君の中で、慧のやさしさに溺れていた。
 両手が、熱い。本当の愛情が、指先から流れている気がする。
 そう思うと、最初っからべた惚れしているみたいだなあ…………。


「……は」

いつもより気持ちよく目が覚めた。窓の外は既に明るい。時計を見ると、まだ時間より全然早い。
 顔が綻んで、笑っているのが分かる。うわ、きもちわるい。手鏡に目を通すと、ゆるんでる表情を手で直す。
 顔をあげて、微笑めば。慧と笑って過ごす今日を想像すると、笑顔を取り戻す魔法になる。昨日悩んでいたことはなんだっただろう。慧を想うだけで、私は笑えるのだ。あっちも、そうだといいんだけど。

 慧は私を想ってくれてる。ただそれだけだろう。
 私の思ってることも、想ってる人も、ぜーんぶやさしく受け止めて抱えてるんだろう。本当、いい人だなあ。
 いい人だから、私はいつまでもやさしさに溺れてたんだ。

 ——慧は私の想いで、幸せかなあ。
 慧を想うだけじゃない想いで、十分だろうか。……いや。今日のデートは慧を思いっきり想うためだけにあるんだ。慧が大好きということを思いっきり伝えよう。

 慧のこころに大きいノックをして、二人で一緒にお茶を飲もう。二人の幸せを想い合う、不思議なトリック。幸せだと、そう想える今日で、そう想える明日。いつ想っても二人が幸せになる。私の幸せは、私ひとりのものではなくなった。
 きっと大丈夫、だって私には幸せにしたい人がいる。だから生まれ変われる。

「今日も明日も自由で幸せだ!」  

可愛い服を着て、笑顔を向けるの。



end / FREELY TOMMOROW