二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re:   Pure love 君とずっと君と  (テニプリ)  ( No.19 )
日時: 2011/03/24 13:12
名前: 扉 ◆A2rpxnFQ.g (ID: ycpBp.uF)
参照: 偶然も必然も、全ては運命。

004



“アイツはまだきっと、君を待ってるよ??”

 そんな言葉は、耳に残る————————————



「あ、此処にいたんですか、美波先輩」

 日が傾き始めた頃。後輩に呼ばれ、振り返る。
 彼はため息をつきながら此方に歩み寄って、隣に座り込む。先程まで、神の子の座っていた場所だ。とは言え、左京は知る由もないのだが。
 彼は美波の顔を覗き込むようにして言う。

「跡部部長、なんにも言ってませんでしたけど、気になってるぽかったですよ」
「あ、そう」
「あの人、大胆な様で奥手ッスね??」

 最後の一言は、からかうような調子で。
 美波も左京が微笑むのに合わせて、ニコリと笑顔を貼り付けた。彼の無邪気な笑顔は、何か不安を取り除くような安心するような、それなのに寂しそうなような、ずっと前から知っているようなそんな感覚がある。それ故、自然と吊られてしまう。
 それ故———、彼になら話せる事がある。

「左京、さ」
「何ですか??」

 左京はきょとん、とした様子で此方を見ている。


「知ってるよね———??   ・・・・・・私が、————————」


 ふたりを照らす夕日が、やけに明るく美しく、それでいて寂しそうに西の空に浮いていた。まるで、今のふたりの様に。
 左京は少し前の自分と、今の美波を重ねて、小さくため息をついた。



——————



 翌日、関東大会一週間前。青学

 
 朝練を終えて、教室に向かおうとバックを肩にかけた。

「どうしたおチビー 元気ないじゃんっ」
「いつものことッスよ、英二先輩!!」

 越前リョーマは、不機嫌だった。
 後ろからやって来た菊丸英二に後ろから首を絞めるように抱きつかれた後、桃城武に頭を叩かれ失礼なことを言われた。それだけじゃない。今日は、リョーマにとって最悪とも言える日になるだろう。
 正しくは、リョーマの“知り合い”にとっての最悪な日になるだろう。

「あれ、ほんっと怒ってる??」 
「らしくねぇな、らしくねぇよ」
「英二、早くしないと遅刻だよ」
「そうだよー早く!!また先生に怒られ、あ、手塚、待って、一緒に行こう!!」

 落ち着いた不二周助の声をかき消すように、慌ただしい少女の声が聞こえてきた。
 菊丸は振り返り、同じクラスの少女、日向葵を見る。

「葵ーっ 俺を呼びに来たんじゃないのかよーっ」
「ごめんごめん、また後で、教室でねっ 待って手塚!!」
「むーっ」

 手塚の後をひょこひょこついて行く葵を頬を膨らませながら菊丸は見送る。不二は「しょうがないなぁ」とでも言うようにため息をつき、桃城は呆気に取られたように葵を見ていた。

「あの2人ー 付き合ってないんスよね??」
「んー、どうだろうね」
「え、分かんないんスか?!」
「ふたり次第で、どっちにもなるよ」

 不二の意味深な言葉に、桃城は眉を歪ませる。

「それじゃ、お先ッス」

 すっかり忘れられていたリョーマは、無愛想な声で言う。そしてバタン、と部室のドアを閉め振り返ることなく行ってしまった。振り返らないのはいつものことだが、さすがにお節介な先輩は様子が違うことに気がつき始める。
 不二はクスリ、と笑う。

「ご機嫌斜め、だね」
「そーなんスよ!! 理由も言わねぇし」
「そう言えば昨日、越前、女の子と一緒にいたなぁ」

 不二の何気ない言葉に、菊丸と桃城が目を見開く。百面相2人に、不二はまたクスリと笑った。

「ホントっすか?! 不二先輩っ」
「何を話しているのかまでは、解らなかったけどね」

 菊丸と桃城は、顔を見合わせコクリと頷く。そして、今日1番楽しそうな笑みを見せた。
 そんなところへ、妖しい雰囲気を放つノートを持った少年がやってきた。


「それは越前の親友だよ」


 そして、衝撃の一言を呟く。

「しん、ゆう・・・??」
「その、女子がッスか??」

 桃城たちが一層目をパチパチさせ、驚いている後ろで不二もまた薄く目を開け興味深そうに此方を見ている。
 乾貞治は自らのノートをペラペラと捲り、2人の問いに頷いた。

「そして、今日から氷帝学園に通うらしい。3年の春名操緒。テニス部マネージャー希望かな、と言っていたよ」
「えぇ、氷帝?!」
「1回戦の相手じゃないッスかっ」
「そうだね。“これは偶然か必然か———、そんなの必然に決まっている”」

 乾は、どこかの本から抜粋したかのような台詞を紡ぐ。そんな不自然を言う乾に、3人の不思議そうな視線が注がれる。それを感じ取ると、乾はフッと口角を上げた。

「彼女自身が言っていたことだよ」

 乾の脳裏に映るのは、昨日自分の目の前で楽しそうに自分のことを話す、“春名操緒”。

「え、」
「てゆーか乾・・・?? その情報、何処で・・・・・・??」

 菊丸は、きょとんとした表情のまま言う。乾はやはり笑ったまま、言った。

「言っただろう。“彼女自身”から聞いたんだよ」
「本人に直接聞いたのかい??」
「まぁ、そんなところだ。海堂でも気がつかなかった俺の尾行を、すぐに見抜いて、向こうから此方へ寄ってきた」

 尾行、という言葉に菊丸と桃城は「げっ!!」と声を上げるが、乾は実に楽しそうに嗤っている。



「これは、調べてみる必要があるだろう??」