二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【イナイレ】〜俺のサッカー〜『第七章・明かされる記憶』 ( No.282 )
日時: 2011/09/09 20:02
名前: まい (ID: wxXAjABh)

〜第3話〜「お父さんと海夢」

ヒ「なんで、そらくんがあそびにくることになったの?」
?「彼には、皆の心のケアをしてもらうことになったんだよ。そうですよね・・・・・秀次(しゅうじ)さん」

 大仏みたいな奴が怪しげに言う。その時、後ろにあるドアから暁と同じ黒髪、それに、眼鏡をかけていて、白衣を着ている・・・・・科学者みたいな人が出てきた。
 雰囲気はとても、誠実そうで、なにより優しそうな人だった。氷空は一目散(いちもくさん)にその人のところへ走った。

氷「おとうさん!!」
秀「氷空」

驚いた。こんな人が本当の父さんなんて、こんな人がお父さんなんて、なんて自分は幸せだったのだろうと嫉妬してしまうくらいの存在に感じた。
 氷空は両手を広げ、ハグをしようとする。一方、父さんは笑顔になり、ひざを曲げて、同じ目線になる。そして・・・・・・
 近づいた氷空になぜか頭を真上からグーで殴った。ゴン!と鈍い音が部屋に響く。一瞬何が起こったのか分からない幼い三人は茫然とする。案の定、氷空は泣き叫んだ。

氷「うぇ ———— ん!!おとうさんがなぐった —————— !!!!」
秀「このバカ息子が!あれほど森には行くなと言っただろ!!」
?「まぁまぁ、落ち着いてくださいよ(汗」
秀「星次郎さんは黙って下さい!」

『優しそう』っていうのは前後撤回だな。どうやら、実の父親の性格は、誠実で、優しそうな・・・・・超厳しい頑固オヤジ。4歳の息子相手にグーで普通、殴りはしない。
 教育の仕方が悪い、ついでに、大仏の名前は星次郎と言う名が分かった。星次郎は泣き叫んでいる氷空を優しく頭をなでる。

秀「だから、ここに連れてきちゃダメって前もって言ったじゃないですか!!」
星「秀次さん、貴方の言いたいことも分かりますよ。でも、ほかに子供たちが見ていますよ」

そう言って指したのは、怒っている父さんに怯えている風介、晴矢、ヒロトが・・・・それを見た父さんはさっきの態度はどこに行ったのかポンポンと自分の胸を叩いて、冷静になる。

秀「す、すいません。取り乱してしまって」
星「分かればいいですよ」
風「あの・・・・・こころのケアって?」

風介が震えながらも質問をする。父さんが怒ったせいで怖いというイメージが執着してしまったからであろう。

星「氷空君には、これから新しくお日さま園に預けられる子たちを世話してもらいます」
ヒ「でも、ねーさんがいるよ」
星「彼女にはかなりの負担がかかっていますから、彼に手伝ってもらうのですよ」
晴「こいつ、おれたちのせわができるのか?」

まぁ、普通はそう考えるのが妥当だ。いくら人手不足だからと言っても、幼い子供に同い年の子供の世話をするなんて、ばかげた話に等しい

秀「出来るさ、氷空にはサッカーがある」
ヒ「どういういみ?」
星「氷空君は、サッカーがうまいのです。風介と晴矢はさっき彼が打ったシュートを見たでしょう?」

確かに、さっき打った氷空のシュートはとても威力があった。それを思い出した二人はハッとする。

星「では、三人は氷空君を皆のいる所に案内してください」
三人「はい!」

そう言われた三人は氷空の腕を引っ張り、部屋を出て行った。暁は父さんと星次郎を部屋に残して、四人を追いかける。
 長い廊下を走って、奥の方にある大部屋に入っていく。そこには、ざっと30人くらいだろうか。
 まだ幼いイプシロンやジェネシスのメンバー達の一部、それに、まだ会ったことがない子がいた。全員、どこか寂しげな目をしているのが暁は分かった。

氷「ねぇ、このこたちは?」
ヒ「オレたちのともだちだよ」
氷「ふぅーん、じゃあ、ぼくはみんなにあいさつをするね!」
晴「おい!」

晴矢が呼びとめるが、お構いなしに部屋中を駆け回って、一人ひとりに素早くあいさつをする。
 その時、氷空の視線にはひとりぼっちで部屋の隅に座っている子が目に留まった。気になったのだろうか、氷空はその子に話しかけた。

氷「こんばんは!」
?「あなた、だれですか?」

同じくらいの身長の茶髪の子がいた。声の高さからすると女の子だろう、なんだか、他の子に比べて大人びている感じがした。しかし、前髪で顔が隠れていて表情がまったくわからない。服はほかの子に比べるとボロボロになっている。まるで、幽霊に感じた。

氷「ぼくはそら!キミは?」
?「わたし・・・・・名前、ありません」
氷「なんで?」

氷空の質問にそっぽを向いてしまった。おそらく、親に何かされていて、名前がないと考えやすい。
 女の子の視線を追って行くと、そこには、壁に飾ってある海の絵を見ていた。そのすぐ近くに「しょうらいのゆめ」と書かれてある大きな模造紙、下に札のようなものに一枚、一枚に子供たちの夢が書かれてあった。

氷「うみとゆめ?」
?「え?」
氷「あのさ、うみとゆめってべつのよみかたがあるよね!」
?「海のちがう読み方は「かい」、「夢」も「む」って読めます」
氷「すごーい!ぼく、しらなかったよ!」

知らなくて当然だ。幼稚園児が漢字を読めるわけない。それを聞いた氷空は何かひらめいたようだ。
 慌てた様子で、テーブルに置いてある画用紙を一枚取り、青のクレヨンを持って、女の子のところに戻り、床に画用紙を置き、紙に何かを書きはじめる。

氷「ねぇ、うみってどういうもじ?」
?「こうですよ」
氷「ゆめは?」
?「こう・・・・」

なぜか女の子に聞きながら文字を書く、紙には『海夢』と幼いためか斜めの文字なっていて、無駄に大きく不格好になる。

氷「さっきおしえてもらった。よみかたをすれば『かいむ』でしょ?」
?「そうですけど。誰かの名前なのですか?」
氷「キミのなまえだよ!」

突然の発言に、その子も周りの子も驚きの顔が浮かび上がった。4歳児で他人の名前を考えるなんておかしい。
さらに言うと、今、初めて会った子に名前を付けている。なんていう・・・・強引な奴だ。

氷「やっぱり、ヘンかな?」
?「いいえ、わたしも気に入りました。いい名前ですね」
氷「じゃあ、きょうからキミは、かいむ!」
海「はい、氷空様」

そう言って、海夢はさっきと違って明るい声で答えた。氷空は様付けされたことに少々疑問を浮かべたが、ニッコリと笑って、海夢と手をつなぎ、他の子とあいさつをした。

暁「待てよ。「かいむ」の「か」を「て」にして、「い」を小さい「ぃ」にしたら、ティムになるんじゃないか?まさか・・・・あの子はティム?」

これが俺とティムの出会いのようだ。ティムの名前は海夢か、今度会ったとき、呼んでみようかな?