二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【イナイレ】〜俺のサッカー〜『第七章・明かされる記憶』 ( No.290 )
- 日時: 2011/09/17 20:34
- 名前: まい (ID: AVmCBGvS)
〜第5話〜「おまじない?」
そして、一週間後。氷空はまたお日さま園に顔をだした。
しばらくヒロト達と遊んでいたが、晴矢が乱暴に蹴ったサッカーボールが孤児院の裏に転がっていく。仕方なく氷空が拾いに行くと
そこには海夢が一人で空を見上げていた。氷空はニッコリと笑いながら海夢に近づく
氷「かいむ!サッカーしよう!」
海「だから、出来ませんよ。放っといてください」
氷「できなくても、いいの!」
サッカーを断られるのは承知だったが「放っとけ」と言われた氷空はやけくそになって叫んだ。すると、さっきまで氷空を見向きもしなかった海夢の顔がこちらを思い切り睨み、表情が怒りに変わる。
海「なにが出来なくていいのですか!?失敗したら終わりですよ!出来る子じゃないと・・・・お母様に・・・・・」
氷「たたかれるの?」
氷空の言った一言に思わず海夢は固まってしまう。氷空は顔色一つ変えずに淡々と話す。
氷「たたかれるのとサッカーをするのは、ちがうよ」
海「わたしが言っているのは出来ない子になりたくないだけです!!」
まるで、すべての力を振り絞ったかのように海夢は息を荒くする。氷空はキョトンとして、唇を尖らせる。二人にしばらく、沈黙が流れる。
必死に頭を働かせた氷空は空を見上げながら言う。
氷「かいむは、ほんとうに。おとうさんやおかあさんがきらいだった?」
海「え?」
氷「ぎゃくたいだっけ?それのせいで、かいむはいえをおいだされたんでしょ」
海夢は家柄を考えれば、厳しくしつけるのは当たり前に感じていた。叩かれるのも当たり前だと思っていた。敬語を使うのも当たり前、何かが出来るのも当たり前、すべてが当たり前だった。
けど、彼女の頭には一つだけ、当たり前ではなかった出来事がたまにあった。
海「お母様に叩かれて、大嫌いでした。でも、わたしが初めて、すべての問題を正解した時や、敬語を完璧に覚えた時・・・・褒めてもらえた」
—————————— よく頑張ったわね。さすが、私の娘よ ——————————
—————————— 私は貴女を生んで心から嬉しいわ ——————————
愛情があまりもらえてなかったからこそ、母の褒め言葉は海夢にとっては今までで、一番嬉しかった。
海「結局、それだけしか褒めてもらえませんでした。だから・・・・・私が出来る子にならなきゃ・・・・褒めてもらえない・・・
でも・・・・・本当はお母様に甘えたかったのかもしれませんね」
海夢は途中、涙を流してしまった。いや、流さずにはいられなかった。
ずっと母親と過ごした日常が自分を苦しめていて、さっきまで母親を憎んでいたはずなのに。それなのに、甘えたい気持ちがあふれ出してしまったからだ。
本当は泣いちゃいけないことも分かっているのに、まったく涙が止まらない。
海「会いたいよ・・・・ママとパパに、会いたい」
裏声になって、声を震わせながら。精一杯の気持ちで呟いた。本当はもう会えないのに、そう言い聞かせても、心の奥底では会いたいと叫んでいたのかもしれない。
その様子を見た氷空は大きく両手を広げて、海夢を包み込むように抱きしめた。一瞬、なにがおこったか分からない海夢の目が見開く。
氷空は海夢の長い髪を撫でながら、もう片方の手の抱きしめる腕の力を強めた。
氷「こうすると、きもちがおちつくでしょ?いまだけでも・・・・ぼくにあまえていいよ。ぼくは、かいむのなかまだ。」
氷空にそういわれると気持ちが少しだけらくになったのか、海夢は抱き返して、出来るだけ声を殺しながら泣き続けた。
3分後、泣き止んだ海夢の顔が赤くなる。さらに言うと、目がもっと真っ赤だ。海夢にとって、3分はどれだけ長い事だったのだろうか。
海「もういいですよ。ありがとうございました」
二人は抱きしめていた手を離した。すると、遠くで晴矢が氷空を呼ぶ声が聞こえた。本来の目的を思い出した氷空は慌ててボールを取りに行く。ボールを両手で持ち、晴矢達がいるところに走り出そうとしたとき、何か思い出したようで、後ろ歩きで海夢の所に戻ってきた。
氷「わすれてた!」
海「?」
そう言って氷空は海夢に近づいて目をつぶり、顔をずいと近づけ、右手で海夢の前髪に触れた。その瞬間に海夢の顔が火を噴く。
背中を押すように、直前まで自分で顔を近づけておいて、氷空の唇が一瞬だけ海夢の額(ひたい)に重なった。
海「/////////!?」
してやられたとばかりの海夢は、顔を手で覆い隠すと、耳まで熱くなって火照っているのが分かり、その場にしゃがみ込む。一方の氷空は相変わらず、ニコニコと笑顔でこちらを向く。
海「今のは?/////」
氷「おかあさんが、おとこのこが、おんなのこにする『おまじない』っておしえてくれた!はじめてやったけど。」
海「え?」
氷「じゃあね、かいむ!」
氷空はいつもの無邪気な笑顔でその場を去った。
暁「あのバカ・・・・額にキスをしたのか?/////////」
海夢と氷空が会話して約10分間、この一部始終を見ていた暁は、海夢くらいに赤面になったのは言うまでもない。心のどこかで、暁は「あれは、深い意味はない」と自分に必死に言い聞かせていたらしい。実は、こう見えても、暁は恋に関してはかなりの純情であった。