二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【イナイレ】〜俺のサッカー〜『第七章・明かされる記憶』 ( No.318 )
- 日時: 2011/12/16 17:02
- 名前: まい (ID: dD19om2o)
〜第17話〜「約束と不安と」
声が聞こえ全員、声がした方を見上げた。そこには、微笑みを浮かべてこちらを見ているグランがいた。グランはスタジアムの屋根から飛び降りて、黒いボールが浮いているところに華麗に着地する。
円「何しに来たんだ?」
グ「今日はキミ達に用はないんだ」
後ろを振り向き、グランは腕を組んでバーンとガゼルを睨みつける。その姿はまるで、殺気が立っているようだった。雷門側は思わず黙って会話を聞くしか出来なかった。異様な緊張感が漂う。
グ「何勝手なことをしているんだ?」
バ「俺は認めない!お前達、ガイヤがジェネシスに選ばれたことなど!」
ガ「我々は証明してみせる。雷門を倒して、誰がジェネシスにふさわしいか!」
グ「・・・・往生際が悪いな」
次の瞬間、黒いボールは白く眩い光が発生する。円堂が止めようとすると、あまりにも強い光で目を閉じるしかなかった。しばらくすると、光は消えて、カオスとグランはいなかった。緊張の糸が切れて、一安心する。
しかし、ホッとしたのもつかの間。今度はアフロディが限界に来たのか突然倒れてしまった。いち早く気が付いた颯音や円堂が慌てて駆け寄る。瞳子監督は急いで救急車を呼んで病院へ運んだ。
その様子を見た?は携帯を取り出して、電話をかけた。
?「もしもし・・・・・アフロディが怪我を負い、雷門を離脱する確率が高いです。それに、彼は試合に現れませんでした・・・・・・・・・・はい、分かりました。すぐにグラン達と合流して、引き続き監視します」
・
・
・
夕日が辺りを射してオレンジ色に輝いていた。颯音とアフロディは二人で稲妻総合病院の屋上にいた。普通、意識を取り戻したら、安静にするのが良いと思うが、アフロディは看護師に無茶を言って、屋上へ向かった。足の怪我が酷かったため、肩をかしてやっと歩けた。ベンチに座らせたら、颯音は隣に座った。
颯「俺がもっと強かったら、お前をこんな目にあわなせなかったのに」
ア「キミのせいじゃないよ。あれくらいのディフェンスを抜けないなんて・・・・・僕もまだまだだね」
颯「俺に気遣うな。それより、自分の体を治すのに専念しろよ」
そう言ったものの、本当は悔しかった。バーンとガゼルが一緒にシュートを打っただけで、カオスのリズムが変わって、それに追いつかなかった自分がいて。弱さを痛感した。それに、仲間に無茶をさせて、ひどい怪我をさせてしまった。自分さえ強ければ、きっとこんなことにはならなかったはず。そう思い込んでしまう。
ア「そんなに落ち込まないでよ。東條君、キミはジェネシスと対決する時に強くなるよ」
颯「ジェネシスと?」
ア「うん。今よりも、もっと強くなれるよ」
颯「今よりも・・・・・・もっと」
アフロディは強く拳を握りしめ、悲しげに微笑んだ。負傷して一緒に戦えなくなるのは辛いだろう。すると、颯音は手を前に突き出した。
颯「お前のためにも、エイリア学園を絶対に倒すからな!約束だ!」
最高の笑顔をつくって、小指を少し曲げてアフロディに近づける。アフロディは驚いたが、すぐに笑い返して自分の小指を颯音のと引っ掛ける。夕日に輝く屋上で二人だけしか知らない約束を交わした。
屋上を後にした颯音は、暁がいる個室に立ち寄った。今日のカオス戦を報告したいと思っていた。あんなに強い敵と試合したのだから、聞かせたかったからだ。
ノックせずに部屋に入ると、暁がベットの上で上半身を起こして、本を真剣に読んでいた。目を覚ましていた暁を見て、思わず身を引いて、言葉を失ってしまう。一方、暁はすごい集中力のせいで颯音が部屋に入ってきたことに気が付いていないようだ。しばらくすると我に返った颯音が近づいて軽く肩を揺らした。さすがにそれには気が付いた暁は顔を上げた。
颯「よかった!気が付いていたのか」
暁「・・・・・・誰?」
颯「え?」
言われた瞬間、颯音は頭が一気に真っ白になった。暁はしばらく颯音の顔を眺めて、ハッと思い出す。
暁「あ、颯音か。いきなり来たから、エイリア学園の奴らと思った」
颯「冗談でも、やめてくれよ!」
大げさに笑ってみたが、暁がこんなタチの悪い冗談を言う性格じゃないのは理解していた。病院で5日間も気絶していたら、そうなるケースはある。そう考えたいものだ。もし、脳に何らかの異常があったらすぐに入院は確実だろう。念のため、颯音は暁を連れてすぐに担当医の所へ行った。
担当医は大体30代の痩せている男で少し冷めたような雰囲気がした。二人は、近くにある椅子に腰かけた。
医師「どうやら、記憶が一時的に曖昧になっているようですね」
暁 「はい、すぐに颯音の事を思い出せましたが、声をかけられるまで、誰だか・・・・やはり脳に異常が?」
医師「軽い検査しましたが、脳に異常はありませんでした。ただ・・・・・暁くんにとって大切な人を忘れかけているようです」
突きつけられる衝撃の言葉に、二人は身震いを覚える。
医師によると幸い、運動しても問題ないようで、サッカーは出来る。だが、もしもまたダイヤモンドダスト戦のようなことが起こったら、暁は自分のことを完全に忘れてしまうのだろうか、そんな不安が颯音の頭によぎった。
颯 「俺・・・・どうすれば?」
医師「出来るだけ暁くんの近くで様子を見てください。何か起きた場合はすぐに来てください。もしかしたら、精神に関わる病気かもしれませんから」
・
・
・
医師の退院許可が下りたので、電話で雷門イレブン全員にメールで暁が目覚めたことを伝えた後。暁と颯音は雷門中に向かった。しかし、先ほどの医師から告げられた事実を聞いて不安が残ってしまった。横目で颯音の様子を見た暁は深いため息をつく。
暁「大丈夫、俺はお前のことを忘れないから」
颯「でも・・・・・」
暁「俺が平気って言ったら平気。大切な人をすぐに忘れるヤワじゃないことぐらい知っているだろ。俺を信じろ」
暁の茶色の瞳が夕日に反射しているせいか、オレンジ色が変わっているような気がした。まるで、何か覚悟を決めたかのような瞳で真っ直ぐ見つめてくる。その意見に反論できなかった。本当に、自分は情けないと思う。何かを一人で背負い込む覚悟を見ると、反論できなくなる自分が嫌になってきた。
しばらく歩いていくと、雷門中の校門が見え始めた。校門にいたのは、なにやら深刻な顔をした秋と春奈が立っていた。
春「せ、先輩!!」
暁「・・・・・なにかあったか?」
なにやら二人が焦っている様子を見て、何かが起きたことを察する。すると、秋からとんでもない言葉を聞いた。
秋「グランが来たの!」
暁「アイツが・・・・一体、何しに来た?」
秋「分からない。でも・・・・・・」
「瞳子監督のことを・・・・姉さんって呼んでいたの!」