二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【イナイレ】〜俺のサッカー〜『第七章・明かされる記憶』 ( No.333 )
- 日時: 2012/04/21 18:44
- 名前: まい (ID: louOLYa3)
〜第22話〜「吹雪、復活?」
※勝手な解釈が一部あります。アニメと手順が色々変わっている※
究極必殺技が破れてしまい、完全に押されている状態でみんなの士気が下がっていた。不安になるのは当たり前だ。しかし、これでは対等にやっていたプレーに支障が出てきてくる。この状態でやり合えば・・・・負ける。そう直感する円堂はなんとか皆を立ち直らせる言葉を考え出す。
円堂が考えだそうとした瞬間に瞳子監督がベンチから立ち上がって選手全員に向かって叫びこんだ。
瞳「顔を上げなさい! これまでにやってきた特訓を思い出して。諦めず、立ち止まらず、一歩ずつ積み重ねてここまで来た。自分を信じなさい! そうすれば、貴方達は勝てる!私は信じているわ!」
その監督の顔は今まで見てきた冷酷ではなかった。本当の雷門の監督である顔だ。その一言で雷門イレブンは今までやった特訓や試合を思い出す。確かに、最初はジェネミストームにコテンパンにされたが、今は最強のジェネシスと戦っている。それほど、自分達は成長していると自覚すれば、雷門イレブンは再び試合に集中する。
試合再開するホイッスルが鳴り響く。リカがボールを豪炎寺に回して勢いよくDF陣も攻め上がってきた。が、素早く動いたティムが立ちふさがった。
ティ「・・・・・<ディメンションウォーター>」
その瞬間、ティムの足元から水の壁を噴射させて目の前にいる豪炎寺を吹き飛ばしてボールを奪い取ってしまった。分かりやすく言えば<ウォーターベール>のディフェンス技バージョンのようだ。
ティムは薄く笑って、ゴール前にいるグランへと少し強めのパスを送り出す。DF陣の頭上を通り越してグラン飛んでカットしようとした瞬間。グランよりももっと高く飛んだ暁がパスカットした。素早く空中でパスしようとするが、全員マークされていてパスが出せない。そう判断した暁はやむを得ずボールを外に出す。
暁「くそっ! 防戦一方か・・・・明らかにアイツらの方が優勢だ。このままだと、ワンサイドゲームになる可能性が高い。何かしないとこっちのリズムが作れない」
円「何かを?・・・・・誰かが点を取ればリズムがつくれるのか?」
暁「例えば、誰かさんをこの試合で思い切って使うとか・・・・まぁ、本人自ら決断する必要があるけどな」
暁はじっとベンチにいる吹雪を見つめた。一方、その吹雪は脳裏にあることが浮かび上がった。
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僕はココで何をしているのだろう? なんで、こんな所で見ているんだ? 完璧になるためにキャプテンや皆と戦うことを決めたのに・・・・。
アフロディ君は自分を犠牲にしてまで戦った。染岡君は僕にFWを託してくれた。豪炎寺君は強くなって帰ってきた。僕がこのままベンチにいて良い訳ない! 分かっている! これじゃあ、何も変わらない。何もできないのか? またあの時と同じように!
あの時のことが走馬灯のように鮮明に浮かび上がっていく。
数年前、試合で勝って、その帰り道に突然の雪崩で怒った悲劇。天地がつかめない程の衝撃が襲い、目の前が真っ暗になって、何も見えなかった。最後に握りしめた手はいつの間にか離れていて、アツヤのマフラーを掴んでいたんだ。
あの雪崩のせいで僕は家族を失って、一人ぼっちになった。もう、あれを繰り返されるのは嫌だ!
完璧じゃないから僕は誰ひとり助けられない・・・・完璧じゃないから試合に出ることさえできない! でも・・・・でも、僕は皆を!
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その時、吹雪がベンチから立ち上がった。その時の吹雪の手は震えていて、何かに怯えているように感じ取れる。それでも、恐怖を乗り越えようとする姿がしっかりと瞳子の目に焼き付かれる。
吹「監督、僕を試合に出して下さい! 僕は皆の役に立ちたいんです。」
瞳「・・・・・分かったわ。選手交代! 浦部 リカに代わって吹雪 士郎!」
一瞬、監督も判断が出来なかった。吹雪はあのイプシロン改戦以来、ロクに練習参加しなかったし、ボールに触れることすらなかった。この場面で参戦するのには更に危険が伴うということだ。
だが、状況は防戦一方。吹雪を投入するタイミングは今しかない。それに、完璧になる答えはグランドでしか見つけられない。そう思って瞳子は交代の指示を出した。
颯「ちょっと兄貴・・・・・大丈夫か? 先輩を信頼しているけど、この場面で試合に出させるなんて」
暁「大丈夫。あいつはきっと、この試合の流れを変えてくれるはずだ」
円「そうだな。俺達が出来ることは、ひたすらボールを吹雪につなげることだけだ! みんな、出来るだけ吹雪にパスを集中させてくれ」
そうだ流れを変えるとしたら、今しかないんだ。信じるしかない。きっとそれが仲間である自分たちが唯一出来る支えだ。あとは、自分自身で乗り越えられない壁を越えるしかないんだ。
どんなに危険を伴っても、同じチームを支えるのが仲間の役目だから。全員、円堂の指示にうなずいた。
正面スタンド側の手前、リフェンスライン辺りからジェネシスのスローインから試合再開。ホイッスルが鳴り、ボールをアークはウルビダに向けて投げた。少しゆるい弧を描くボールにいち早く反応し、颯音はパスカットをする。瞬時にボールを取りに向かうウルビダ。それをかわすために颯音は高く飛ぶ。
颯「吹雪先輩! 頼みますよ!」
早速、吹雪にチャンスが到来した。相手のゴール前にいる吹雪を確認すると、超ロングパスをする。敵のマークもいなかったので、GKと一対一だ。
パスを受け取った吹雪は人格を変えてアツヤになった。
吹「この試合で俺は・・・・完璧になるんだ!! 吹き荒れろ! <エターナルブリザード>!」
会心を込めた必殺シュートの氷のエネルギーは高速回転をしてゴールに向かう。
<エターナルブリザード>は以前と同じほどの威力があった。時間が経ったから復活を遂げたのであろうか?
ゴールキーパーのネロは少しもあせる様子を見せず、手を前に出した。そして、小声で<プロキオンネット>と唱える。ベスタ状のエネルギーネットがアツヤのシュートを包み込んだ。回転していたボールはいつの間にか止まってしまい、ネロの腕に治まってしまった。完全に力負けしたのだ。
吹「な、なに・・・・」
暁「あいつ。今更、なにしているんだか・・・・・」
遠くで見ていた暁は呆れていた。理由は簡単、今の吹雪はあることに気付いてないからである。今まで通りに人格を変えたって意味がない。やはり今、吹雪をグランドに上がらせたのは間違ったのではないか。雷門イレブン全員が不安を覚えた瞬間だった。
その後の試合展開は防戦一方。D F だけではカバーしきれなく、F W の颯音や豪炎寺もディフェンスに回らなければいけない、つまり攻撃が出来ないという最悪のシナリオが用意されていたのだ。吹雪の<アイスグランド>はジェネシスに効かなかった。技を発動しても、踏み込まれてしまえば技が破れてしまうのである。雷門イレブンは今、歯が立たない状況にあるのだ。
しばらくして、前半残り10分。ディフェンスだった雷門にチャンスが来た。
ティ「グラン、決めなさい」
円 「そうはさせるか!」
グ 「なに!? いつの間に・・・・」
ティムがグランへ上げたセンタリングを円堂が高く飛び、カットする。敵が油断した隙を見て、少し遠くにいた吹雪を発見すれば、そこへ鋭いパスをした。
しかし、吹雪は自分へ向かっていたボールに気付かなかった。下に視線を落として地面を見ていた。
暁「吹雪! ボールが来ている!!」
吹「・・・・え?」
気が付いた時は遅かった。ボールはすぐ横の地面に着き、大きく跳ねてラインから出てしまったのである。吹雪が試合に集中していなかったのが明らかだった。そのことにムカムカした暁が吹雪の元へ歩こうとした。
豪「おい・・・・・」
その瞬間 ————— ボキッ!!!
嫌な鈍い音がグランドに響き渡った。蹴られたボールがモロに入った体は吹き飛ばされて地面に叩きつけられる。一瞬、何が起こったのか敵も味方も分からなかった。しかし、冷静になればすぐに結論付けられる。豪炎寺が拾ったボールを吹雪に向けて蹴ったと。
颯「ちょっと豪炎寺先輩!? いくらなんでも、腹にシュートは・・・・」
暁「あいつは放っとけ、颯音」
颯「で、でもさぁ・・・・・」
確かに、今の吹雪のトラップミス。それも、試合に集中していない様子だった。つまり本気でやっていなかったのは明らかだったので怒るのは分かる。けど、いくらなんでも(手加減はしたと思うが)やり過ぎだと思う。反論しようとする颯音の肩に手を置いて暁は止めた。
暁「俺達があの場にいたら邪魔だ。さっさとポジションに戻れ。豪炎寺を信じろ・・・・・」
念押しに言った最後の一言で颯音は迷いながらも自分のポジションに着いた。暁は自分のポジションに向かいながら、二人の姿を脳裏に焼けつけた。