二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【イナイレ】〜俺のサッカー〜『第七章・明かされる記憶』 ( No.335 )
- 日時: 2012/05/26 20:26
- 名前: まい (ID: NBzaXsLD)
〜第24話〜「計画の真意」 ※星次郎さんが黒いです※
薄暗く長い廊下で金属と骨がぶつかっている鈍い音が響く。次々と現れる人型ロボットを確実に顔にあるカメラの部分を的確に狙って殴れば簡単に倒すことが可能だが、数が多い。おかげで目的地である所まで遠く感じてしまう。
「ま、まだですか!?」
「もう少しだ・・・・あと、少しで着く。それまで、耐えるんだ! ゲンちゃん!!」
「この緊急時にその呼び方しますか!?」
ゲンちゃんと呼ばれたのは鬼瓦 源五郎刑事。その彼をこの呼ぶのは暁の父親である。東條 正治だった。なぜ二人がこのアジトに侵入しているかと言うと・・・・それは、つい5分前のこと。
内閣総理である財前 宗助が以前、誘拐された場所がココ・・・・富士山麓にある研究所と警察の調べで判明したのだ。そして、鬼瓦刑事に依頼し、侵入捜査をしていたのだ。だが、試合が始まる前に星二郎が口にしたエイリア学園の真実を聞いた途端に目的を変更した。
それは『エイリア石のエナジーを送っているシステムを破壊する』ことだ。雷門イレブンとジェネシスの試合中継を利用して、民衆の前で力を失っていく様子を見せるためだ。
しかし、そのシステムはセキュリティがかかっているだろう。うかつにシステムを手荒に爆破すると何が起こるのか分からない。なので、内側から確実に破壊するやり方にした。そのために、正治はハッカーとして呼ばれたという訳である。
二人は一気に走り出し、奥にあるメインコンピュータールームに飛び込んだ。ロボットが駆け出してきたが、急いでドアを閉めてロックをすればこっちにまでは来なかった。どうやら、必要以上の追尾機能はついてないようだ。ホッとして二人は安堵の表情を浮かべる。
親父「間一髪か・・・・あーもう。吉良に侵入したのがバレた!!」
鬼瓦「仕方ないですよ。あんなにロボットがいたとは思いませんでしたし」
親父「あぁ。だが、ここまでくれば、もはや勝ったも同然だ」
鬼瓦「それもそうですね」
メインコンピューター室の奥には直径約10メートル。幅は5メートルくらいのごつごつとしたダイヤ型エイリア石が紫の眩い光で部屋を照らしていた。それは、真帝国学園の不動がしていたペンダントと同じエナジーが感じられた。いや、それ以上だ。
奥にある大型コンピューターを発見すると、正治はキーボードにそっと手を置いていじりだした。
鬼瓦「何か、手伝うことはありますか?」
親父「持ってきた小型爆弾を仕掛けてくれ。今、真剣だから。静かにしてくれ・・・・・邪魔するなよ」
その顔は真剣そのもので、普段は穏やかな正治とは別人のようだった。全神経を指に集中させ、まるですごく複雑な楽譜をピアノで演奏するかのように、超高速でキーボードを打ち始めた。鬼瓦刑事はその様子をただ黙って見るしかなかった。
親父「管理者アカウント入手・・・・・権限執行・・・・・これより、データのハッキングを開始する」
目を大きく開いて、更にスピードを速め、次々と画面上にエイリア学園に関する経歴が映し出される。正治はそのデータに介入してどんどんデータを処理していく。順調にハッキングしていると、正治は突如、大声を出した。
親父「なんでパスをしないんだ!! 直也!」
鬼瓦「・・・・・・・え?」
親父「何ドリブルしているんだ!? そこは無理せずパスをつなぐべき! もう少し、雷門に残って、指導した方が良かったか・・・・・早くこんな仕事をほったらかしにして応援に向かわねば!!」
一瞬、なぜサッカーのことを言ったのか分からなかったが、正治の右耳を見れば瞬時にわかった。耳には白のイヤホン。コードの先を辿ると、ポケットに超小型ラジオに差し込んでいた。叫んだ内容を考えれば、サッカー中継とつながっているだろう。息子のことが心配なのは痛いほど伝わってくる。
だが、今は仕事をしている時だ。心を鬼にして鬼瓦 源五郎はイヤホンのコードを掴んで政治の耳から勢いよく外した。もちろん、正治はこれにより、ご立腹になる。
鬼瓦「真剣ってハッキングする事とサッカー中継に耳を澄ましている事だったんですね! 最後の方、心の声が丸聞こえでしたよ!」
親父「ハッキングしながらで聞いていたから、プライベートの時間でしょうが! ゲンちゃん。そういうのはプライバシーの侵害だよ!」
鬼瓦「仕事に専念してください! というか、画面をしっかりと見て、ハッキングをして!! 失敗したら一大事ですぞ!」
親父「ゲンちゃんのくせに生意気な口を! 失敗したら、その時はその時で片付けようよ!!」
鬼瓦「これは日本の運命を賭ける任務なのです! その時で片付けようとするのは止めて下さい! せめて緊張感くらいは持ってくださいよ!!」
親父「ゲンちゃんは親心が分かってないから言えるんでしょうが!! 日本も大切だが、俺にとっては息子の方が大切だ!!」
一見、子供のような言い争いをする二人は立派な大人。感情が高ぶり過ぎた結果、お互い肩で息をする。しばらく睨み合っていたが、やがて鬼瓦刑事の熱意に負けたのか。イヤホンを鬼瓦刑事に渡して、不機嫌になりながら正治は画面に集中してハッキングをし始めた。
ちらりと目を見れば今度は正真正銘、本気でやっているのが分かった。鬼瓦は肩を落としてから、持ってきたバックから3つの小型爆弾を取り出してコンピューターの近くにセットし始めた。
高速でキーボードを打つ音が部屋中に響く。ほんの2分経ったところで正治の手の動きがゆっくりとなった。これはハッキングが完了した合図だ。
親父「ハッキング完了・・・・・エイリア石メイン駆動プログラム、破壊」
Enter ボタンを押すと、光を放っていたエイリア石の原石は徐々に光を失い始める。次の瞬間、鬼瓦刑事が仕掛けた装置近くにあった爆弾を爆発させた。その反動で施設全体が激しく地震のように揺れる。
それは試合会場になっているサッカー場でも影響があり、揺れ始めた。選手たちが驚いている中、星二郎は特に焦る様子はなく口角を上げて、研崎が持ってきた小型の機械を操作し始めた。
親父「なんか、おかしいな」
鬼瓦「どうしたんですか?」
親父「一回もトラップをしてこなかった。いくら権限操作をしたとはいえ、非常用になんらかのものを仕掛けるだろ。ましてや財閥会社ならなおさらだ。
だが、こんな簡単に突破できるなんて・・・・・まるで、俺達がプログラムを削除させるのを前提に仕組まれているようにしか・・・・」
『ご苦労でしたよ鬼瓦警部。それにあなたが来るとは想定外でした、東條 正治さん』
一瞬で背筋が凍りつく声がした。顔を上げると長方形型の画面に星二郎が映っていた。それを確認すれば、瞬時に理解した。
(なるほど・・・・俺達が侵入してくるのを読んでいたから、わざとトラップは仕掛けて来なかったのか。だが、なぜメインコンピューター室まで俺達を泳がす必要があったんだ? ・・・・ま、まさか!)
正治はすぐに違和感を感じ取り、試合会場の様子を小さな画面を出す。そこには、平然と立っているジェネシスと茫然とする雷門。さらにはメインコンピューターについているカメラがまだ機能しているのか自分の顔も映っていた。その姿を確認した正治は途端に手が震える。そして、歯切れを悪くしながらこう、発した。
親父「吉良 星二郎、子供達にどんな特訓をさせた?」
鬼瓦「え、エイリア学園の子供たちはエイリア石で強化されたんじゃないのですか?」
親父「違う。もしエイリア石が力の源なら、何らかの変化があるはずだ。だが、彼らの様子は変わらない」
確かに、言われてみればエナジーを失ったとすれば、その反動で苦しむはずだ。しかし、そうなるとなぜ彼らは平然と立っているのかが分からなくなる。正治は震えている手を思い切り握りしめ、うつむいたまま口を開いた。
「俺の推理通りなら、ジェネシスは ——————— 特訓のみで鍛えられた普通の人間だ・・・・・・違うか?」
その瞬間、グランドにいる雷門の選手は目開くしかなかった。いや、雷門の選手だけではない。きっと日本全国の人々が驚いているだろう。星二郎は微笑みを浮かべた。
星 『そう。貴方達の考える通り、エイリア石にエナジーが人間を強化する効果があり、エナジーが供給されなければ、元に戻ってしまう。
では、そのエイリア石で強化されたジェミニやイプシロンを相手に人間自身の能力で鍛えたらどうなりますか? ・・・・・・・その答えはすぐに分かりますよね。
ジェネシスはジェネシスの力・・・・真の人間の力を! 弱点なしの最強人間なのです。ジェネシスこそ、新たなるヒトの形! ジェネシス計画そのものなのです!』
親父「お前がやろうとしていることは完璧な人間兵器を作って、日本を支配すること・・・・その兵器はお前の子供達なんだぞ! それをなんとも思わないのか!?」
鬼瓦「せ、正治さん! 落ち着いてください!」
親父「源五郎は黙れ! 俺は、一人の親として許せないんだ!!」
瞬間、正治は握りしめていた拳を振り下ろす。落下地点であるキーボードの基盤の一部が割れてしまった。もうこのコンピューターは使い物にならなさそうだ。振り下ろした拳は基盤の破片が刺さったのか、血が少々流れる。ただ、正治は許せなかった。自分の子供を手足のように使う星二郎を。
言われた本人は呆れたかのように目を細めて、作り笑いを浮かべながらその問いに答えた。
星『何かの道具を扱う時に、道具自身に気遣いますか? 当然、全く気にしませんよね? その感覚と一緒です。サッカーは日本を変える手段として選びました。人も、そんなに変わりませんよ』
それは極悪非道な言葉だった。非道すぎて吐き気がする。それを聞いた円堂の目つきが変わり、頭に血が上ってくる。一気に我慢していた感情が溢れだし、星二郎がいる部屋に向かって叫んだ。
円「お前にとってヒロト達ですら道具なのかよ!? お前の勝手で、人と俺達の・・・・・俺達の大好きなサッカーを悪いことに使うな!!」
その叫びは会場中にむなしく反響した。