二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【イナイレ】〜俺のサッカー〜『第七章・明かされる記憶』 ( No.342 )
- 日時: 2012/08/29 08:27
- 名前: まい ◇nkg.2sWI0U (ID: .057oP6P)
〜第27話〜「闘争本能」
<スペースペンギン>
その必殺技はジェネシス最強の技と呼ばれていた。見切れないほどの速さでゴールへ一直線。立向居は咄嗟に<ムゲン・ザ・ハンド>を発動させるが、さっきの<スーパーノウ゛ァ>よりも威力が高い。あっという間に技は消えて、ゴールへ入った。
審判がそれを見てホイッスルを鳴らす。 これで、2−3 追い抜かれてしまった。これがリミッター解除だと言うのか。星二郎はマイクを使って会場に淡々とリミッター解除について話した。
星『人間は体の限界を超えないよう、無意識に力をセーブする。では、そのすべてを出し切れるとしたら・・・・・どうなりますか?』
瞳「今すぐやめさせて父さん! そんなことをすれば筋肉が悲鳴を上げ、体がぼろぼろになってしまうのよ!!」
星『そうさせたのは、瞳子。お前だ』
今の星二郎には瞳子監督の叫びは届かない。それに、必殺技を発動させた彼らの様子がおかしい。一回だけだが放った最強必殺技は体に負担を与えすぎたのだろう。その証拠に反射的に腕を自分の方へ掴んでいたからだ。このままでは、佐久間や源田たちと同じ結果になってしまう。
暁「颯音、いいことを考えたから協力しろ」
その時、暁は颯音の肩を軽く叩いた。反射的に振り返れば、何やらいつもより3割増しのツヤがある笑顔を浮かべている兄の姿があった。弟である彼は知っている・・・・こんなツヤのある笑顔を浮かべている時の兄は決まって、無茶な作戦やら要求を言い渡す時に限るのだ。
颯「か、確認だけど。それは無茶苦茶な要求じゃないよね?」
暁「もちろん。ただ・・・・ほん —— の少し走ってもらうだけだからな」
更に目を輝かせた兄を見たこの瞬間。あぁ、俺の脚は試合終了まで持つのだろうか? 明日、酷い筋肉痛を覚悟して走らないとまずいかも。と心を決めた颯音であった。
試合開始のホイッスルが鳴った。円堂が前線へ走り込む。目の前には先ほど止められたウルビダがいた。隙をついてスライディングしてきて簡単にボールを奪われてしまう。すぐにまた驚異的なスピードのドリブルで上がる直前だった。本来なら F W のポジションである颯音が守備へ回って、ウルビダからボールを奪ったのだ。
颯「いかせるか!!」
鬼「東條!? 何している!? お前は、 F W だろ!」
颯「せ、先輩達がいつまでもモタモタしているから、助けに来ただけですけど!」
鬼「・・・・なんだと?」
颯「ひぃ! すいません!」
暁「おい、颯音! こっちだ!!」
普段の颯音らしくない発言で鬼道や円堂びっくりしてしまうが、颯音が蹴って弧を描くボールは暁の足元に転がる。しかもその周辺にはジェネシスの選手は一人もいなかった。そして、そのままドリブルで上がっていく。これには敵のティムが慌てて指示を出した。
ティ「何しているの!? 当たって!! それとゴール前にいる豪炎寺と吹雪をマーク! 彼は絶対にパスをしてくる! 早く!」
暁 「・・・・・賢明な指示だな」
ティムの指示通りに動き始めるジェネシス。暁は一人で前線へ駆け込む。行く手には強力な D F 陣がいた。さすが、人間の限界を超えているから、攻守の切り替えが早すぎる。しかも、ボールを取られるのも時間の問題だ。だからと言って、パスしようとするが豪炎寺と吹雪はマークされていてうかつに出せないし、カットされては速攻で点を与えてしまう・・・・はずだと、誰もが思った。
暁「走れ! 豪炎寺!!」
豪「っな!?」
D F に重圧をかけられたせいなのか。暁は大きく豪炎寺から離れた場所へボールを蹴ったのだ。あれでは豪炎寺でも追いつけない。 G K のネロはそのまま流すことにしたのだが、ここでティムは何らかの違和感に気が付く。
わざわざ暁が強引にボール運びをするなら、安全策で後ろの選手に回すはず。どうして敵にボールを回すマネをしたのか・・・・それは、背後から近づいてくる雷光のように走る颯音が答えだった。
ティ「ネロ!! 東條が来てるわ! 構えて!」
ネ 「なに!?」
暁 「そのまま狙え!! 颯音!」
味方も驚くそのスピード。迷いのないその走りはボールに追いつき始める。しかし、追いついたのはゴールラインのギリギリだ。角度はあるかないかの場所で、しかもネロの<時空の壁>は颯音の<プラズマアロー>を止められる。颯音は全神経を研ぎ澄ませた。
颯「<プラズマアロー>より威力はないが、スピードならこっちが上だ!! ・・・・<ショットガン・ブレス>!!」
必殺技を出すためのタメを短くして足をすべり込ませる。その瞬間、ボールは風をまとって突風のごとく放った。しかし、それは一瞬の出来事でスピードに乗り過ぎてもう片方の足がつまずいて体が転がる。そして、背中を壁へ強打してしまった。
颯「ど、どうなった!!?」
起き上がって見せたが、その場にいた敵も味方も驚きで声を失っていた。なぜなら、あのギリギリの状態でシュートしたボールは奥のコーナーに転がっていたのだから、人間の限界値を超えたジェネシス相手に点をもぎ取ったからだ。
電光掲示板には3−3の表示がされた。思わず目を疑って軽く自分の手を叩いたが痛みを感じた。あぁ、夢じゃないのだ・・・・希望が見えたんだ。
暁「ナイスシュート。うまくいっただろ?」
颯「出来たけど・・・・お、思った以上にキツイよ。これ」
暁「そりゃあ、そうだろ。60メートルも体力もあまりない中で全力疾走したから」
颯「無茶苦茶過ぎるだろ!!」
もう、二度と輝きのある笑顔をする兄には話しかけない方が身のためだ。颯音は本能でそう感じました。
一方、ベンチでは。瞳子監督と響木は見開いて驚くばかりだった。
瞳「い、今のは?」
響「これは、俺の憶測に過ぎないが・・・・・彼、東條 颯音は不可能と思えるような困難な状況なら、逆に集中力は最大限に生かせられる独自のスタイルを持っていたんだ。それを引き出すにはギリギリ届くか届かないかのパスを出す必要があった」
瞳「まさか・・・・暁君はそれに気が付いていて、わざと?」
響「そう考えるのが妥当だろうな」
つまり、暁は颯音の闘争本能を刺激すれば大きく成長を遂げられる常識にはとらわれない独自のスタイルを併せ(あわせ)持っていることに気付いていた。だから、わざと再開の合図の時にカウンターを仕掛けた。
ティ「やられた! マークを外させるためにわざと守備へ回ったのね。後半になるにつれて裏をかいてきた。むしろ、どんどん集中力が上がってきてる・・・・それに、あのプレーは・・・・・」
それもがむしゃらに動き出したんじゃなくて、暁は最高のパスを出せる位置取りをするためにドリブルで攻めていた。そこまで計算していたのか? それとも偶然か? まったく、どちらにしても油断も隙もない相手だ。
(これで流れはこっちに回った。アイツ・・・・・本当に闘争本能だけで試合しているもんだからな。余計なことを考えるからいつも上手くいかないんだ・・・・・・さてと、次は俺らの番かな)
暁は機嫌よく鼻歌を交えながらスキップをしていたという。こんなに機嫌がいい暁は見たことないのでメンバーは鳥肌が立ったらしい。