二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【イナイレ】〜俺のサッカー〜『第七章・明かされる記憶』 ( No.345 )
- 日時: 2012/09/08 11:10
- 名前: まい ◆nkg.2sWI0U (ID: SDyLiy9K)
〜第29話〜「カミングアウト」
円「ヒロト!! 大丈夫か!?」
暁「おい! しっかりしろ!」
暁と円堂は慌てて倒れたヒロトの元へ走った。体を揺らすと返事をしたので、急所は避けられたと安心して安堵の息を吐く。しかし、その一方でウルビダは完全に頭に血が上ってしまい、狂ったように叫んだ。
ウ「なぜだ。グラン! なぜ、止めたんだ!? そいつは私たちの存在を否定したんだぞ!! そいつを信じて、戦ってきた私たちの存在を!! それを今更、間違っていた!? そんなことが許されるのか!? グラン!!」
しばらくの沈黙が続く、ジェネシスは星二郎のために自分の体が悲鳴を上げると覚悟して、迷いなど一切なくリミッター解除をしていた。言う通りにしてくれと言う相当な信頼や愛情があったからだ。それなのに存在を否定されたら、怒り狂うのが当たり前なのかもしれない。
グ「確かにウルビダの言う通りかもしれない。お前の気持ちも分かる・・・・・でも、それでもこの人は・・・・・俺の大事な父さんなんだ!!
もちろん。本当の父さんじゃないことも分かっている。“ヒロト”って名前がずっと前に死んだ父さんの本当の息子だってことも・・・・・それでも構わなかった! 父さんが俺に本当の“ヒロト”の姿を重ね合わすだけでも!!」
暁「ヒロト・・・・」
言われて思い出した。そういえば、昔。晴矢と風介に聞いたことがあった。ヒロトは二人と出会う前は一人ぼっちでいつもブランコで遊んでいて・・・・大仏が仕事の合間をぬってお日さま園に来る日になると飛びついていたって。大仏がヒロトに一番愛情を注いでいたのも見ればわかったって・・・・でも、それは吉良 ヒロトとして見ていたからだったんだ。
グ「例え、存在を否定されても。父さんが俺達を必要としなくなっても。父さんは・・・・俺にはたった一人の父さんなんだ! 」
だが、ヒロトにとっても、海夢にとっても、晴矢にとっても、風介にとっても、玲奈にとっても、エイリア学園のみんなにとっても、大切な父親はこの人しかいないんだ。だから、ジェネシス計画もしたがった。父親の役立ちたいと言う想いがあったから。通りで、みんな頑固な考えをしているわけだな。
星「お前達、ここまで私の事を・・・・・しかし、私は間違いを犯した。私はもう、お前に“父さん”と呼ばれる資格はない」
そう言って星二郎はウルビダが蹴って、転がっていたボールを拾い。ウルビダの足元へ転がした。すると、今度は仁王立ちになってすべてを受け止める体制になる。
星「さぁ、打て! 私に向かって打て、ウルビダ! こんなことで許してもらえるとは思っていない。だが、少しでもお前の気が治まるのなら・・・・・さぁ、打て!!」
グ「父さん!!」
その行動に出たと同時にジェネシス達も驚くだけだった。瞳子は目をつぶって、父の志を肌で感じ取る。次の瞬間、ウルビダが足を上げてシュート体制になる。今度、まともに喰らったら・・・・。そんな不安が脳裏にかすめる。だが、ウルビダは打たなかった。力がもう入らないのか座り込んでしまったのだ。その瞳には薄い水の膜(まく)が張ってある・・・・涙だ。しだいに涙は地面へと次々と落ちていった。
ウ「打てない・・・・打てるわけない! だって、あなたは私にとっても大切な父さんなんだ!」
声を枯らしながら、叫んだ。その涙は今までためてきたのか、なかなか止められなかった。後ろを見れば、ジェネシスのメンバーも声を上げて泣いていた。それは、星二郎の事を想っている証拠であった。それを自覚すれば星二郎も座り込んでしまう。
星「私は人として恥ずかしい。こんなにも私を思ってくれる子供達を復讐の道具にするなんて!」
暁「まったくその通りだ」
そこへ星二郎に近づきながら暁は呆れたように吐き捨てた。さっきまで子供を道具だと言い続けていたのに、どうしたらこんなに腰の低い性格に戻ったのかが、ある意味、不思議でしょうがない。隣に駆け寄れば、星二郎は頭を暁に下げた。
星「キミにも酷い事を言ったね。すまなかった・・・・」
暁「ん? 酷い事を言われた覚えがないんだけど」
星「だけど、キミはあんなに怒っていたじゃないか」
暁「俺はただ、こんな近くにある大切なモノを利用道具と言ったことに腹立てただけだ。普通は守るべきモノのはずだし」
本当、この少年はなんなのだろうか? と星二郎は心底思った。さき程も世界をサッカーで支配されるのは、どうでもいいとか。自分に罵声(ばせい)を浴びされても、そのことを忘れてしまうとか。仲間や子供達が道具扱いされて我を忘れて怒ってしまうとか。しかも、すぐに相手を許すところは一体 ——— 彼の中になにがあるのか?
暁「二度と手放すなよ。次、ヒロト達を道具として利用したり、捨てようとしたら。地の果てを追ってでも、俺がアンタをぶん殴りに行くから」
差しのべられた手を取って立ち上がると、とんでもないことを抜かしてきた。思わずキョトンとしてしまう。
星「・・・・随分と育ちがいい子供のようですね」
暁「まぁ、昔から父親にいいつけられていたことだ『親にとって一番大切なのは子供。子供の成長を見届けるのが親の務め』だって。アンタが改心したことが分かってもうすぐ、ココへたどり着くだろうけど」
グラントへと向かっている足音がどんどん近づいてきた。必死に走ってきて、息子に会いたがっているあの人しかいないだろう。
「直也 ——— ! 颯音 ———— ! 無事か ———— !?」
その声を聞こえた瞬間に暁は無意識に笑った。父親は子供二人を発見すると、颯音に向かって飛び出して抱きしめた。その行動に颯音は周りの視線を気にして力いっぱい押し返した。
親父「よかったー! 皆、無事だ!!」
颯 「と、父さん! さっき映像見てびっくりしたんだから! また極秘任務で動いていたのか? 少しは息子達に連絡よこせよ!!」
親父「すまん。すっかり忘れていた。まぁ、俺によくあることだろ」
颯 「心配するこっちの身になってくれよ!!」
この時、その場にいた全員はこう思っただろう「はぁ? 極秘任務? この人の仕事は一体なんなんだ!?」と。
円「あの・・・・極秘任務って一体?」
颯「え? 知りませんでしたか?」
「俺の父さんの職業は、ICPOの警部って・・・・」
その瞬間、その言葉の意味を知っている人間は驚きの叫びが轟いたという。その中には暁が目を見開いていたらしい。そう言えば、まだ説明していなかったな。と鬼道の叫びを聞いて颯音は思い出した。
鬼「初耳に決まっているだろ! どうして俺達に言わなかったんだ!?」
円「鬼道・・・・あいしーぴーおーって?」
暁「 International Criminal Police Organization の略称で、日本語訳をすると『国際刑事警察機構』のことだ」
つまり、正治は国際的な犯罪防止のために世界各国の警察により結成された国際組織の一人で、世界中を飛び回る刑事だと言うことだ。実際は大規模な組織ではなく、各国法執行機関の連絡機関・協議体としての性格が強い。司法警察権は各国の主権事項に属するため、正治のような総理に指示されて動くケースはごくまれであるが。
円「こ、国際警察!? おじさん、そんなことやっていたの!?」
鬼「しかも、警部って・・・・・通りでエイリア学園についての情報を集めるのが速い訳だ・・・・・なぜ、そういうことを早く言わない? お前達なら知っていたはずだろ?」
颯音はともかく、暁は知らなかったのだ。第一、父親の仕事なんて興味が湧かなかったのが本音で、5年前から別居している状況だったのでなおさら知る機会もなかったのだ。
颯 「俺が雷門イレブンに入る前に兄貴が先にいたから、もう皆は知っているのかと・・・・」
暁 「アホか? 5年も離れて生活していたから、今はどんな仕事をしているか知らなかったんだぞ・・・・・というか、どデカい仕事をやり遂げようとしていたんだな」
親父「当たり前だろ! 全世界の平和を守るためにやっている仕事なんだから! 苦手なパソコン関係も今では超難関なハッキングできるほどになったんだ!」
鬼瓦「途中、息子関係が絡んで仕事を投げ出しかけるところでしたけどね」
その瞬間、鬼瓦が正治に恐ろしい険相を向けていて、正治は冷や汗を大量に掻いたという。