二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【めだがボックス】 マイナス転校生 ( No.1 )
- 日時: 2011/03/19 21:38
- 名前: 五十嵐 ◆geiwiq3Neg (ID: WgY/GR3l)
【プロローグ】
「僕の名前は永禮 椎也です、__から来ました。よろしくお願いします」
そこには、僕自身が描く“普通”の光景が広がっていた。
転校生がやって来た時のクラスのざわめき、僕の少し緊張した声での挨拶…
「——という事で、永禮は…人吉の後ろの席に座ってくれ。真ん中列の一番後ろな」
僕は先生に指示され、指定された席に腰をかけた。
…そして先生が僕に言う座席指定の言葉、再び起こるクラスのざわめき。
そう、この光景こそ、僕の描く“普通”の理想図だった。
『…ここで僕は“普通”にやっていけるかな。
…虐めとかは無い…よね?
…とりあえず、前後席の人とくらいは話してみようかな…。』
そして、僕自身も転校してきた皆が“普通”は思う不安を、心の中で呟いてみる。
そんな中でも、転校生である僕を交えながら普段通りに授業が始まって…
『えっと、何だっけ前の人の名前…人吉…人吉善吉?
まずこの人から話しかけてみよっかな…ええと、何て声掛けようかな。
「初めまして?」いや、挨拶したしそれは省いて…「こんにちは」?
いや、「おはよう」?いやいや、なんか今更なぁ…』
だけど僕の心の中はそれどころじゃなくて。
一刻も早くクラスに馴染もうと悩んでいるのだった。
—————という“普通”の事を、態々授業中まで思わなくちゃいけない訳だ。
「……ちっ、あぁ面倒くさいなぁ…“普通”っていうのもさ」
僕は“先生の指示を聞いて席についた瞬間”そこまでを悟り、思わず小声で本音をこぼした。
本来、僕はこの箱庭学園の方針で“-13組”に行くはずだった。
理由は単純、普通じゃない能力…この学園の幾人かが“過負荷”と呼ぶスキルを持っているからだ。
どんな能力かは知らないが、過負荷という能力を持っているという事は自覚はしている。
なにしろここ箱庭学園理事長に呼ばれてこの学園へ来たからねぇ。
…けどそれは“普通”の転校とは違うから、
僕は最初、箱庭学園理事長が転校話を持ち掛けられてきた時、即効断った。
僕は常に“普通”でありたい。
普通に青春という時期を過ごして、普通に友達を絡んで、普通に卒業して、
普通に結婚なんかもして、残りの人生も普通に過ごす…
そんな“普通”を求める僕にとって、“普通”じゃない奴等の集まりに放り込まれるなどと…
「 嫌 だ ね 、 虫 唾 が 走 る 。 」
もっての外だった。
話を持ちかけられたあの時、僕は学園理事長にそう言ってやったさ。
だが、それでも食い下がらない学園理事長は、
「では“普通”に転校するだけでいい」
なんて言ってきたもんだから…結局ここへ来てしまった。
“普通”を追及する僕にとって、“普通”という言葉が絶好の釣り餌だと知ってたのが癪にさわるが、
1年1組で生活する事を認めてくれた学園理事長の配慮には感謝だ。
何せ、これで僕が“普通”でさえいたら、“普通”の学園生活を送る事ができるのだから。
———だが、そんな僕の考えも甘かったようだ。
何故ならこの箱庭学園自体、“普通”ではなかったからだ。
まったく…学園理事長にはやられたものだ。
まぁそれに気が付くのは、もう少し後なのだけれど。